表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/444

第105話 制限解除

ごめんなさい、今話もほぼ説明回になってしまいました。




「そういえば、どうしてまた学生服に戻っているんですか?」


『ああ。それは、タイムパラドックスを防ぐためです』


 タイムパラドックス? 聞いたことはあるけど、なんだっけ?


『具体的に言うと、あなたが仮にこの時代より未来世界で手に入れた服を着て、未来の物や食料品を持っていたとしますよね?』


「はい」


『この時代で未来を変えたら、あなたがいた未来は消えるので、そこで得た衣類や物品を持っているというのは、矛盾して、おかしくなりますよね?』


「……はい?」


『もっと言うと、未来の食料を食べてそこから栄養を得ていた場合、その栄養自体が無かったことになります。すると、もっとおかしなことに……』


「え? え?」


『まあ、少し難しい話でしょうが、要するに未来と過去()とで矛盾が生じると色々と面倒なので、その対策として未来世界の物は一切合切を処分させていただいた、というわけです』


 うーん、分かったような、分からなかったような……?

 あ、でも、あっちで過ごした記憶や、教えてもらった知識・技術は矛盾にならないのだろうか?


『なかなか鋭いですね。ですがそれは抜け道があって……』


「抜け道?」


『記憶とは曖昧なものですので、疑似記憶とすり替えることで、パラドックスを防げるんです』


「疑似……?」


『つまり、本来の記憶と全く同じ、私が作った作り物の記憶とすり替えることで…………あ』


 ガタガタブルブル。

 オレノキオクハ、ツクリモノ?


『だ、大丈夫ですから! 今の説明だと怖く感じたかもしれませんが、神がやったことですから、その違いなんて神にしか分かりません。例えばあなたがスマホに文字を打ち込んだとして、それを全消去した後に全く同じ文字を打ち込んだら、その違いなんて生まれないでしょう? それと同じように……だから、とにかく、大丈夫なんです!』


 最後、ちょっと強引だったけど、ほ、本当に大丈夫なのか……?


『第一、あなたが前世で死んだ時だって、死の記憶を消したと言ったじゃないですか。それで今まで、何か問題が起こりました?』


 あ、そういえば、そうでしたね。

 まあ、アルル様のやることなら、間違いは無いでしょう。信じます。


『切り替え早いですね……。ま、まあ、そういうわけで、そんな裏技を使って切り抜けられるので、記憶や技術に関しては大丈夫なんです。あちらでの食事も、体の組成成分の結果だけを置き換えさせていただきました。物に関しても出来なくはないのですが、多くの人間が製作に関わっているので、その辺を調整するのが結構手間で。ですので、あちらで買った物に関しては諦めてください。えっと……怒ります……?』


 いえ、怒りませんって。

 そんなに心配しなくても、アルル様のすることは信用してますよ、基本的には。


『一言多かった気もしますが……。というわけで、前世からの転生時に私が与えた物と、ポイントカードで入手した物以外は、失われました。ごめんなさい』


 そう言われて改めて所持品を確認すると、転生後から買い揃えた物は見る影も無く消えていた。

 今の所持品は、身に付けている学生服と鞄、それと鞄の中身に一年前と同じ前世の教科書やノート、スマホに、女神印のポイントカード、ポイントでもらった貨幣、魔法薬、それと短剣だけだ。

 蜥蜴人の服屋さんに貰ったネックレスのお守りや、露店で買った“火の指輪”まで、きれいさっぱり無くなっている。

 マジか……。また旅の道具やら日用品、イチから買い揃えなきゃならないのか。トホホ……。


『それと……残念ながら、以前お渡ししたお金は、この時代では使えませんので』


 ……え?


 ええ!? そ、そりゃそうか、時代が違うんだから、当たり前か。

 じゃ、じゃあ、この先どうしたら? 貨幣としては駄目でも、単純に金とか銀としては売れるか?

 それを元手に何とかするしかないか?


『というか、この時代ではまだ、お金が統一されていないという事情もありまして。あの未来世界では、モンスターがいなくなったことでの歓喜や様々な事情で気運が高まり、奇跡的に統一出来たようなものなんですよ? あなたの前世を思えば、凄いことでしょう?』


 うん? そう言われてみれば、俺の元いた世界では国ごとなどで通貨は違っていたなあ。

 ファンタジーだからサラリと流してたけど、通貨が世界共通なのは驚くべきところだったのか。


『そういうわけで、国ごとや地域ごとで通貨は異なりますので、その都度頑張って手に入れてください。中には両替出来る場合もありますよ』


 わーお。一気に冒険の難易度が上がった気がする。

 今まではアルル様の過保護のお陰で苦労……は、色々してたけど、お金に関しては一切無かったからな。

 まあ、仕方がないよな。もう成人年齢なんだし、ここいらで覚悟を決めて独り立ちしないとな。


『まあ、いきなり突き放すのもアレなんで、この国の通貨の銅貨、銀貨だけはポイントと交換で差し上げます。色々黙っていたお詫びも兼ねまして』


 あら、まあ。過保護継続中?

 なんだか気合いを入れた分、肩透かしされてしまった。

 でも、助かることに変わりは無いし、ありがたく頂いておこう。

 アルル様、感謝します。


『どういたしまして。因みに、白金貨までは素材としての価値しかありませんが、天金貨に関してだけは、この時代でも普通に使えますよ?』


 天金貨……?

 ああ、あの貨幣のラスボスのことか。「普通に」って、出したら大騒ぎになるのは変わらないのでは?

 それは遠慮させていただいて、引き続き鞄の肥やしにしますとも、ええ。


『そうですか? まあ、いいでしょう。それで、さっき言っていたもう一つの話なのですが』


 そういえば、俺が他の人たちと違っていたり、スキルが修得出来ない理由があるって言ってたっけ?

 それもタイムパラドックとやらが関係しているんですか?


『タイムパラドック()、です。簡潔に説明しますと、その対策として咲也さんの()()には、勝手ながら制限をかけさせてもらっていました。その影響で、あちらではマナを上手く扱えず、スキルを自然に修得出来ず、ついでに言うと人の名前を知ることも出来なくなっていました』


「……言われてみれば、誰にも名前を尋ねた記憶が無い……? いや、でもシュリ、それにフレイとフレイヤが……」


『それはどちらとも()()()であって、名前ではありません。「商人さん」や「ガイドさん」と同じ類のものですので、問題ありません』


「……えっ? シュリは確かに俺が付けたから呼び名かもしれませんが、フレイとフレイヤは……?」


『彼らは、師である例の犬鼠人の教えで、他人に本名を明かさないという決まりがあったようです。なので、それは偽名です。故にセーフ』


「はああ!?」


 いやいやいや、セーフって何ですか!?

 あいつら、そんなこと一言も……でもまあ、あの鬼神さんの教えなら、うん、仕方がない。

 きっと教えたいのを我慢して、泣く泣く偽名を告げたんだろう。そうに違いない。

 そうだと言って、お願い。


『そうです』


 よし! アルル様が言うなら本当……てゆーかあの二人、俺の知らない影でも、苦労してたんだな。

 今度会った時には、酒の一杯でも奢ってあげようかな? もう会えないから嘘だけど。


『では、今はもう必要無くなりましたので、その制限を解除したいと思います。よろしいですか?』


 えっ!?

 随分と唐突なように感じるが、それが解除されたらどうなるんだ?

 良いことが起きるのだろうか? それとも……?


『そんなに身構えなくても大丈夫ですよ』


 ホッ。良かった。

 どうやら、危険なことではないようだ。


『身構えても身構えなくても、起こることに変わりはありませんから♪』


 全力でその場から逃げ出す。



 ▷だが、神の為すことだ。この世に逃げ場など無い。



 アタフタと走り回り、目の前の洞窟の入口付近に身を隠したが、それも無意味とは分かっていた。

 アルル様の『ポチッとな』という謎の掛け声とともに、俺に、劇的な変化が起こるのだった。



第二章からは、二~四日に一度、一~三話程度ずつ投稿しようと思っています。

基本的には二日に一話を基準に、余り拘らずマイペースに完結まで続けられるようにしたいと思っています。

次話の投稿予定は、これまで通りに予告していきますので、よろしくお願いします。


というわけで、次話の106話~は二日後、7月22日に投稿予定です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ