第十八話
<バージニア州アーリントン郡 アメリカ国防総省 3F公衆電話>
「アル! もっと25¢よこせ!」
「もうねぇよスタン!」
「オレの財布ももう空っぽだ……」
「クソ! まったくなんてザマだ」
全ての電力を失ったペンタゴン館内。懐中電灯を片手に幾重ものセキュリティゲートをこじ開け、拳銃で破壊しながらようやく辿り着いた3F公衆電話。四つ星の将軍やその副官たちが、略綬と勲章に飾られた上着を脱ぎ捨て、コイン投入口に25¢硬貨を入れ続ける。
バージニア州とメリーランド州から正副二系統の専用幹線を引き込み、地下には非常用ガスタービン発電機も備え、万全な態勢を整えていたにも関わらずこの体たらく。交流電源につながっていたものは全て破壊され、ポトマック川向うの電話交換局から時代遅れのアナログ回線で繋がれていたこのオンボロ公衆電話だけが生き残ったのだ。
1Fへ降りるにはさらに2箇所のゲートを抜けなければならず、C4(Composition-4=軍用プラスチック爆薬)でも使わなければ開きそうもない防爆ドアのヒンジに、真っ赤な消火用オノを振り下ろし続けるマコーミック海兵隊少佐は、ペンタゴン勤務の間の運動不足と不摂生を真剣に後悔し始めていた。




