第120話 謎のテンション
えーっと……多分深夜に書いたものです。
お見苦しい内容かもしれませんが、たまには馬鹿しようと思い、体裁だけ整えてそのまま投稿します。
なお、タイトルに深い意味は無くそのままの意味ですし、物語も進みません。
もう読んでられないわ!という方は次話へお進みください。
(狂態)
バーンさんから同行の誘いを受け、俺は二つ返事でお願いした。
だが、そういえばこの牛車……? もう面倒臭いから、カブフ車でいいや。
このカブフ車の主を無視して話を進めていいものなのか?
「あら、良かったわね。じゃあ、依頼料はバーンさんが払ってくれるわけね?」
ほら、怒ってる。
「はあ? そこは俺の雇い主でもある、商人様がだな……」
「まあまあ、喧嘩しないで? よく考えたら、その提案はありがたいですけど、二人にご迷惑になってしまいますし……」
「あら、ごめんね? 今のは冗談で言ったのよ? 怒ってたわけじゃなくて、むしろ私から提案したかったくらいなのよ?」
え? それは嬉しいけど、どうして?
「そりゃそうでしょ? 気配察知が出来て、素行に問題も無い。おまけに、目的地も一緒。誘わない方がどうかしてるわよ」
「そうそう。ただの同乗者のつもりが、話し相手兼、手伝い兼、護衛も出来る優良物件だったってなら、こっちから頼み込んで雇いたいだろ?」
「賃金は、銀貨一枚でどう?」
褒められ千切られ、あっという間に報酬の話にまで進んだ流れに付いていけず、嬉し恥ずかし混乱し、だ。
慌てて報酬は要らないとそこだけ断るが、それは駄目だと待ったがかかる。
「もし仮にあなたの運賃が発生するとしても、ここまでの働きだけで私は十分元が取れるのよ? だから、ここからはこちらが報酬を払わないと、商人としては恥になってしまうわ」
ああ、この人も商人さんと同じことを言うんだな。
懐かしさが込み上げてきたが、それに流されて甘えるのも心苦しい。これだけ色々なことを教えてもらって楽しく移動させてもらって、おまけにお金をもらうというのはちょっと申し訳が立たない。
それでポーンさんと言い争うのも違う気がするし、妥協案を示してみよう。
「それでは、お金を貰うのは悪い気がするので、現物支給でいただいてもいいですか?」
「現物?」
「はい。手伝いや護衛の見返りとして、知識と案内をお願いします。具体的には、さっきみたいに一般常識的なことと、この島の町村のことを教えてください。それと、経由する村での買い物などに付き合って欲しいんです」
これなら、俺は凄く助かるし、釣り合いも取れるんじゃないだろうか?
「言い得て妙、だな。つまり金の代わりに、情報が欲しい、案内人を雇いたい、と?」
「あのね、そんなんで釣り合わないでしょ? 銀貨一枚相当の情報なんて、私たちは商売そっちのけで話してなきゃならなくなるわよ?」
ありゃ、駄目か?
だが、話術スキルさんと役者スキルさん、その他の皆も、お願いします。
上手く言い包められるように、力を貸してくれ。
「でも、護衛とは言ってもモンスターが必ず出るわけではないですし……。さっきみたいに空からでも来ない限り、彼一人で十分ですよね? なら、護衛料はやり過ぎかなと」
「……た、確かに、一理あるわね。面白いから、続けてちょうだい?」
面白い……?
あッ、この人、俺が言い包めようとしてるのに気付いた上で、話に乗るか決めかねているな?
俺、完全に掌の上だ。
だけど、負けてなるものか!
ニヤニヤとするポーンさんに、話を続けようとする。
そんな中、バーンさんは迂闊にも口を挟んだ。
「オレは楽が出来て最高な……」
「「ちょっと黙ってて!」」
「……はい。 なんか、今日会ったばっかりなのに、仲いいなあ……」
しょんぼりするバーンさんには悪いが、この戦い、負けるわけにはいかない。
何でかと聞かれれば、ただなんとなく、なんだけど。
「ふふふ、情報を安く見ているようですが、それは大きな間違いです。情報だって価値あるものです。俺はまだ何も知らない状態なので、教えてもらえる情報には高い価値を見出している。だから、ポーンさんたちには大したことの無い情報でも、俺からしたら、情報料を払う必要すらあるくらいなんです!」
「ほおぉ? それでそれで?」
なんか変なテンションになって来てるし、頑張れば頑張るほど自分の首を絞める気もするが、この場のノリが楽しいから構わず続ける。
「その上案内まで頼んでいるとなれば、運賃を加味したら、到底一度だけの気配察知や荷下ろし程度では、釣り合いなんて取れないと思いませんか?」
「なるほどなるほど。続けて?」
「つまり、はみ出した余剰分は働いて補わなくてはいけない。護衛料を貰うどころか、場合によってはモンスターと戦うことも辞さない、それぐらいして初めて釣り合いが取れたと言えるのでは!?」
「す、素晴らしい主張だわ! ぐうの音も出ない! その熱さに免じて、あなたの要求を呑みましょう……」
やった、やったぞ!
なんかポーンさんも変なノリになってるが、これで……。
「あなたの要求通り、バーンは解雇するわ。護衛はあなた一人で十分よ」
「なんでだよ!?」
「すみません、バーンさん。俺の力が及ばないばかりに……。あなたの分まで頑張りますので、ここで降りてもらっていいですか?」
「色々と、なんでだよってば!? え? お前ら、いつの間に手を組んだの!?」
なんか面白いから、《読心術スキル》でポーンさんを先読みして、合わせる。
スキルの無駄遣い? 知らんなあ?
「「はい、おーりーろ! おーりーろ!」」
「息ピッタリだな、おい!? チクショー、覚えてやがれー!」
泣きながらカブフ車の最後尾へと逃げて行くバーンさん。
いやあ、彼もノリ良すぎだし、息ピッタリじゃんか。
「もう、バーンさんとポーンさん、お二人は結婚したらいいと思います」
「この状況で、よくそんなこと言えたな!?」
「そうかなあ? 年下に泣かされて、しかも中途半端に馬車から飛び降りられない男はちょっと……」
「冷静に分析すんな! つーか、鬼か! 鬼人族か!」
「猪人族ですけど……? え、どした? 頭打ったの? お医者様のところ行く?」
「行かねーよ!? なんで急に素に戻ってんだよ!?」
「残念ながら、彼はもう手遅れです……」
「春野咲也君!? 君は今日会ったばかりなのに、とても酷いね!?」
なんだろう、このノリ。
めっちゃ楽しいわー。
「ご満悦な顔してんじゃねーよ! イジメか!?」
「あのぅ……どなたか知りませんが、人の馬車の上で暴れないでくれます?」
「イジメだね!? お前こそ医者に行け! 記憶喪失か!」
「行きませんけど? あー、疲れた。もう飽きたからいいや」
「急だな!? 飽きんな! 十年来の付き合いで、そんな姿初めて見たぞ!?」
「あのー……それで、いつ飛び降りるんですか?」
「お前は、そのまま、続けてんじゃねーーーーッ!!」
あー、楽しかった。
ゼエ、ハア、と息を切らすバーンさんを尻目に、満足してポーンさんの方に向き直す。
「お、鬼……」
何か聞こえたが、気にしない。
「あなた、なかなかやるわね。春野咲也君って言ったかしら? そのノリの良さにも免じて、あなたの言う通りに、現物支給にさせてもらうわ」
よっし、勝った!
《読心術スキル》でポーンさんの作りだした流れに乗ったお陰で、会って間もない二人の間でも立ち回ることが出来たぞ。
それを人は“掌の上で踊る”と言うが、なんか凄く楽しかったから、まあいいや。
「ただ、真面目な話をしてもいいかしら?」
「はい」
「あなた、自分が大損してることには気付いているの?」
「ええ、もちろん。銀貨一枚ドブに捨てて、護衛と手伝いを引き受け、その報酬は大したこと無い情報と村内の付き添いだけだからってことですよね?」
「ふっ。分かっているのなら、もう何も言わないわ。私は銀貨一枚得するだけだし」
「何だこれ? お前ら、ホントに何やってんの?」
復活して来たバーンさんに、《読心術スキル》を試してみたことを説明し、悪ふざけを謝罪する。
「いいのよ。実質、一番楽しんでたのはバーニッツなんだから」
「そういうのバラすなって!」
「え!? そうなの? 意外!」
「人から弄られるの大好きなのよ。前に彼女がいた時も、ベッ……」
「もう止めて! オレのライフはゼロよ!」
なぜ、そのネタを知っている?
ともあれ、楽しい同行者が出来たものだ。
こうして俺は、苦せずしてヴィアーズまでの移動手段とともに、頼れる案内人を見付けることが出来たのであった。
作者は正常です。今は。
深夜に何が……?(笑)
次話は21時頃に。




