第七話
奥地に行ってた西島さんの遺体が見つかったって連絡が来たのは次の日のコトだった。そして私のオフィス兼寝床のボロ小屋に村人たちが集まってきたのはそのまた次の日だった。村人たちの先頭にいたのはジープで一日かかる隣町の警察署長バカリ氏。英国式の半ズボンの制服着込んだ中年男性がこう告げた。
「ハルカ・エンドー、村人たちを扇動した罪で逮捕します」
たったの一言で私の2年半に及ぶブマワ村駐在は終わった。ジープに乗せられると昨日まで冗談言ってくれてた村のオトコたちがスゴく怖い顔でスワヒリ語叫んでた。
「お前のせいでブマワの名は世界中に広がってしまった、呪いとともに!」
「こんなモノ作らされた家内は、自分で稼ぐなどと世迷い言を言い始めてロクに家のコトをやらなくなってしまったんだぞ!!」
「見ろ! 人が死んでいるんだ!! お前の同胞は当然の報いを受けたのだ!!!」
奥さん方はお家に閉じこもっているのか姿を見せてはくれなかった。時間が一気に2年半前に戻ったみたい。初めてこの村に来たあの日と同じ夕暮れ時。砂塵の巻き上がる路傍に響き渡る怒りと嘆きだけがこの2年半の成果だとでもいうの?
そこからドドマまで護送されて日本大使館から来た職員に引き渡されてダルエスサラームのジュリウス・ニエレレ国際空港で飛行機に乗ったあたりまでの記憶はどんなに頑張っても思い出せない。