幼馴染の一時
「やほー和斗!」
「あぁ、奈美か」
そう言って2人は軽く挨拶をして黙って本を読み始めた。ちなみに2人がいるのは和斗の部屋、和斗と奈美の家は隣同士で家族ぐるみで仲が良く一般的に言う幼馴染である。
「…そういえば和斗」
「ん?」
「そっちの学校っていつ夏休みなの?」
「確かそっちと同じ」
「ふ~ん」
2人は再びそれぞれ本の世界に入っていった。
家が隣同士だが珍しいことに2人とも同じ学校ではない。2人は中学生だが丁度家の学区が分かれているのだ、もちろん小学校も別々になる。
学校が違う2人だがよく遊ぶし一緒に寝ることもする、双子のような感覚なのだ。
「そういえば」
「ん?」
「このあと俺の友達が来る」
「いないほうがいい?」
「いや、大丈夫」
「なら続き読んでる」
和斗の友達か~と思いながら奈美はベットに転がって本を読んでいた。
すると家のインターホンが鳴った。
「来たみたいだね」
「だな」
そう言いながらも本を読み続ける2人にドアのノックが聞こえた。
「どうぞ」
和斗が言うと2人の男子が入ってきた。
「…和斗、その子は?」
「ん?俺の幼馴染」
入ってきた男子2人の視線を感じ奈美は起き上がった。
「はじめまして、司波和斗の幼馴染で秋元美奈です。」
「俺は藤本俊」
「僕は三間明博よろしくね秋元さん」
美奈はスポーツ系な2人だなっと思っていた。
「美奈でいいよ」
「じゃあ俺も名前で読んでくれ」
「僕も」
よろしくね、と言いながら未だに本を読み続ける和斗を見た。
「和斗って友達いたのね」
「失礼な奴だな」
奈美の言葉に俊は頷いた。
「確かに意外だよな」
「お前…」
俊の言葉に和斗は眉間に皺をよせた。
「俊、そんなにズバッと言ったら…まぁ、確かに和斗は近寄りがたい雰囲気があるかもしれないね」
「和斗はイケメンだから静かに本読んでると絵になるよねー」
奈美は想像しながら言った。
「和斗って告白されたことあるけど全部断ってるよね、私の学校で和斗を見たってキャーキャー騒いでるよ」
「付き合いきれんしな」
「わお、和斗クール~」
奈美は黙って話を聞いている2人の視線を感じだ。
「なに?」
「いや…奈美もモテるんじゃないか?」
「奈美さん綺麗だし」
2人の言葉に奈美は苦笑いを浮かべた。
「あ~まぁ…一応告白されたことあったけど、付き合いきれないから断ったの」
「和斗と同じ考えだな」
すると和斗は本を閉じた。
「俺と奈美は双子みたいなものだ」
「そう、だからお互い何を思っているのか分かったりするの。ちなみに性格も似てるの」
そう言って2人はまったく同じ笑顔を作った。
美男美女…と思いながら俊と明博はお互い顔を見合わせた。
「せっかく2人は和斗の家に来たんだし、私は本読んでるから今日来た目的を晴らしてくださいな」
「お、そうだな」
「うん」
奈美は道具を出す3人を見て
「テスト勉強?」
「あぁ、俊がな」
「俊がどうしてもって言うから和斗の家でやろうってことになったんだ」
「へぇ~」
「奈美の所はもう終わったしな」
もう全教科帰ってきてるよ~と言えば俊の目が光った。
「何点だったんだ?」
「聞かない方がいいぞ、奈美は主席入学だったからな」
「なん…だと?」
奈美は苦笑いし
「和斗もね」
「まあな」
そんな2人に俊はテーブルに顔を伏せた。
「おい、やるぞ」
「がんばってね」
「あ、もうこんな時間」
「ホントだ」
「結構進んだし、そろっと帰るか」
「そうだね」
俊と明博は道具を片付け始めた。
「勉強お疲れ様~和斗教えるの上手だからきっと良い結果になるね、私が保証する」
「だといいんだがな」
そう話しながら4人は廊下を歩いた。
「「「お邪魔しました」」」
「2人とも勉強お疲れ様~奈美ちゃんこれ奈々さんに持って行って」
「わ~!真奈さん特性デザートだ~ありがとうございます」
「気を付けて帰れよ」
「私はすぐ隣だから、じゃあね2人とも!テストがんばってね~」
「おう!じゃあな」
「さようなら」
母にデザートを渡して奈美は自分の部屋の窓を開けた。
「2人とも楽しい人達だね」
「まあな」
窓の向かいには和斗の部屋になっており、手が届くほど近かった。
「和斗も成長したな~」
「なんだ急に」
「別に~ただ時の流れが早くて…寂しいな~って」
奈美たちも中学3年、高校に入ればお互いが離れるのが自然になってくる…それが奈美にとって寂しく思えた。
「お前は俺の半身、たとえ離れていても心は繋がっているさ…俺たちの絆は簡単にと切れはしない」
「…恥ずかしいことをサラッと言えるのは和斗だけだよ」
でもっと奈美は思う。お互いの絆は離れることはない、それは自分たちが幼い頃から知っているのだ。
「そうだね…絆は永遠だものね」
「当たり前だ」
結局のところ2人が同じ高校に入り、2人の青春を謳歌し、家庭を作り、半身が離れること無く人生に幕を下ろすことになるのは今の2人には知る由もなかった。
ただ今を大切にする、それが願いだったのだ。
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