第十四話
<コロラド州ピーターソン空軍基地 北米航空宇宙防衛司令部>
北米大陸の大気圏と宇宙空間を24時間態勢で監視し続けるNORAD(North American Aerospace Defense Command=北米航空宇宙防衛司令部)においても、ロシア軍の弾道ミサイル発射は厳粛に受け止められていた。今朝がたワシントンD.C.の在米ロシア大使より、“極東戦局の打開に向けた限定的な戦術核兵器の使用の可能性”について通達があり、既にDEFCON2に移行していた司令部は事態の推移を静観する構えだった。
静止軌道をゆくSBIRS衛星により、ロシア東部イルクーツク基地において複数の熱源の生起が観測され、大気圏内を上昇するブースターから発せられる膨大な量の赤外線の遷移から、それぞれのミサイルの予測飛翔経路が瞬時に弾き出される。
「この赤外線量、戦術核などでは……まさか!?」
モニターには推定着弾地点が赤い円で示され、それら全てがアメリカ本土上空に並び、その円周は刻一刻と狭まってゆく。当直士官は間髪をいれずに警報ボタンに手を伸ばす。四階建ての施設全体に警報が鳴り響き、ありとあらゆるシステムが動き始める。バスケットボールのアリーナほどの広さをもつ指揮センターが俄に活気づく。ほどなく警報が止められ、NORAD副司令アナディルカナダ空軍少将の声が響く。
「こちらは副司令。防空非常事態を宣言する。防空警報アップルジャック。ロシア軍のICBM(Intercontinental Ballistic Missile=大陸間弾道ミサイル)攻撃が進行中。SBIRSの初期評価によると弾頭の数は24。目標はCONUS(Contiguous United States=アメリカ合衆国本土)。これは演習ではない……」
探知システムと解析値のダブルチェックを迅速に進めながら、早期警戒担当将校のスコット空軍少佐は毒づいた。
「一体どうなっている? 奴等なにをする気なんだ!?」




