地方銀行員異世界へ行く~エピローグ~
友人から聞いた職場の愚痴が面白かったので見切り発車で始まりました(笑)
基本ほのぼの系で行きたいと考えています。ストレス無く気軽に読める作品を目指したいです。ご指摘・感想もどしどしお待ちしています!よろしくお願いいたします。
この世には神も仏も居やしない。それは今までの人生で身をもって知った。
九州の片田舎で生まれ大学入学を機に東京へ出てきてもう15年になる。東京に住みながらも自分が今勤めているのは地方銀行員のサラリーマンだ。
大手銀行がデカデカとした看板を掲げながらそのネームバリューで顧客を囲い込む中、地方銀行といえば辛いものだ。セールスのため社長に会おうにもアポさえ取らせてくれない会社、会った途端に決算書も見せずに借入の金利を聞いてくる社長、挙句にはそんな顧客に尻尾を振れと平然と言ってのける銀行。
大学卒業後に入行して早11年。
同期入社の人間が主任や係長に昇進していく中、今も唯一人営業畑で業務に邁進している。昔からそうだった。上役と上手く付き合う事が苦手なんだ。食い違った意見があれば衝突する、それは当たり前だ。問題はその後。正しくないと思えば上司にだろうと「間違っている」と指摘した。
そりゃあ上司の指示に従わないというレッテルも張られるわな。
最近は下手に経験があるために新任の教育係を押し付けられその上にノルマもこなせと言う。自分が一から立ち上げた案件には決裁を降ろさず、そのくせ上司が持ち込んだ案件は捻じ込んで進んで行く。
「くそったれーっ、絶対に俺が開拓した会社の方が将来の伸びしろはいいじゃねぇかよー!今の決算がどうだってんだ、3年ありゃあ逆転しとるわい!その時になってからじゃあこんな地方銀行相手にしてくんねーぞ!恩が売れるのは今しかねーのに!」
住んでいるアパートの屋上でもはや恒例となった愚痴シャウトが今日も響く。最近はストレスが半端ではない。
「はぁ~。明日どうしよう・・・」
口説いて口説いてようやく社長から設備投資の決断を得たのに。融資が出来ないなんてどう説明すればいいのか。
「くっそー、もう辞める!ぜーんぶだ!何もかも辞めてやる!」
整理が付いてない決算分析も作りかけの調査表も何もかも投げ出したい。それはいつもいつも追い込まれた時に発症する病、いわゆる現実逃避だ。それは特にいつもとなんら変わらない行動。そしていつもならビルの合間に消えていくだけのセリフであった。しかし、
『えっ、兄さんホントに?良かったー、ちょうどこの世界で生きるの止める人探してたんだよね。それじゃあよろしくね!』
そんな声が聞こえてきたかと思ったら、俺の意識はそこでぷっつりと途絶えたのであった。