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見せますが何か  作者: 飯田橋 ネコ
第三部
58/63

番外編 インターン

<シリア・アラブ共和国 アレッポ県バアイ>


 トルコ陸軍情報部マハド・ズーリック少佐は、バアイ郊外の寂れた十字路から北西へと走り始めたランドローバーを暫く見ていた。地元の武装組織とカタール政府経由でコンタクトをつけるのに3ヶ月。国境から潜入して先方の連絡員と会合するのに1週間。引き渡しにかかった時間は僅かに3分。終わってみれば実にあっけないものだ。

 砂埃を舞い上げながら去ってゆくあの車に乗せられた人間のため、祖国は相応の譲歩を余儀なくされたものだ。シリア政府軍捕虜数名の送還の見返りがあの島国とのEPA(経済連携協定)交渉の促進だというのだから、外務省の官僚(ヤツら)には感謝状の一枚でも書いて欲しいものだ。

 だいたいからして、たかがフリーランスのジャーナリスト一人の身柄を確保するのに、なぜ我々情報部が動かなければならないのだろう。なぜあの国は自ら動こうとしないのだろう。


 傍らにうずくまっていた人影がふと立ち上がる。十字路を見下ろすこの廃屋の2階で、共に引き渡しを見届けていた連絡員は、漆黒のニカーブの下から目配せをし、影のように去っていく。戦闘員に男をとられ、兵站や後方支援に女が駆り出されることも珍しくないこの国の反政府勢力にあっても、これほど大きな取引の場を女が単身(ひとり)で仕切るというのはこれまでにない出来事だった。

 それにしても、この華奢な感じの女のシリア方言には妙な癖がある。少佐自身、シリアとの国境にほど近いキリスの出身であり、この地方の方言には馴染みがあったが、この女の訛りはそのどれとも似つかなかった。シリアにしては珍しい目だけを見せるベールも相まって、妙に腑に落ちぬ違和感を感じさせた。

 不意につむじ風が巻き起こり、丘を上ってゆく女のベールがはためく。妙に若々しい体のラインが垣間見える。やはり、妙だ。まぁいずれにせよ、もう二度と会うこともあるまい……


 ……あぶなくバレるとこだったわー、ホント本職の情報部員って鋭いわよね。さっき車に乗せた日本人(おとといの夜、武装組織さんのキャンプにお邪魔してこっそり連れ出しました)には全然バレなかったってのに。だいたいからして大学4年の女子にこんなことやらせていいのかしら? 話には聞いてたけど半端ないわね、DIHのインターンって。

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