Sランク冒険者の剣士サムは、気合いと努力の足りないパーティメンバーを一喝してやった
俺はサム。
王都の冒険者ギルドに所属する、最高クラスであるSランクの剣士だ。
この俺がいるから【紅蓮の一閃】はAランクのパーティとして成り立っているようなものなんだぜ。
だが、【紅蓮の一閃】のパーティの連中は全く以て気合いと努力が足りない。
Sランクを目指そうって気概が無いんだ。
それどころかことごとく俺の足を引っ張りやがる。
今日だってドラゴン討伐の依頼から逃げようとしたし、討伐中にも無駄な動きばかりして本当に邪魔だった。
だから俺は冒険者ギルドの一室を借りてガツンと言ってやったんだ。
「お前らもっと真面目にやれ! やれないんだったらパーティはクビだ!」
そうしたら、俺以外の全員が黙って席を立って、部屋から出て行こうとするんだぜ。
流石の俺も驚いてさ。
「おい! 待てよ!」
って呼び止めたのに誰も待たずに行っちまった。
すぐに後を追いかけたら、アイツら、ギルドの受付で【紅蓮の一閃】のパーティ脱退の手続きをしていたんだ。
「ああ~、本当に大変でしたねえ~。 すぐに手続きを終えますからね。 今まで本当に、本当に、本当に、お疲れ様でしたあ~」
受付嬢の可愛いレナちゃんがアイツらを慰めるような声を出していたけれど、何で勝手にパーティを抜けようとするアイツらが慰められなきゃならないんだ!
カッとなった俺は、思わず大声を出した。
「おい! 待てって言っているだろうが! 勝手にパーティを抜けるなんて許される訳が無いだろうが!」
けれど誰も振り返ろうとせずに、冒険者ギルドの表口から出て行ってしまう。
「いいえ~サムさん。 確かに彼らのパーティ脱退の手続きは完了しましたよお~」
レナちゃんがそう言って、ギルドの総責任者のマルコのジジイに書類を渡す。
ジジイは書類をめくりながら、深く頷いた。
「うむ、手続きとしては問題も間違いもない。 レナ様、お見事な手際ですな。
これにて【紅蓮の一閃】のパーティメンバーはサムだけとなった」
酷すぎる!
俺はギルドの受付に拳を叩きつけた。
「どうしてそんな身勝手なことするんだよ!」
「『どうして』ってえ~? そんなことも分からないんですかあ~?」
レナちゃんが呆れた声を出し、失笑に近い嘲笑が広まった。
レナちゃんだけじゃない。
たまたま冒険者ギルドにいた冒険者、職員、依頼を持ち込みに来た連中まで、全員が俺を嗤っていやがる。
◆
「新入りのEランクの冒険者を騙すようにして己のパーティに勧誘。 明らかに彼らのランクに不釣り合いな高難易度の依頼ばかり引き受ける。 彼らが何度訴えても頼んでも無視。 その癖彼らを、『努力が、気合いが足りない』と激しく責める。
それだけならばまだ良かったのに、彼らが怪我したり病気にかかったりしても何の金も払わない上に、依頼の報酬金の大半を独り占めにする。
最終的に彼らが堪りかねてパーティを脱退すれば、また新入りの冒険者を騙してパーティに加入させる。
……こんなペテン師のような真似を三回も繰り返した男だ。 そんなことが何なのか、自力で分かるわけが無いだろう」
口火を切ったのは、先年に魔王の再封印を果たした『勇者』率いる最強のパーティ【大帝の一撃】に所属する盾役のオスロである。
同じく回復の魔法持ちのイルコが頷いて、言葉を続けた。
「レナ様。 冒険者ギルドとしても新人ばかりを騙すこの男を放置してはおけないんじゃないですか?」
受付係のレナはとびっきりの笑顔で返事をする。
「はい、弊ギルドといたしましてもお~、規約の関係で二回目までは警告という形でしか処分を下すことが出来なかったのですがあ~。
ようやく三回目ですので、冒険者の資格剥奪処分ということになりますよお~!」
サムは我が耳を疑った。
「……は? レナちゃん今なんて言った? 冒険者の資格剥奪、だって……?」
「はい~。 警告を繰り返したのですけれどねえ~? 全く改善が見られなかったのでえ~、そのような処分となりますう~」
「巫山戯るな!」
サムが受付嬢レナに襲いかかった瞬間、彼女が悲鳴を上げるよりも早くオスロとイルコが彼を取り押さえた。
その彼に受付嬢レナは冷たい視線を向けながら、告げる。
「……ああ、ようやくスッキリするわ。 レナちゃんレナちゃんって気持ち悪く呼ばれて本当に不愉快だったもの。 他の冒険者の方は、全員が私の素性を知れば敬意ある対応をしてくれたのに。
あのね、まだ貴様だけがろくに分かっていないようだから、繰り返すけれども。
私はこの国の第三王女よ。 王家の習わしで、若い内に庶民の暮らしを学ぶため、一時的にこの冒険者ギルドで働いていただけ。 その私をちゃん付けで呼んで、隙あらばなれなれしく触ろうとして、不純な交際を狙って付きまとって。
今までは我慢してやっていたけれど、もう良いでしょう。 ついにこの私に敵意を持って襲いかかってきたのですもの。 この大罪にしかるべき処分を受けさせなければ、私に今まで敬意を持って接してくれた他の冒険者に示しが付きませんわ」
彼女が言い終えるが早いか、王国の兵士達が冒険者ギルドにやって来て、暴れるサムを捕縛して連行していったのだった。




