第二十三話
<沖縄県中頭郡読谷村伊良皆佐敷森>
朝、日が昇る前から軽トラで畑入って仕事して、太陽が真上まで来たら森に入って湧き水飲んで、尚巴志さんの墓んトコで一休み。去年死んだおじいが遺してくれたこのさとうきび畑で、毎日々々おんなじコトの繰り返し。親父は那覇に行けば仕事くらいあるだろうって騒いでるけど、そういう自分は朝から飲んだくれて昼には悠々自適の高鼾。オレにしたって別に畑仕事なんざやりたくもねえけどこうして誰かが手入れておかねえとホントただの荒れ地になっちまうからご近所さんと輪番で面倒見てる。まぁ輪番ったって若者オレだけだから殆どオレの番なんだけどな。
でもこんな生活もあと少し。沖縄防衛局とかいうお役所から手紙が来たんだ。嘉手納弾薬庫地区内「黙認耕作地」からの立ち退きを命ずる、ってアイツらいったい誰を何から防衛してるんだろな? この畑もこの島も元々はこの尚巴志の王様のモノだったんだぜ!! って、なんだありゃ? 太陽がもう一個……?
<沖縄県中頭郡読谷村立寂名小学校>
給食を食べていたらまどの外が光ってガラスがぜんぶこわれてしまいました。とても大きな音がしたのでこんどはひこうきでもおちたのかと思いましたがおちたのはいん石というのだそうです。国道の向こうの山が火じになってしまいました。先生が急いでひなんしなさいと言うのでせっかくのパインゼリーも食べられないで校ていに出ました。山のほうからポンポン大きな音がきこえてきました。先生たちは大あわてで役場のほうへにげるぞと言いました。みんなでかけあししながらうしろを見ると山のあちこちからいろいろな色の火やけむりが出ていてきれいでした。役場につくと大人の人たちがほうしゃせんがふりきれているとおおさわぎしていました。ヨシ子先生は泣いていました。ぼくもおどろいて泣いてしまいました。
<米空軍嘉手納基地 第18航空団司令部>
「……南西地区の対爆掩蔽壕付近へ落下、掩蔽壕地下3層まで崩壊。本国への移送途上にあったB83数発が巻き込まれ、弾頭部が損傷。起爆用爆薬に引火し現在も延焼中の模様です」
「消火の目処は?」
「現場の放射線レベルが高く接近が困難なため、NEST(Nuclear Emergency Support Team=合衆国エネルギー省国家核安全局核緊急支援隊)に照会して対策を検討しております」
「それでは間に合わんな。漏洩した放射性物質が西側のダムへ流入したら、どうなるのかね」
「あのダムは上水道の水源になっております。汚染が広がる前に食い止めなければ、深刻な事態に……」
「そもそもなぜ基地司令である私の裁可も無しに核弾頭が持ち込まれたのだ!?」
第18航空団司令ローグ准将は激昂した。ただでさえ地元住民との軋轢の絶えないベースで起きた今回の“災害”は、米軍の極東戦略に重大な影響を及ぼしかねない事態を招来していた。南シナ海の全域が実効支配され、フィリピンや台湾にまで親中政権が樹立される時勢にあって、最後の砦たるオキナワの地歩を失うことは、太平洋の覇権の半分を人民解放軍に譲り渡すことと同義であった。
准将は手元の報告書に目をやる。直径5m程度の物体が大気圏外より秒速20kmで落着。初期評価:隕石。
「……思い通りに落とせる隕石、か。現用の兵器では迎撃はおろか捕捉すらできんな」




