第134話 ネームド・モンスターの秘密
本日二本目です。
よろしくお願いします。
今回も、スキル取得が続く箇所は無視してください。
※ブックマークが100件を突破しました。
ご愛顧、誠にありがとうございます。
ヤモリ型、ムカデ型の二匹のモンスターと対峙する俺とイチ。
じりじりと間合いを詰められているが、どうしようか……?
「ねえ、二人とも。俺の仲間になる気は無い?」
一応、そうやって聞いてみる。
(……シュ? シュシュシュシュシュ!)
(キチキチキチキチキチ!)
二体ともに、鼻で笑われた。ですよねー。
(ますたー、毒の治療を……ど、どうしよう……)
イチが、珍しくアタフタとしている。
その可愛らしさで、毒は抜けました。ありがとう。
だが、そんな冗談では現状は何も変わらない。
残念ながら毒は残ったままだし、目の前のモンスターの臨戦態勢も変わらず。
イチに、毒耐性があるから大丈夫だと伝えるが、それも正直、強がりでしかなかった。
二体と目が合ったまま、じりじりと後退るが、その分、向こうもにじり寄ってくる。
どうしようか……。
……待てよ? そういえば……。
(シュシュシュ、馬鹿な奴め。そ…………んな無防備にして、いい獲物だナ!)
(キチキチ。毒も回っているのだろう? 貴様はもう終わりだ!)
(シューッ! 死ねーッ!)
(キチキチ! え……って、グヘエ!?)
目の前で、ヤモリがムカデを襲い始めた。
うわあ、ここまで上手く行くとは思っていなかったから、ちょっと笑える。
(キチッ!? 何をする!?)
(シュシュシュ! 死ねーッ!)
(死ねーッ!じゃねえわ! 敵はあっちじゃ!)
(ま、ますたー? 何これ?)
イチにあることをお願いし、《簡易瞬動》で縺れる二体のモンスターの背後へと回り込む。
そのままムカデの背に乗っているヤモリの上から、二体ともにボディプレスを浴びせ、腕を伸ばしてムカデの口を頭ごと地面に押し付けて使えなくする。
そのタイミングで、伝えていた通りイチがヤモリの口を塞ぎに飛びかかり、俺ももう一方の手でヤモリの首を、両足と体を駆使して胴体や脚を出来るだけ動けなくし、二体の動きを封じ込めた。
その隙に、封印スキルで仕留めにかかる。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔森百足〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%です】
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔六脚家守〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%です】
「ふう、危なかった」
(今の、何が起こったの?)
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返った岩場で、イチが不思議そうに尋ねてきた。
突然のヤモリの裏切りで、スキルを使った俺以外はさぞ驚いたことだろう。
幻惑視:
目を合わせた相手に、軽度の幻惑作用を与える。任意に発動。幻惑の度合いは、スキルレベル及び熟練度に依存する。
相手と目を合わせて後退っていた時に閃いて試してみたのだが、ランクも最下位のままだったし、ここまで上手く行くとは思っていなかったんだけどな。
幻惑とやらの内容は分からないが、あのヤモリはどうも、目の前のムカデを襲う相手と誤認してくれたみたいだった。
何にせよ、助かったよ。
(そんなスキルが……? 凄いよ、ますたー!)
喜ぶイチを傍らに毒が抜けるのを待ち、漸く岩場からの脱出を成し遂げることが出来た。
今回の成果は、ヤモリ九体、ムカデ四体、カタツムリ二体、グロード一体。
なかなかの数だ。
合わせて十六体の封印をしたが、前のような疲労感はまだ来ていない。
レベルアップで封印スキルを使える回数も増えたようだし、次回からはニ十体を上限に決めて、限界を探ってみることにしよう。
そんなことを考えながら、俺はヴィアーズの町へと帰還した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヴィアーズの町の宿屋にて。
『そろそろ、説明しても良い頃ですね』
そう前置きをして、アルル様が名前持ちモンスターというものについての説明をしてくれた。
『この世界には、固有名を持つモンスターが存在します。全部で百体のそれらが、ネームド・モンスターと呼ばれる、所謂ボスモンスターです』
なるほど。名前を持っているのが、ボスモンスターなのか。
でも、たったの百体しかいないなら、どんどん討伐されていくように思えるんですが?
『ネームド・モンスターの特徴で最も厄介とされるのが、リポップの際のパワーアップです。倒されると何処かに転生するのは他の怪物種と同じなのですが、名前持ちの個体は、その際に少し強くなって生まれて来るんです。なので、下手に倒すとどんどん強くなってしまうので、人族は手に余しているのが現状ですね』
詳しく話を聞くと、そういう理由があって、人族はネームド・モンスターの生息域を避けて町村を作っているらしい。
ネームド・モンスターは強い分、その消耗も激しいため、普段は住処でジッとして温存し、配下のモンスターたちに行動させているのが普通なのだとか。
ボスモンスターの影響下のモンスターたちが他の生物を襲うというのは、そういうことだったのか。
『ボスの強さは個体ごとに全く異なりますが、スキルでの封印は、最弱の個体でも一般の怪物種五十体分くらいの負担になりますので、今の咲也さんにはまだ無理です』
マ、マジっすか!?
てゆーか、さっきのゴーレムは何番目くらいの強さなんです?
『あれは、下から大体二十番目といったところですね。一般の怪物種の約百体分程度でしょうか』
でしょうか、じゃないわ!
本気でヤバい相手だった。逃げて正解!
そんな話も終わり、イチとともに休息を取っていた俺は、いつものように日課を終え、ポイントカードで封印したモンスターから得たスキルを取得していた。
《壁歩き》
《舌打》
《毒噛みつき》
《奇襲》
《瞬発力上昇》
《生命力上昇》
《舌打》
《瞬発力上昇》
《壁歩き》
《瞬発力上昇》
《奇襲》
《鈍化攻撃》
《粘液分泌》
《壁歩き》
《毒噛みつき》
《舌打》
【《舌打・最下》を取得しました】
【《舌打・最下》を取得しました】
【《舌打・最下》を取得しました】
【舌打・最下、舌打・最下が《舌打・最下》に統合されました】
【《舌打・下》を取得しました。《舌打・最下》に上書きされました】
【《壁歩き・最下》を取得しました】
【《壁歩き・最下》を取得しました】
【《壁歩き・最下》を取得しました】
【壁歩き・最下、壁歩き・最下が《壁歩き・最下》に統合されました】
【《壁歩き・下》を取得しました。《壁歩き・最下》に上書きされました】
【《奇襲・最下》を取得しました】
【《奇襲・最下》を取得しました】
【奇襲・最下、奇襲・最下が《奇襲・下》に統合されました】
【《生命力上昇・最下》を取得しました】
【《瞬発力上昇・最下》を取得しました】
【《瞬発力上昇・最下》を取得しました】
【《瞬発力上昇・最下》を取得しました】
【瞬発力上昇・最下、瞬発力上昇・最下、瞬発力上昇・最下が《瞬発力上昇・下》に統合されました】
【《粘液分泌・最下》を取得しました】
【粘液分泌・最下が《身体強化スキル》に統合されました】
【《鈍化攻撃・最下》を取得しました】
《毒噛みつき》以外、全部取得した。
次いで、スキルのランクアップを。
【《幻惑視・下》を取得しました。《幻惑視・最下》に上書きされました】
【《防御力上昇・下》を取得しました。《防御力上昇・最下》に上書きされました】
【《器用さ上昇・下》を取得しました。《器用さ上昇・最下》に上書きされました】
ちょっと迷ったのだが、最近はよく活用しているし、思い切って五十ポイントでこれもランクアップさせておいた。
【《奇襲・中》を取得しました。《奇襲・下》に上書きされました】
ふう、こんなところか。
イチも段々と強くなってきているし、今のところは順調と言えよう。
▷イチ
名前 [イチ]
種族 [モンスター
〔ステムセル・スライム〕]
性別 [女]
年齢 [0歳]
生年月日 [非表示]
出身 [非表示]
ジョブ [モンスター]
レベル [7]
称号 [-]
スキル
貪食、再生、低HP衰弱無効、分化、初期化、
悪食、再生細胞付与
所属 [春野咲也〈魂封印〉]
一泊し、明日は次なるモンスターの生息地、東の一帯を探索してみるつもりだ。
イチとともにひと時の安息を得て、次の目的地を見据える。
いずれ来る、ボスモンスターとの戦いのためにも、レベルアップを急がなければなるまい。
……
新・異世界生活十日目
今日は東へと向けて出立し、北東の雑木林、そして南東の砂地を探索する予定だ。
今日と明日の二日間やる予定ではいるが、一日一か所にするか、一日二か所を二日間やるかは、まだ未定でいる。
街道から外れて東へ進路を取り、暫く歩いたところにその場所があった。
“雑木林”
一見穏やかそうに見えるそこから、モンスターたちの気配と声がしていた。
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現在の保有ポイント:
65+157-172=50
(うち、Pバンク:0)
累積ポイント:
54851+157=55008
(次の特典まで992P)
名前 [春野咲也]
レベル [6⇒7]
称号 [怪物種の友達]
[怪物種を封じる者]
[不殺の誓い]
夜に、もう一本投稿予定です。
時間は未定ですが、手が空き次第の投稿となります。
もう少しでPVも六万に到達するようで、ブクマやアクセス数も含め、感動が止まりません。
皆様、本当にありがとうございます。




