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見せますが何か  作者: 飯田橋 ネコ
第三部
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第一話

<ロシア連邦アムール州 ブラゴヴェシチェンスク>


 ハイスクールでは歴史を教えています。大学の専攻は中国史でしたので、ここに来るまでに通った街々は、読んだことや聞いたことのある名ばかりです。卒業論文を書き上げる際に見た資料や書籍、地図、それから担当教授との口頭試問の際にもたびたび。ただこうして実際に訪れることになるとは夢にも思いませんでした。

 9月から始まる新学期のため、スプリングビルの自宅でレジュメの整理をしていた私に電話がかかってきたのはつい四週間前のことです。夜、街中に緊急警報のサイレンが鳴り響き、CNNでBTV配信のあの映像が流された直後、群司令部から即日出頭の命令が下されました。

 大学卒業後すぐに教職に就くことがかなわなかった私は、他の仲間と一緒に州兵に登録していました。年に二週間程度の訓練と毎月一回の集まりに出るだけで月300ドル貰えるのはありがたいことでしたし、こんな田舎の州兵が実際の戦争にでかけることになるなど夢にも思いませんでした。

 私の所属しているユタ州兵第97群第115工兵群第1457戦闘工兵大隊が外地に出るのは1961年のベルリン危機以来だそうで、実に半世紀ぶりの外征ということになります。今回の“危機(クライシス)”もその時と同様、我が国とロシアとの間の起きているものですが、その原因や経過、そして紛争地域までもがまるで異なります。

 歴史を教える立場の私が、こうして歴史が作り出される最前線に送り込まれるというのも、考えてみれば妙な……


「おい、教授! 進撃だ! ぶつくさ言ってねえで前の隊に続け!!」

「ったく、いくらこの辺りの土地勘があるったって、こんなヤツが車長じゃぁ先が思いやられるぜ」

「いいか! 歴史ってのは生き残ったヤツにしか語れねえんだぞっ!!」


 クリストファー・ヤコブ少尉が指揮するM1126ストライカー装甲車は、八輪駆動の走破力の物を言わせ、瓦礫と泥にまみれた州都ブラゴヴェシチェンスクの大通りを西へと進む。先行する人民解放軍陸軍部隊の先鋒は、すでにここから1000km以上先のチタに達した。ロシア戦略ロケット軍で最も東に位置するイルクーツク第51親衛ロケット師団の基地まで、あと250kmあまりの距離。


 かつていくつもの部族、民族、そして国家がこの広大なユーラシアを席巻し、いくつもの帝国を築き、栄え、滅んでいった。そのいずれの勢力もなし得なかった動員規模と進撃速度で進むこの軍の目指すものが那辺にあるのか、行軍を続ける兵のうちに知るものはいなかった。

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