表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/29

011 巫女の鏡

 地上。

 それは人間にとっての安息の地ではない。


 天敵であるガーヴァルが跋扈する地獄の地。それゆえに地上で人間は住むことを許されておらず、ガーヴァルの目の届かない巨木の隙間、霧深く木々が生い茂るジャングル、日が差し込まない地下などに住むことを余儀なくされている。


 そこが安息の地かというとそうではない。

 目の届かないように隠れ住んでいるというだけで、何かの拍子に見つかってしまうとホラの町のように滅ぼされてしまう。

 この世界には人間が安心して暮らせる場所は無いのだ。

 シーニャが語る【楽園】以外には。


 そんな地上に赤毛の少女マナと金髪の少女シーニャの二人はいた。

 脱出した洞窟の出口のほど近く。一本の大樹のうろの中に。


「どうしたもんかなぁ」


 マナは途方に暮れていた。

 次の町に行くと言っても、地上を気軽に歩いて行くというわけにもいかない。

 そしてどこに町があるのかもわからない。極めつけは今どこにいるのかもわからない。

 完全に迷子で、行くも戻るも出来ない状態。

 とりあえずガーヴァルの目から逃れるために、目に付いた木のうろの中に滑り込んだという状態なのだ。


 ちらりと連れの少女の方を見る。

 金色の三つ編みの少女はマナが見たのに気づいてニコリと微笑み返す。

 まさかずっとシーニャに見られていたとは思わず、照れくささにさっと視線を外すマナ。


「シーニャはさ、どっちに行ったらいいと思う?」


「私、分かるよ?」


「えっ!?」


 素っ頓狂な声を上げてしまうマナ。

 シーニャはのほほんとした様子で座っているため、てっきり道を知らないものだと思っていた。

 言われてみると、最初に会った時も地上をうろついていたのだ。目的地を知っている可能性は高かったのに、それをすっかり忘れていたのだ。


「これ見て、巫女の鏡っていうの」


 そう言うとシーニャは首にかけていたネックレスを外して見せてくれる。

 ネックレスの先端には手の平よりも少し小さな円形の物体が付いている。

 銀色に光る金属でできたそれの突起部分をシーニャが押すと、真ん中からパカリと割れて、(ふた)が開くように開いたのだ。


「うわっ!」


「驚きすぎだよ、マナ」


「いや、だってさ、こんなの見たこと無いし」


「これはね、代々の巫女が受け継いできた大切なもの。この服と同じくずっと引き継がれるもの……」


 そう言っていると、(ふた)が開いた状態の物体から光が放たれる。


「これは……」


 マナには何がなんだか分からなかった。

 二人の背丈よりも高く吹き上がった光の帯。

 その光が四角い模様になると、その中には波線やら点やらが不規則に書かれていた。


「この巫女の鏡はね、歴代の巫女が通った道を教えてくれるの。私たちが今いるのがここ」


 そう言ってシーニャは浮かび上がった四角の光の中央を指し示す。

 ふむふむ、とうなづきながら理解をしようと試みるマナだが、何のことかさっぱりわからない。そもそも地図を見たことがないのだ。


「たぶん町はここにあると思う」


 シーニャがなにやら銀の物体(巫女の鏡)を操作すると、四角の中にいくつもの線が現れた。

 その線は長い物もあれば短いものもあって色もバラバラ。赤、青、緑、黄、など様々な色の線。

 そしてシーニャは中心から近いところにある、いくつもの線が交わるところを指さしたのだ。


「ふむふむ」


 正直分かっていない。

 青色の四角に浮かび上がった線が一人一人の巫女が通ってきた道であり、長さがまちまちなのは、巫女がその命を懸けてたどり着いた最後の場所、つまりは死の場所がバラバラであるということなのだが、マナは知る由も無かった。


「私が――」


 それだけ言うとシーニャは口を閉じてしまった。


 私が向かうのはその先。

 シーニャはそう口にしそうなところをとっさに飲み込んだのだ。


 いくつもの線が同じ方向へと伸びている。そこは巫女たちが目指す場所の方向。つまりシーニャが目指す場所の方向。

 だから、彼女が口にしようとした言葉は正しい。

 だけどシーニャは口を閉じた。

 「私」というとシーニャだけで楽園を目指すように聞こえてしまうからだ。

 本当は「私たち」と言いたかった。

 だけど、先ほどマナには()()()()()断られている。これ以上、強く出て完全に拒絶されることを無意識に拒んだのだ。

 その想いが「私」に繋がり、そして口を(つぐ)んだことへとつながる。


「シーニャ?」


 そんなシーニャの心の内を知らずに、マナは不思議そうな表情を浮かべる。


「ううん、なんでもないよ」


 不甲斐ない表情は見せまいと、大げさに顔をブンブンと振ってなんでも無いことをアピールして見せた。


「そう? ならいいんだけど」


「うん。それでね、たぶん場所はわかるよ。まかせて」


「分かった。よろしくね、シーニャ」


 一人だと道も分からずに詰んでいたところだ。いろいろあったけど二人で良かったとマナは思った。


 だがこの時はまだマナは気づいていなかった。

 シーニャが(つぐ)んだ言葉の意味について……。

 

お読みいただきありがとうございます。

第2章が始まりました。短いですがオープニング感覚です。

当面の目標は次の町へたどり着くこと。ルートも分かってさあ簡単に到着か、ということにはならないのは皆さまの予想と一致しているかと思います。

そんなこんなで、次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ