第十一話
<バージニア州バス郡 DominionEnergy社Pumped Strage Station>
地元のハイスクールを出た仲間はだいたいリッチモンドに行っちまった。ココだけの話、あんなゴミゴミした人殺しだらけの街でまともな仕事にありつこうなんざ、どいつもこいつもアタマおかしいんじゃねぇかとは思う。まぁこんな信号の一つもねぇ山奥のド田舎残ったトコロで、勤め先なんてたかが知れているけどな。
一つはホットスプリングスの高級リゾート「ザ・ホームステッド」。もう一つはこの発電所。ハイスクールでボール盤いじりながらいけすかねえ陰険教師ぶん殴ってたオレはリゾートなんて柄じゃねえし、これ以上オヤジの配管工手伝わされんのもまっぴらだったから、発電所の期間採用に応募したのが10年前。そっからまぁいろいろあったけどなんとかクビにならずに続いて、今じゃ運転班ブラボーの班長ってワケだ。な、街に出てカレッジ卒のまともな口もきけねぇ上司におべっか使ったり、チンケな安普請のローン組まされた挙句にレイオフされたり、ヤクに手ぇ出して檻ん中ブチ込まれたりするよりゃよほどマシだろ?
我がDominionEnergy社の誇るバス郡揚水型水力発電所は6基のジェネレーターを備え公称出力は3003メガワット。並の原発30基分の電力を州内計75万世帯に供給してる。この手の発電所じゃあ世界一の規模だな。しかも基本的には水力発電だから燃油価格だの風向きだの日照だのにゃ左右されないド安定の再生可能エネルギーって寸法だ。まぁブルーリッジ山脈から流れてくるバック川の水と、この地球の重力はなくならねえからな。
……それはともかく、こんど来た技術主任がまたスゲェんだよ。MIT(Massachusetts Institute of Technology=マサチューセッツ工科大学)出の秀才って話なんだけど、偉ぶったトコロが一つもねぇ。着任早々、例の調子の悪かった5号ポンプの不具合箇所見つけてあっという間に修理しちまったし、揚水スケジュール見直して発電効率3%も改善したし、上層部にかけあって食堂の業者まともなヤツ(きちんと食えるモノ出してくれるヤツ、な)に替えてくれた。
オレら運転員一人ひとりの名前と顔と誕生日覚えててくれて、週末のBBQパーティにゃとびっきり上等のラム肉とバーボン持ってきてくれるし……、中国? いや、日本人だったかな? とにかくいいヤツなんだよまったく。最初はアジアのチビが来るってんでみんな身構えてたんだけど、実際話してみるとおんなじ技術屋。やっぱりテクノロジーに国境は無ぇよな。
このあいだ非番の日に下の貯水池の送電棟の裏手で釣りしてたら会ったんだよ主任に。むこうも非番だったんだけどタブレット片手にうろうろしててな。休みの日にナニしてらっしゃるんですか? って聞いたら“施設やシステムの隅々まで知っておきたくて、こうして休みの日に回ってるんです”だとよ。マジで尊敬するよな、そんなの。でさぁそんとき釣ったトラウトがまたすごくて……、