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プロローグ

AnotherChapterの続編を書いてみました。


もし、AnotherChapterを見ていない方がおりましたら、AnotherChapterを見ることをお勧めします。

仮にAnotherChapterを知らなくても、楽しめる内容にしようと思ってますので見なくてもいいですが…w


それでは、ClosedSpaceをこれからよろしくお願いします!

呉原儀也は、逃げていた。

逃げて逃げて、息が切れる程に走っていた。


そして、一度息を整えようと、儀也はその場にうずくまった。



「ハァ…ハァ…ハァッ…ハァッ…」



儀也が走っているのは、彼が通う逆茂木高校の三階廊下。


時刻的には、少し前に放課後になった頃だ。


本来この時間帯なら、帰り際の生徒で賑わっていて、とても全力疾走する事などできないだろう。




しかし、その時は違った…




廊下には儀也を除き、生徒の一人も見当たらない。


人どころか、生き物全てが消え去ってしまったかのような静けさ…


恐怖まで感じさせる沈黙が、この学校に満ちていた。




ピタ…ピタ…




近付く不気味な足音に、儀也は身をすくませた。



「に、逃げなきゃ…

逃げないと、殺される…!!」



儀也は身体を起こし、再び走り始めた。


いくら疲れていても、逃げる以外の選択肢は無い。


他の選択肢をあえて言うならば、死ぬ事しかない。




ピタ…ピタ…ピタ…




「ハァッ…ハァッ…!

ッ…ハァッ…!!」




ピタ…ピタ…ピタ…ピタ…ピタ…




「…ッハァ!

……ッッハァッ!!

………ッッッハァッ!!!」




儀也がいくら逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても、逃げても…


しかし、いくら逃げてもその足音は、途絶える事は無かった。



「ハアッ…な、なんで…

なんで、こんな目に…ハアッ…遭わないといけないんだ!?

僕は…ッハアッ…まだ…こんな所で…死んだりなんか…ッハア…できないのに!!」



悪態を付きながら、走っていた儀也だったが、ある変化に思わず足を止める。




ペタ…ペタ………




不意に足音が止まった。



儀也は、恐る恐る足音が聞こえていた方に振り返る。



…そこには、一体の化け物がいた。



それは人の形をしていたが、明らかに人間ではない。

全身が布のようで、至る所に柄の違う布が継ぎ接ぎされている。


一言で言うなら、不器用な小学生が無理に作った人形のようだ。


さらに、見ていると吸い込まれそうな空洞が、人の頭に当たる部分にあった。


そして、一番視線を引き付けるのは…両手に当たる部分に付いている刃物だった。


あの刃物で切り付けられれば、決して無事ではいられない…


そんな雰囲気を醸し出していた。




改めてその姿を見た儀也は、再び学校の玄関に向かって走り出した。


何故化け物が足を止めたのか、儀也には不可解だった。


だが、そんな細かい事を気にしてはいられない。


そんな理由を知る事よりも、自分の命の方が大事だ。




しかし、儀也の意志に関係無く、その理由を知る事になった。




「う、うわあああああああああ!!

な、なんなんだよお前!?」


「…!!」



不意に悲鳴が聞こえ、儀也はハッとする。


その声の主は、逆茂木高校の制服を着た男子だった。


ちょうど何処かの教室から出て来たようで、相当動揺しているようだった。



「ひっ、ひぃぃぃ…」



だが、その男子はすっかり腰を抜かしているのか、全く動こうとしない。


そしてその化け物は、無言で刃物が付いた腕を振り上げる。



「い、嫌だ…!

来るな…来るなよぉ…!!」


「や、止めろ化け物…!!」



さすがに放って置けなくなって、儀也は化け物に駆け寄り、気を引こうと必死に叫んだ。


化け物はこちらに顔の空洞を向けたと思うと、首を傾げるような動作をした。


顔の大半を占める空洞を見ている内に、儀也は目眩のような感覚に襲われ、動けなくなった。



「くっ…、い、今の内に逃げて下さい…」


「き、君は…?」


「そ、そんな事はいいですから…

早く逃げて…」




ザクッ…




果物に何かが刺さったような、鈍い音が辺りに広まる。


そして、つんざくような悲鳴が鼓膜を揺らした。



「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

い、痛いぃぃぃぃぃぃ!

止めろぉぉぉぉぉぉ!

いっ…や……………だ…………………」



化け物が、その男子の心臓辺りを刃物で突き刺したのだ。


それから化け物は、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、刃物で体を掻き回した。




グシャ…ブス…

ザクッ…ザクッ…ブス…

グリ…グリ…ボキッ…

ザクッ…ザクッ…グシャ…

ボキッ…ゴキッ…グリ…ゴシャ…

ザクッ…ザクッ…ブスッ…



耳を塞ぎたくなるような音が、廊下に響き渡る。


その光景は、正常な人間ならば、誰でも悪寒を感じるであろう恐ろしい光景だった。



「うっ…」



儀也は、思わず口を押さえて後退る。


あまりの惨劇に、吐きそうだった。


人間だった者が…今は、グロテスクな肉塊になっている。


これまでかというぐらい切り刻まれ、最早人間だったのかも怪しいぐらいだった。




ギギギ…




化け物は、その肉塊を解体する手を止め、儀也に振り返った。






次ハ、自分ガ殺サレル…






本能的にそう感じた儀也は、全力でその場から走り出した。



「ははは…夢だ…

こんなの夢に決まってる…

すぐ…すぐに覚める…覚める…

ふっ、ふはははは、あはははははははははははははははははははははははははは、あははははははははははははははははははははは、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、あはははははははははははははははははははははははははは、あははははははははははははははははははははは、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは…」



儀也は、青ざめながら笑っていた。


彼の精神は、もう崩壊寸前だった。



「もう、出よう…

こんな地獄みたいな場所から…

学校を出れば…夢だって覚めるさ…」



儀也はふらふらと階段を降り、玄関に向かった。


階段を降り切ると、儀也は重い足取りで歩き始める。



「もう少し…

あと、もう少しだ…」



あとは、この廊下を少し歩けば正面玄関だ。


儀也はわずかな希望を胸に、玄関に向かった。



「ハアッ…ハアッ…

これで…僕は夢から………」



玄関の目の前まで来て、儀也は言葉を失った。


玄関の前に、先程の化け物と、それによく似た化け物が複数が立っており、 惨殺された死体が散乱していた。



「…駄目だ………

もう……助からない……………」



儀也はその場で崩れ落ち、その光景を無表情で眺めた。




儀也の心には、もう絶望の感情以外残っているものは無かった…




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