第148話 変わり者のモンスター
大変長らくお待たせいたしました!
(待ってねーよ!)
これから二本の投稿を行います。
話の順序としては、今話の中盤の◆◇◆◇◆◇◆で次話(148.5話)となり、その後再び今話へと戻る流れとなります。
読み順は読者様次第ですので、どうぞお楽しみいただければ幸いです。
「えっ……?」
いつもと違う感触に手応えを感じ、かなり期待していただけに、その答えはショックなものだった。
今回も駄目なの……?
(あッ!? いえ、あなたが嫌だとかじゃないんですよ!? ただ、色々と事情がありまして! 原住み……いや、親切なお兄さんと連れ立って歩くのは、色々と不都合が多いんです! なので、ごめんなさい!)
慌ててフォローしようとしてくれたようだが、完全にフラれたみたいになってる。
これはもう、駄目みたいだな。
モンスターなら、封印するしかないんだが、そういえばモンスターで間違いないよね?
人を襲おうとしない辺り、生まれたてだったイチに似ていたからイケるかと思ったんだけど……。
おっと、そうだ。 鑑定鑑定っと。
▶xxx
名前 [xxxxxx・xxxxxx]
種族 [xxxxxxxxxx
〔xxxxx〕]
レベル [x]
スキル [x]
所属 [xxxxx・xxxxxxx]
……は!?
何だこれ!?
今まで、こんなこと無かったぞ!?
まさか、モンスターじゃないのか?
そう思っていると、タイミング良く助け船のように、アルル様が声をかけてきてくれた。
『お困りのようですね』
「ああ、助かりました、アルルさ……」
(えっ?)
おっと、つい声に出してしまった。
心の声にしないと、ヤドカリさんにも聞こえてしまうや。
しかもアルル様の声は聞こえないから、俺の独り言だと思って混乱してしまうだろう。
『さて……では、咲也さん。“全知全能の図鑑”を、彼女に近付けてもらえますか?』
え?
突然の申し出に、今度は俺が困惑する。
神様のアイテムである全知全能の図鑑を、モンスターに近付けるって?
それで壊されるような心配は無いだろうが、一体何のために?
不思議に思いながらも、言われた通りに図鑑を取り出し、恐る恐るヤドカリ型モンスターへと近付ける。
(……えっ? えっ?)
ヤドカリさんも困惑しているようだが、当然だろう。
そんな彼女――女性のようだ――に、図鑑を近付けて様子を窺っていると、アルル様から更なる注文が届けられた。
『もっとです。その宇ちゅ……いえ、貝殻に、接触させてください』
ええ……?
さらに困惑しながらも、言われた通りにそーっと図鑑を貝に近付け、トンッと当てた。
すると――――
(さっきから、一体何して……? ……えっ?)
急に、彼女の反応が変化した。
何が起きたのか分からない俺は、首を傾げて見守るしかない。
すると彼女は、俺ではない何かとでも話しているかのように、明後日の方向を見て声を上げ始めた。
(……はあ!? ちょっ……! どういうことよ!?)
すると、俺に向き直してキッと睨み付け、怒りを露にする。
(あ、あなた、一体何したんですか!?)
突然、彼女が慌て、怒鳴り出す。
だが、状況がさっぱり分からず、呆然とするしか出来ない。
(……くっ! 話は後です!)
そう言い残し、彼女がその体を貝の内側へと引っ込めて行った。
残されたのは、蓋を閉じた大きな巻貝と、それを目の前に状況把握の出来ていない、ポカンと口を半開きにした俺だけだった。
一体、何がどうなったの……?
『……あー、咲也さん。ちょっと私も席を外しますので、そこで彼女の貝殻を守りながら暫く待っていてもらえますか?』
「え? あ、はい……」
そう言い残し、アルル様も話を打ち切ってしまった。
ホント、何が何やら……。
だが、アルル様ならば、後でちゃんと説明してくれるだろうし、ここは信じて待っていようかな。
てゆーか、それしか選択肢が無さそうだし。
◆◇◆◇◆◇◆
周囲にモンスターの反応も無いので、イチもバックパックから出してやって、二人で待つことにした。
イチは、目の前の大きいな巻貝に興味津々と言った様子で、「大きいねー! 何これー!?」と燥いでいた。
そんなイチを見てほっこりし、待つのも苦では無かったのだが、それから暫く経って――――
「ふう。お待たせしました。お騒がせして申し訳ありませんでした」
――――彼女が、何事も無かったかのように戻って来たのだった。
さっきはどうしたのか尋ねるが、「いやー、急にお腹が空いちゃってー。余りの空腹に混乱して、変なこと口走ってましたよねー? 気にしないでくださーい。てへぺろ♪」とはぐらかされてしまった。
絶対嘘だと思うのだが、本人が話したくないのなら、無理に聞き出すのもなあ……。
あと、こっちでも「てへぺろ」って使うの?
「ところで、私が引っ込んでからどのくらいの時間経ちました?」
「え? えーっと……正確には分からないけど、多分……十分くらいかな?」
「わーい……本当なんだー。ここまで夢だった可能性も捨ててなかったんだけど、完全に現実です。ありがとうございましたー」
「は?」
「あッ!? いえ、こっちの話です!」
そんな彼女が、よく分からない。
何か隠しているんだろうか?
そもそもモンスターでもないみたいだし、一体何者なんだ?
「君は、何の種族なの?」
「え? 私は……モ、モンスターってやつですよ? 怪物種!」
「モンスターってやつ? いや、そんなはずは……?」
不思議に思い、再び鑑定を使ってみると、そこには驚きの鑑定結果が表示された。
▶ココナッツクラブ
名前 [ココナ]
種族 [寄居虫
〔モンスたー〕]
レベル [4]
スキル ナビ
所属 [-]
あれえ!?
さっきは確かに表示されな……?
そんなことより、俺は驚愕の事実に気付いてしまった。
イチを庇って、急いで構えの姿勢を取る。
「えっ!? ど、どどど、どうしました!?」
「君、名前があるのか!? ボスモンスターってことか!?」
「ボス?」
『違いますよー』
突然の事態の進行に、混乱する。
アルル様が戻ってきたようだが、名前があるのにボスじゃないのか?
『いえ、実は彼女、リポップの際に不具合を起こしたらしくて。それを再調整するため、ちょっと席を外してました。名前があるのも、彼女の存在を安定させるための処置なので、ボスではありませんよ。そもそもレベル4しかないボスなんて、いるはずないじゃないですかー?』
いや、知りませんけど。
でも、確かにボスにしては弱すぎるのか?
そういうことならと、構えを解いて向き直る。
「ごめん。俺の勘違いだったみたいだ。何でもないよ」
「よ、良かった……。私が何かミスしてボロを出したのかと……」
「ボロ?」
「あッ!? いえ、何でもないです! 何でもないですから、気にしないでください!!」
「は、はい!」
わちゃわちゃと慌てる彼女にたじろぐ。
よく分からないけど、まあ、モンスターだというなら、封印させてもらうしかないかな?
「と、ところで……」
「はい?」
彼女が、急におずおずと口を開いた。
何か質問があるのかなと、耳を傾ける。
「さっきの「仲間になって一緒に旅する」って話、まだ有効ですか?」
「……はい?」
「も、もし宜しければ、私をお供させてもらえないでしょうか!? 不束者ですが、どうかお願いします!!」
「…………はいい!?」
突然の申し出、突然の心変わりに、またも混乱する。混乱耐性持ってるんだけどな?
でも、急になんで!?
「実は、私ってちょっと変わり者でして、色々と問題があったんです。でもなんか……その……えーっと……きゅ、急に、神様からのお告げで、あなたと一緒に行けば私は救われるでしょうという声が頭に届いて……?」
そこだけ聞くと、ヤバい人じゃないか。
だが、アルル様の話とも重なるし、不具合とやらが治ったお陰で心変わりしたってことか?
アルル様? これ本当に大丈夫なんですよね?
『はい。そんな感じですね。大丈夫です。良かったじゃないですか、念願の仲間が増えて』
そんな感じって、随分ふんわりとしてるなあ。
でもまあ、よく分かんないけど、仲間が増えるなら大歓迎だ。
それならばと早速、久々となる封印スキルの特殊封印というのをやってみることにした。
《怪物種封印スキル》使用!
俺の体から光が溢れ出す。
いつも見慣れた封印の光だが、これから仲間が増えるのだと思うと、なんだかいつもとは違って見える……気がする。
光に包まれたヤドカリの「ココナ」は、ジッとしたまま動かず、いつもと違ってその体も消えることなく、一瞬強い輝きを放った後、光は俺の下へと戻って来た。
そうして光が俺の中へと吸い込まれるように消えると、ココナとともに残された俺の下へと、メッセージが届けられた。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔ここな……ッツクラブ〕の特殊封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.95%です】
ん?! なんか今、メッセージが噛んだ気がしたんだけど、本当に大丈夫なのか?!
一抹の不安を残しながらも、こうして待望の二人目となる仲間が加わったのであった。
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現在の保有ポイント:
982+15=997
(うち、Pバンク:300)
累積ポイント:
58994+15=59009
(次の特典まで991P)
次話(148.5話)は、この後すぐの投稿となります。
次回投稿(149話)は明日9月8日となります。
どうぞよろしくお願いいたします。




