第二十七話
<中華人民共和国神華集団 坦桑尼亜石炭公司 第35掘削拠点 改め 中国人民解放軍戦略支援部隊航天系統部 坦桑尼亜輸送基地>
表向きは石炭掘削してプラントで液化してパイプラインにのせてダルエスサラームから積出しするための施設だけど、本当は掘削した後の広大な地下空間使って地下100mに直径10kmの遠心加速器を建設するのが主目的のこの拠点。もともとは後工時代の卒論「ローレンツ斥力を利用したプラズマ渦制御の可能性」が上層部の目に留まって、そこから「プラズマフィールドの生成によるローレンツ力と速度表皮効果の制御」に発展して、最終的に建設が決まったのがこのマスドライバー基地というわけ。
とはいえなんでこんな最果ての地にプラント偽装してまで建設する必要があったんだろ? 美国の偵察衛星だって航過しない地域だし、加速器で軌道コンテナ飛ばすから赤外線放射だって最低限。第一宇宙速度までの加速と遠心力に耐えられる資器材(天宮の部材とか物資とか。まぁヒトと精密機器以外ならだいたいイケるんだけど何故か最近は岩ばっかり上げてるのよ。なんでかしらね?)なら何tでも軌道上に送り込めるようになったのはいいけれど、誰か本国から白酒 と涮羊肉、セットで送り込んで欲しいのものだわ。
“ズンッ”
またこの音。射出口から軌道に上がるコンテナは音速の20倍に加速されてるから大気圏内では衝撃波が形成される。これも大分工夫して低減したけど射出口から5km離れたこの管制センターまで響いてくるくらいだから相当うるさいのは確かよね。そういうわけで基地周辺50km圏内の住人にはお引越しして頂きました。まぁ先方も「中国ノ工場カラトンデモナイ音ガ響イテ夜モ眠レナイ」とか大騒ぎしてたから人民元渡してKwa heri〜。
……にしたってこんなコンテナ宇宙に上げる運送業、いつまで続けるんだろ? 本国じゃ隕石が落ちて大変だってのに。
「明少校、来月の運送スケジュールです、ご確認いただけますでしょうか……」
基地司令なんて基地ができちゃえばハンコ押すだけの係。こんなことならいっそ南沙で潮にまみれてれば……ってコッチのほうがマシだわね実際。
天宮=中国国家航天局の宇宙ステーション
涮羊肉=冬の北京の庶民の味方、羊肉のしゃぶしゃぶ
Kwa heri=スワヒリ語で“さようなら”の意




