第二話
大抵は停電するのに珍しく村の自家発にガソリン入れて動かしてる丑三つ時。明日からの四日間は村人総出でお祭り。普段アクセサリーの玉の部分作ってくれてるハミジさん家も、紐の部分編んでくれるコンバさん家も夜なべして準備してる。「ムワカ・コグワ」ってゾロアスター教の新年祭なんだけど、ザンジバルでやってる観光客向けにショーアップしたヤツとは違って、このど田舎の村ではもうちょっと、凄まじいの。まぁガチ殴り合いの血まみれ新年会ってトコ。
日本みたいにいろんな宗教が混じっちゃってるこの国。正月は神に捧げる男同士の殴り合い。七夕は政府と商人のフェス、当たり前のようにやってくるラマダンとイースターとクリスマス。この間の大統領選挙なんかホントにスゴイお祭り騒ぎだった。
NGOの拠点はこの村までだけど、JICA(Japan International Cooperation Agency=国際協力機構)の隊員さんはもっと奥地の水も電気もないトコに派遣されてて、そことの連絡も私の仕事。衛星携帯だけじゃなかなか伝わらないコトとか、そんなんで伝えたくないコトとか、まぁいろいろあるからお手紙託されたり即席カウンセリングしたりもするけれど、基本的にはこの村で“女性の社会進出”的なことのお手伝いするのが本来の業務でございました。
最初はミシンの使い方とか一緒にやって“服作りましょう”ってやってたけど、そんなありきたりなヤツよりこのブマワ村でしか見たことの無いアクセサリー作ったほうがいいんじゃない? って思って余分に作って頂いて東京で売ってみたらなんかスゴく儲かっちゃって、一つしかなかったTV小屋(たいていオトコたちがサッカー見てるの)が3つに増えて、衛星経由でネットにも繋がるようになったけど、肝心の電気がしょっちゅう止まるから、21世紀と19世紀がぐちゃまぜになってて地味にウケる。
ガソリン自体が貴重品だから、非常のときにしか回さないハズの自家発を、こうやってわざわざ回すってんだから、ほんとに大事なお祭りなのね、この殴り合い……。
どーでもいいけどAmazonのお急ぎ便で米と筋子と黒霧島クリックしたい。あと中国のじゃないお味噌も!! きっとJICAの野口さんだってカスタルビールとムシカキだけじゃ生きてけないからドドマでイケないコトしてヘンな病気になって帰国したんだと思うし。