第十九話
<バージニア州道600号 ビック・バック・クリーク・ロード>
「ったく、なんでこんな夜中に……」
当直が終わり、ワームスプリングスの自宅へ戻ろうとしていたジェイミーは、本社から支給されていた車載無線機から流れる本社管理部のいけすかねえホワイトカラーの慌てふためいた金切り声に呼び戻され、舗装の荒れた漆黒の州道にピックアップを走らせていた。
「こんなことなら無線機なんか活かしとくんじゃなかったぜ。だいたいなんで電話も通じねえんだよ……」
本社のヤツに言わせれば、本社の建物まで停電しているらしく、山間の発電所とも連絡がつかないので、誰か行って様子を見てこい!……いや見てきてください。ということのようだ。まったくモノの頼み方も知らねえ管理職だよな、実際。
小さくつけていたカーラジオから流れていたカントリーウェスタンがフッと途切れ、次の瞬間、耳障りな合成音が響き始める。んだよ……ってコレヤバいヤツじゃん!?
NORADから出された防空警報を受け、FEMAが起動したEAS(Emergency Alert System=緊急警報システム)は、東海岸全域のテレビならびにケーブルテレビ局の全放送波に緊急の文字メッセージを割り込ませるとともに、ラジオや街のあちこちに設置された巨大なスピーカー塔から耳障りな音を流し始めた。この国で義務教育を受けた者なら誰でも知っている国家緊急警報サイレン。本土への核攻撃を意味するそのサイレンは、全米各地の州軍ならびに予備役連絡所のデスクで鳴りまくる非常緊急呼集の電話とあわせ、金曜の夜の寝床へもぐりこもうとしていた合衆国を叩き起こした。
ラジオの音声をさらに小さくしながら夜道を走るジェイミーは、ヘッドライトが貫く闇の木立の向こうにかすかな水しぶきを見た。貯水池まではまだ半マイルはある。なんで、こんなデコボコした、山道に、……みず!?
貯水池の310万立方メートルに及ぶ水は、ダム基部に埋め込まれた50kgにも満たないC4の爆発により崩壊した堤体から下流へと溢れ出し、そのコンクリートの残骸とともに下流の集落を飲み込み、ムーマ―湖へとなだれこんだ。




