第九話
再建途上の1〜3課の外地要員の配置と活動状況の報告。4課の衛星写真解析報告。5課の保全態勢報告。わけてもいよいよ動き出しそうな人民解放軍の動静とそれに対峙する国々の情勢について、新館2階角の狭苦しい窓無し会議室であーでもないこーでもないって言いながら市ヶ谷に提出する脅威評価報告をまとめる3時間。いろいろな可能性考慮してみたけれど結局のところ静かに見守るしか無いとの結論。まぁ専守防衛だから仕方がないわよね。で、本日最後の議題は……
「……ロケットを使用しない打ち上げシステムを開発・配備したとしか思えませんね」
ステーションの写真を見た1課長(欧州・中国・ロシア担当)が言う。この数年来、外地情報隊で最も多くの損害を蒙り、多くの同僚や部下をなくしてきた葛西三佐は、私と同い年だけどスゴく年上に見える。
「赤外線を出さずに軌道へ上げるとしたら軌道エレベーターかマスドライバーあたりが有力ですが、いずれもどちらかと言えばSFの領域ですからね……」
長身痩躯の2課長(アジア・オセアニア担当)の阪本一尉はそう言うけれど……
「ではこのステーションは? これも十分SFの世界の代物だと思うケド」
3課長(中東・アフリカ担当)の夏木一尉は首を傾げる。このヒト私が産休入ってから3課に来た5つ下の後輩なんだけどスゴく大人っぽいのよね。美人だし。
「この際、私達の技術水準を基準に推論するのはやめましょう。彼らは何らかの手段でこのステーションを建造した。しかも上がることすら困難な高度に。このステーションと誘導可能な大質量兵器を組み合わせた攻撃がどのようなものになるのか、考えてみましょ」
「堅牢な地下施設、掩蔽壕、弾道ミサイルのサイロなどは全て無力化されますね」
「航空基地、港湾施設、通信・補給拠点、全てが容易に破壊されるわね」
「もし移動目標への誘導が可能であれば大型空母などは格好の的です。おそらく回避運動をする間もなく撃沈されます」
「ミサイル発射深度につけた戦略原潜も同じような物だな」
「となると残る対抗手段は……分散配置した地上部隊だけか」
「もし地上部隊を送り込んだとして、 補給はどうするの? 脚の遅い輸送艦や揚陸拠点は簡単に破壊されるわよ」
「そもそもあの“隕石”がこのステーションからの攻撃と立証できない限り、反撃自体が正当化できない……」
「……補給、このステーションへの補給はどうなっているの? いくら巨大なステーションだからって補給なしでは維持できないでしょ?」
「やはり打ち上げシステムの解明とその拠点の割り出しが必要ですね」
……って、やっぱりそこ行き着くのね。ったく、ホントどこなのかしら?
「……司令、もしかして“そんな地味で時間かかりそうな仕事スゲーめんどい”とか思ってません?」
巻島さん……群司令であり二佐の私がそんなことを思うハズはありませんよね。っていうかいい加減ヒトの心読むのやめなさいよ!
にしたって、たったこれだけの管理職で一つの国家の対外諜報機関運営するとかなかなかムリがあるわよね。




