第132話 思い出の地②
遅くなってしまいましたが、投稿可能なので投稿してしまいます。
よろしくお願いします。
「さあ、始めようか?」
鞄から出したイチに、そう声をかける。
(ボクも頑張るよー)
相変わらずの可愛らしさで、プルンプルンと揺れるイチ。
殺風景な岩場に、天使が降臨した。
そんな至福のひと時に、横やりが入る。
俺の気配察知に、反応があったのだ。
注意して気配を探ると、岩場のあちこちに反応が確認出来た。
というか、岩と岩の間や、大きな岩の下にある隙間など、隠れやすそうな箇所からの反応が多い。
獲物を待ち伏せして狙いやすいからなのか、鳥や肉食獣から身を隠しやすいからなのか分からないが、恐らく気配察知無しで人が迷い込んだりしたら、なかなかの惨事になり兼ねないシチュエーションだと思う。
これは、今後のためにもある程度まで間引いておいた方が良さそうだ。
イチと相談して、試しに一番手近な場所にいたモンスターをターゲットに、奇襲作戦を実行してみる。
作戦はシンプルなものだ。
イチに、岩の隙間を通ってモンスターの背後に回ってもらう。
その気配を探って、イチが仕掛けるタイミングに備えて、俺も接近する。
イチが脅かす。
モンスター、驚いて飛び出す。
俺が捕まえて取り押さえる。
以前と同じく、イチが口を塞ぐ。
仲間になるか意思確認してから、封印する。
以上。
そこまで完璧に上手くは行かないだろうが、気配察知のスキルを有効活用出来るなかなか良い作戦ではないだろうか?
イチの身の危険が心配ではあるが、万が一の時はすぐに俺が助けに入ればいいから、大丈夫だと思う。
というわけで、早速実行だ。
(クワアアアアーー!?)
一体目は、トカゲのようなモンスターだった。
一瞬、ゾワッと毛が逆立ったが、例のオオトカゲではなかった。
▶ロッキャクヤモリ
名前 [なし]
種族 [モンスター
〔六脚家守〕]
レベル [6]
スキル
壁歩き、瞬発力上昇、舌打、奇襲
所属 [鑑定失敗]
以前、始まりの森でも見かけた種類のモンスターだ。
舌打ちというスキルがあったので、口を警戒して重点的に押さえ込む。
当然ながら仲間にはならなかったので、早々と封印させてもらう。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔六脚家守〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%以上です】
オオトカゲではなく、ヤモリ型だったみたいだ。
それよりもこの作戦だが、脅かした時に大きな声を上げられてしまうのが難点だな。
モンスターたちが密集していた場合、集まってきたり襲われたりし兼ねないから、前もってターゲットを絞ってからやるようにしよう。
続いては、岩場の少し進んだ先、大きな岩の上にいる個体をターゲットにしてみよう。
(キョエエエエーー!?)
▶ロッキャクヤモリ
名前 [なし]
種族 [モンスター
〔六脚家守〕]
レベル [7]
スキル
壁歩き、瞬発力上昇、舌打、奇襲
所属 [鑑定失敗]
またかよ。
ここ、ヤモリの集団生息地か何かなの?
そう思いながらも、サクッと封印へ至る。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔六脚家守〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%以上です】
次は、そこから右手方向の岩の下だ。
▶フォレスト・センチピード
名前 [なし]
種族 [モンスター
〔森百足〕]
レベル [5]
スキル
毒噛みつき、瞬発力上昇、奇襲
所属 [鑑定失敗]
飛び出した長い体に一瞬怯んだが、それほど大きくはなかったので、馬乗りになって押さえ込む。
口の前に付いているクワガタ虫のような牙をカチカチと合わせて音を発していたため、そこを押さえてから意思確認に移る。
毒持ちのようだが、その牙の先端から分泌するようなので、それを押さえてしまえば脅威では無かった。
ちょっと強そうでカッコイイし、上手く隠れて一緒に旅出来そうだなと思ったりもしたのだが、残念ながら仲間にはならず。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔森百足〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%以上です】
気持ちを切り替えて、更に奥へと進む。
▶ロッキャクヤモリ
名前 [なし]
種族 [モンスター
〔六脚家守〕]
レベル [7]
スキル
壁歩き、瞬発力上昇、舌打、奇襲
所属 [鑑定失敗]
うーん、やっぱりヤモリが多い。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔六脚家守〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%以上です】
偏りはあるものの、封印という名の経験値稼ぎは順調だ。
この調子なら、今日中にレベルアップしそうな気がするぞ。
そうして、その先も封印を繰り返しながら進んで行くと、ちょっと見たことの無い種類のモンスターと遭遇した。
▶プチ・グロード
名前 [なし]
種族 [モンスター
〔プチ・グロード〕]
レベル [2]
スキル
死肉食い、生命力上昇、瞬発力上昇、簡易瞬動、聴覚強化
所属 [鑑定失敗]
おお? レベルの割にスキルが多いな。
外見は、アリの頭にバッタやキリギリスに似た体をくっつけたような姿をしている。
茶色っぽい体色で、少し平べったい形だ。
カサカサと移動しているが、これまでの前世の生物似のモンスターたちとは違い、こちらのオリジナルっぽい。
てゆーか、こっちに気付いたみたいなのに、逃げる様子も襲ってくる様子も無いぞ?
恐る恐る近付いてみるが、警戒はするものの、やはり逃げない。
ちょっと可愛いし、これは仲間に出来るのでは?
そんな俺の頭に、突如《天の知らせ》スキルが警報を鳴らした。
何故か、このモンスターは連れて歩かない方がいい気がした。
害は無さそうだし、敵意も感じられないのに、何故だろう?
一応交渉はしてみたのだが、そのグロードさんとやらには、「興味無い」のひと言でバッサリと切られて終わりだった。
襲って来るわけでもないし、封印するのも忍びない……のだが、俺の《天の知らせ》がガンガン警報を鳴らし続けている。
迷った挙句、押さえ込んで封印することに決めたのだが、直接触ろうとした瞬間に《天の知らせ》の警報音が更に上がったので、手持ちの布を使い捨てにして覆い、押さえて封印する。
【《怪物種封印スキル》を使用しました。〔プチ・グロード〕の封印に成功しました】
【自己領域の残量は99.99%以上です】
一体、何だったのだろう?
モンスターには変わりないのだから、封印してマズいことは無かったのだが、無害そうだったし可哀想な気がした。
さっきまでの警報の意味もよく分からないし、謎多き種類のモンスターだったなあ。
そう思いながら、俺は先へと進んで行ったのだった。
――――これが、俺とグロードというモンスターとの初となる出会いだったのだが、この時の俺には知る由もなかった。
元の世界にこそいなかったものの、同類と言えるモノが存在していたことを。
カサカサと動き回り、素手で触れるのを躊躇われるという特徴がそっくりなことを。
こちらの世界のそれは、「Gロード」……もとい、「グロード」と呼ばれていた。
それを俺が知るのは、まだまだ先の話なのであった――――
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現在の保有ポイント:
8+57=65 (うち、Pバンク:0)
累積ポイント:
54794+57=54851
(次の特典まで149P)
作者はあまり忌避感や嫌悪感は強くない方なのですが、それでも素手では触りたくありませんね。
一匹見たら百匹はいると思えと言いますし、きっとこのグロードも、何処かに沢山……ブルブルッ!
ちなみに、地球産そのままで登場させなかったのは、嫌いな方への配慮のつもりです。
元々、頭文字のアルファベットが共通のこれ(グロード)を考えていたので、登場させられて良かったです。
次話は8月22日の投稿予定です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。




