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青い世界と、きみが  作者: ひろい
それは序曲であり、単なるはじまり
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楽園の在り方について

 今日も、世界は青い。


 普通だったら見上げた空が青かった、とか言うところだろうけどぼくのこの場合、意味合いが違う。まず、左右の建物――民家、商店に、ビルなどのそれら全てが上から下まで全部、真っ青なのだ。青のペンキで塗装されているのか、それとも元々青い素材で作られているのか、それはわからない。ただずっと、物心ついた時からそのすべては青かった。それだけじゃない。下の地面もまた、青い。足元から後方に伸びる移動歩道はもちろん、コンクリートで舗装された側面部も、僅かに露出した草が、そして土までも。もちろん先に述べたように空も青い。生まれてこの方、青くない空を見たことがない。

 そして前方に広がる公園も、そのすべてが、青かった。

 水飲み場と、ジャングルジムと、滑り台と噴水と砂場のオーソドックスなもの。ジャングルジムその他の遊具が青いのはまだ許せるとしても、噴水から溢れ出る水まで青いというのはどうなのだろうか? ただ周りの色を反射しているだけなのだろうか? そういえば海が青いのは、空の青さを反射していると聞いたことがある。いや、逆だっただろうか?

 四方が名前のない建物で構築されたここは、ぼくの牢獄でもあり――楽園でも、あった。

 風が舞う。冷たく水気があるそれは、いずれ、雨を連れてくるのだろう。


「…………青い」


 遠くの呟きが、耳に届く。視線を、そこ――公園の中心、砂場の真ん中へ。

 あの子が、空を見上げていた。

「…………」

 遠い目線。あれは、違う。視線の先にある空そのものを、見ているわけではない。あの子の気持ちは、ここにはない。あの子の心は――

「未由ちゃん」

 呼びかけられる、あの子の、名前。とたんあの子は微笑み、振り返る。そこ――公園の入り口には、一人の女性。彼女の視線の焦点は、そこに合わせられる。そしてそのままぼくからの視線などには気づかず、走り去っていった。

 その心は、訪れる彼女に向いていた。


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