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少年の誓いと彼女の祈り  作者: 歯歯
第二章 『勇者の帰還が意味するものは』
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第二話 『変わり果てた故郷』

 早朝、六時。

 竜愁の為に設置された壁掛け時計の長針と短針が一直線となるそのタイミングで、少年はのろのろとベッドから這い出た。

 二月の月(はじ)め、日の出には一時間ほど早く、差し込む光は――どちらにせよカーテンに阻まれただろうが――存在しない。

 ぽうと、針の先端だけが緑色に光っていた。


 この病室には、トイレと洗面台が壁に仕切られ併設されている。

 室内は暗くて見えたものではなかったのだが、八時間もそんな中で過ごしていれば慣れて見えるようになる。

 途中で足の小指をぶつけるようなこともなく、竜愁はスライドドアの取っ手に手をかけた。

 夜気に触れていた鉄は、冷たかった。


「さむ……」


 身を震わしながらも一思いに動かして、中へと滑り込む。

 人の進入をセンサーが感知して、天井の電灯に光が点った。

 壁際の洗面台で立ち止まると、赤いシールの貼られたノズルを捻る。

 蛇口から溢れる温水に、冷えきった両手を浸した。


 手をお椀のようにして、水をためる。

 縁ぎりぎりまでためて、頭を垂れる。

 床と平行になった顔に、温水を投げる。

 顔を洗うルーチンをひどく緩慢な動作でこなしてから、水の滴る顔を拭きもせずに鏡を眺める。

 笑った。

 乾いた笑いが響くのにも気づかないで、竜愁は笑った。


「ハハ……」


 礼吾、響子、仙歌。

 父と、母と、妹が年を経て変貌したと、鏡を見るまでは思っていた。

 ここにいる自分は記憶がなくても、いや、記憶がないからこそ自分の知る小川竜愁なのだと思っていた。

 なんてことはない。

 一番変貌していたのは自分だ。

 どこまでも明瞭な証拠が、鏡面に映し出されていた。


 元々鍛えていたから、余分な脂肪なんてものは少なかった。

 けれど、頬にあった薄い皮下脂肪すらもいずこかに消えて、描くラインは骸骨のように鋭角。

 細い目は男にしては長いボサボサの黒髪が隠している。

 指名手配のポスターに載っていそうな男。

 それが、竜愁の受けた第一印象だ。


 どこの誰が、この小川竜愁を一四歳の中学三年生だと当てることができるのか。

 竜愁本人でさえできないのに、できるわけがない。

 もう充分に思い知ったつもりだった。

 けれど、まだまだ足りていないらしい、現実という奴は。

 この顔から、竜愁の三年を知れてしまう。

 浮浪者だか、犯罪者だか、そんな風にして無様な生にしがみついていたに違いなかった。

 きっとそうやって、長い時間を生きたのだ。


 ――こんな俺が居たところで、何になる? 


 竜愁は現実を知っている。

 父も、母も、妹も、やさしくて凄い、ふつうの人間で、自分などでは及びもつかない存在なのだと。

 そんな彼らは自分がいなくなっても、悲しみこそすれ、生きていけるということを。


 今ならまだ、また自分がいなくなっても彼らの心を大きく揺らさないですむかも知れない。

 自分は脇役、脇役の竜愁がいても、家族の道を邪魔してしまう。

 だから退場してしまおう。

 名案とばかりに、竜愁は笑った。

 ――そんなことできるはずもないのに、少年は狂ったように笑い続けた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 揃いの制服に身を包んだ三人の男に囲まれて、竜愁は移動していた。

 音も立てずに歩く彼らは、素直に恐ろしい。

 見るからに底の硬い靴を履いているのに、聞こえるのは衣擦れだけ。

 服の構造もあるだろうが、常人の身のこなしではない。

 午前八時のことであった。


 ――顔に張り付いた髪が冷たくなるまで笑い続け、けれど逃げてのたれ死ぬ度胸がなくて。

 結局は今まで通りに暮らすしかないのだと諦めて、竜愁は日頃の習慣を再現することに決めた。

 ロードワークはできないだろうから、限界まで身を虐めぬくのだ。


 朝の検診と点滴に訪れたすずやかな容貌の医者は、滝のような汗を流して拳立て――手のひらではなく拳を突いてする腕立て伏せだ――の回数を数える竜愁に腰を抜かしていた。

 慌てて止めようとするに彼に竜愁はなんでもないかのように挨拶して立ち上がり、言ったのだ。

『タオル、ありますか?』、と。


 そんな尋常でない一幕はさておき、点滴を終えた竜愁は医者に連れ出された。

 その道中で制服の三人が合流して今に至るのだが、なんの説明もない連行に竜愁は平静を取り繕おうと必死の無表情。

 その裏でかつてないほどに速く思考する。


 同年代よりもずっと、肝が座っているという自負はあった。

 何が悪いのか出かける先々で不良やら強面こわもてのおにーさんやらに絡まれる日々に、耐性が付いていたから。

 さすがは修羅の国と言うべきか、自らの不運を嘆くべきか。

 それはともかく、目覚めて以来連続している混乱と、三人の長身の男たちに囲まれる非日常性に恐怖するのは仕方のないことだと竜愁は思うのだ。


 ……三人が二人だったなら、緊張こそすれど恐怖まではいかなかっただろう。

 一人は父親の礼吾だし、もう一人は優しげな初老の男性。

 ただ、もう一人がいけない。

 竜愁の二倍はあろうかという太い腕、二メートルを越す長身。

 これまでの人生でお目にかかったことのないくらい凶悪かつ端正な顔立ちの男が、左隣を固めている。

 男は無遠慮に、じろじろと竜愁を観察していた。


 勝てる気がしない。

 悲しいことに紛いなりにも場数を踏んできた竜愁だが、相手は基本的に同年代。

 まず出無精なので絡まれる比率は学校内が圧倒的だったのだ。

 だから外見だけでこうも圧されたことは初めてで、それが余計に勝てないと感じさせて――


 ――本当に? 


 頭をよぎった考えを、馬鹿なことだと否定した。

 戦闘において体格というのは絶対的で、それは格闘技の試合が体重で区分けされていることからも知れる。

 もちろん『なんでもあり』なら覆す手段もあるが、この警戒状況で使えるほどの熟練は――だから、何考えてるんだよ! 


 こんなに好戦的な気質だっただろうかと煩悶する竜愁を余所に、一行は階段を下りていく。

 階数の表示がB1を越え、関係者以外立ち入り禁止の札をぶら下げたロープをくぐったところで、竜愁は血の気が退いていくのを感じていた。

 地下という言葉が連想させるものは、世間一般的にほの暗いものだ。

 その例に漏れず、竜愁も連想した。

 尋問か、はたまた拷問か――


 到達したのは、大人四人と竜愁がたっているだけで暑苦しくなるような黒くて小さな部屋。

 中央には椅子が一つだけ、入り口に背を向けて配置されている。

 促されるままに、固く強ばった動きで竜愁が席につく。

 四人は、二人ずつ、横の壁に沿って並んだ。


 恐怖は、最高潮に達していた。

 これから竜愁は自らの過去を突きつけられるのだろう。

 それはすなわち、自分の犯した罪を並べ立てられることに相違ない。

 今の竜愁は否定する材料を持たないのだから。

 知ることこそが、恐怖であった。


 ――ここで竜愁が冷静だったなら、すぐにそんなことはありえないと気づいただろう。

 竜愁の中ではと注釈が付くが、自衛隊員である礼吾が同行しているのだ。

 常識的に考えて、おかしい。

 さらに竜愁は何も聞かされていないというところも、事情聴取にしてはおかしいだろう。

 混乱し恐怖し、まともな精神状態にない彼では気づくことのできるはずもなかった、が。


「これから見せる映像は、おそらく信じられないだろう。

 だが、全て実際に起きていることだ。

 心して見て、受け止めてほしい。

 ……始めてくれ」


 性急に進めようとする礼吾に「いや、ちょっと意味が」と竜愁が言うも、顔を歪められるだけ。

 孝大が手に持ったリモコンのスイッチを入れると白いシートが降りてきて、青い長方形が映し出される。

 よくあるプロジェクターの待機画面だと竜愁が見当をつけるなり、『それ』は始まった。


『グゥゥアアアア――ッ!!』


 思わず耳を塞ぎたくなるような、人間の本能的危機感を喚び起こす雄叫び。

 その主は、半透明の狼だ。

 一緒に映る人間から推測するに数メートルの巨体。

 明らかに、漫画やアニメ、ゲームの代名詞たる幻想生物(モンスター)

 そんな化け物に、あの強の男が相対していた。


 男は、身の丈に近い長さの幅広な巨大剣を、片手で担ぐようにして構えている。

 柄がめり込んで肩壊すだろと、わけが分からないなりに暢気なことを竜愁が考えていると、狼が動いた。

 二度目の咆哮。

 そして、風が巻き起こる。

 荒れた大地の砂を含んだ風は瞬く間に竜巻の規模にまで成長し、男に迫る。


 ――男は一歩踏み込み、赤い光芒を発散しながら一回転。

 自身と同じく赤い光で刀身を延長した大剣、その一振りで薙払った。


『【展開】【炎纏(ほむらまとい)ィイ】!!』


 男が何事か叫び、飛び上がる。

 起きたときに自分が使っていた、何語かは分からないけれど意味の分かる謎言語。

 その言葉が表す通りに、男と大剣は炎を纏った。

 赤から蒼へ、色の変化。

 空中、燃え盛る業火となった男は両手で剣を掲げる。

 無色の狼は、男を睨みつけアギトを開く。


 ――叫びとともに、比にならない竜巻が吐き出された。

 周囲の空気を取り込み一部として勢力を拡大する竜巻。

 徒人ただびとの身では戦いにもならない自然の暴威が、男を飲み込まんと牙を剥く。

 絶体絶命の窮地に、男は。


『邪魔だァアッ!!!』


 縦斬り一閃。

 炎が風と拮抗し、押し返し、灼き尽くす。

 炎風は狼にまで遡り、呑み込んだ。

 そこで、暗転。

 プツリと音がして、映写機の電源が落ちる。

 それはあの動画が本番であったかのようで。

 動画の前にある新作ゲームの宣伝か何かと思い込もうとしていた竜愁は、どうしようもなく息を飲む。


 ――俺、絶対間抜け面だ。


 頬肉を噛みちぎり、痛みでもって自らを律する。

 思考しろ。

 思考停止は、罪だ。

 彼らがこんな嘘を吐く理由なんてない。

 現実かどうかなんて、外に出ればすぐ分かること。

 だからこれは、現実だ。

 現実に起こっている戦いだ。

 ――どれだけ常識の枠から外れていようと、現実として受け止めろ。


 礼吾を見る。

 そんな竜愁に礼吾は不安そうな顔をして「どう、だ……?」と。

 ――ああ、もう。

 そんな顔を最愛の家族にされてしまえば、竜愁はもう、大丈夫だと装わずにはいられない。

 そうして、物心が付いてからを生きてきたのだ。


「うん、いやまあ、凄いことなってるなあ……。

 はは、これ、いつからなんだ」


「お前がいなくなった、すぐ後だ……っ」


 なのに父は、これまでで一番悲痛な表情をして、竜愁から目を離さず、見つめていた。

 ――世界の変わる衝撃は激甚なもので、一四歳の少年に受け止められるはずがない。

 真っ白に漂白された脳から捻りだした少年の言葉は、震えていたのだ。

 そんなこととは思えない竜愁は、なおも言葉を連ねる。


「へえ……俺、よく生きてたな。

 結構凄くないか、親父?」


「竜愁」


「あんなのがいっぱい暴れ回ってるのか。

 じゃあ、母さんとか、仙歌とか、親父も、怪我してないよな……?」


「竜愁っ!!」


「そういえばあの動画の炎と竜巻! 

 どうなってるんだ? 

 俺にもできるようになったり――っ!」


 ――しないのか? 

 最後は、言葉になったのだろうか。

 首に衝撃を受けて、混濁する。

 何が起きたのか分からないまま、乗り物酔いのような吐き気に襲われ、膝が立たなくなって。

 竜愁の意識は完全に途切れる。

 ――草も、……なこ……。

 どこかから、やさしい声が聞こえていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……さて」


 静寂に満ちた地下室で、『雪草ゆきぐさ長兵ちょうへい』は出し抜けに切り出した。

 片腕にはだらりと脱力した格好の竜愁を抱えている。

 痩せ細っているとはいえ、意識のない人間は相応に重い。

 五十過ぎの一般老人が平然としていられるはずはないのだが……雪草は背筋をぴんと伸ばし、すっくとお手本のような姿勢で立っていた。

 帰りは、伊達でない。


「今日はここまでです。

 おそらく起きる頃には平静を取り戻しているでしょうから、退院までに少しずつ情報を開示していけばよろしいでしょう。

 まあ、退院と彼女の目覚めのどちらが早いかは、微妙なところでしょうが」


「………」


 返事は、ない。

 礼吾は鉄壁の無表情、虎太郎こたろうはどうでもよさげ、孝大たかひろは俯き考え込む様子。

 各々違った反応を見せてはいるものの、それから数秒、誰も口を開こうとはしなかった。


 まったく……と、何かの拍子に出てきてしまいそうなため息を雪草は堪えた。

 どうせやらなければならないことだったのだ。

 非人道的だろうがなんだろうが、かわいそうだからと言って子どもから選択権を奪うのは大人のやることではない。


 それならば、考える時間を与えるという意味で、現状を伝えるのは早ければ早いほどいいだろう。

 この程度ショックが重なったくらいで潰れるような器でもないのであるし。

 なにせ、世界から自分の信念を貫ける者(勇者)として選ばれたのだ。

 折り紙つきである。


「ソタラハディアで、竜愁の相方と約束したのです。

 記憶を封印した竜愁には地球の状況を伝えたのち、どう生きるのか自分で決断させようと。

 結果は分かりきっていますが、その課程で色々と自覚してもらおうという……、治療の一環、ですかね。

 ――私にはそれを守る義務がある」


 ――竜愁の記憶が失われるのは、元から予定されていたことだ。


 勇者リュウシュウは、狂っている。

 それは狂的なまでの自己犠牲精神であったり、狂的なまでの責任感であったり、狂的なまでの強さへの欲求であったりと様々だが、常人が『人類を救済するために死ね』と言われて、即座に『はい』と答えられるわけがないと言えば、分かりやすいだろうか。

 彼はその問いに自分で辿り着き、『自分が死んで救えるなら』と躊躇いなく自答できる、狂った人間だった。


 しかし、その狂気は戦乱のさなかにあってこそのものだ。

 勇者リュウシュウが必死に戦って、世界から理不尽な戦乱が除かれたとき――少しずつ狂気は薄まって、彼は自覚するだろう。

 ――大切なひとに傷ついてほしくないと自らを傷つける彼こそが、大切なひとを傷つけていたことに。


 自殺はできないだろうが、竜愁がどれだけ苦しむかなんて、想像に難くない。

 そのときになってからでは遅いのだ。

 だから、雪草と竜愁の契約聖霊――エリシアは話し合い、計画を立てた。


 勇者リュウシュウが死に、魂だけになってソタラハディアと地球の境界線を渡るタイミングで彼の記憶を封印すること。

 記憶を封印した竜愁には少しずつ、彼の三年間や地球の現状を伝えていくこと。


「そんな悠長なことを……。

 彼の魂格はたったの一万じゃないですか。

 あなた方は回復の手段があると言いますが、それが間に合わなかったらどうするんです?」


 そこに苦言を呈するのは孝大だ。

 研究者でありながら新福岡を統治する政治家の顔も持つ彼としては、迫る脅威を払いのけるに十分な力を持つ竜愁の自由意志を尊重しきるわけにはいかないのだろう。

 けっして言いたいことではなかった証拠に、孝大は苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。

 ――汚れ役を受けてくださった彼には悪いのですが……。

 内心とは裏腹に、毅然として雪草は言う。


「悠長? 

 知りませんよ、そのようなこと。

 貴方にとっての最善は竜愁を投入することでしょう。

 ですが――恥ずかしくないのですか? 

 貴方は自らの発言が持つ意味を考えられないような愚か者ではないでしょうに」


「――っ」


 痛いところを突かれたのか、孝大と礼吾の顔が歪む。

 あくまでこれは形式的な、自分たちの立場を明らかにするための会話だ。

 自覚している者に続きを言う必要はないだろうが、雪草は穏やかに微笑み、意志を告げた。

 戒めなのだ。

 口にすることで、()縛る。


「私たちは、弱く、ちっぽけな存在です。

 彼は勇者で、自らもそう在ろうとする人間ですから、私たちが引きこもって震えていても私たちを護るために剣を取って、死力を尽くすでしょう。

 賢い選択をするならば、ただ護られていればよいのかもしれません」


 そうして、竜愁ひとりに全てを背負わせ、死地に追いやり、彼の犠牲に人類が救われる。

 彼の勝利を信じて最小の被害に終わらせたいのなら最善と言える。

 前提が違っているが、いわゆるオメラスの町に同じ状況だ。

 ひとりの少年に、老若男女がおんぶにだっこ。

 ――笑止千万でしょう。


「――人類が、みなそれを肯定できる愚物の集まりだというのなら、そんなもの滅んでしまえばよろしい。

 私たちは彼よりも遙かに歳を取った大人で、今はそうする以外に道がないわけでもないのです。

 背負えるものは限界まで背負い、ボロボロになって、足を引きずって――それでも未来のために道を作るのが私たち大人の仕事でしょう。

 たかがひとりの少年に時間を用意してやれないで、どうすると言うのですか」


 パンと、柏手。

 乗せられた振りをして笑む二人に、雪草はもう一度、さてと言った。


「仕事に戻りましょう。

 間鐘さん、危険地域の調査計画は上げておきましたから、チェックをお願いします。

 何か問題があれば連絡を。

 午後は研修が入っていますので、七時以降にもらえると助かります」


「分かりました。

 七時からは会議なので日を跨ぐかもしれないですが……できるだけ早く連絡します」


「日を跨ぐのは別に構いませんよ。

 私はもう睡眠を必要としていませんから。

 ――礼吾さんは訓練に根を詰めすぎないように注意してください。

 貴方が倒れてしまっては第一部隊が動揺してしまいます」


「……大丈夫です。

 ウチの部隊は、私がいなくても問題なく機能しますから」


 一抹の不安を感じさせる返答に、ああ親子だなと雪草は笑う。

「まず倒れないでください」と釘を刺すと、内から稚児の笑いが聞こえてきた。


『にぃにみたい!』

 

 笑みが、深まる。


「虎太郎は、先に行ってください。

 私は竜愁を運んでから向かいますので」


「おう」


 そうして雪草は、地下室を出た。


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