表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/57

第8話:美少女爆誕。そして遅刻(恋愛編)

「ひかりー! 朝よー!」


母親の声が耳を打つ。

──その時点で、ひかりはすでに違和感に気づいていた。


(ん? 母親の声? てか私、魔王じゃなかったっけ?)


むにゃむにゃと瞼を開ける。


視界に飛び込んできたのは、見覚えのない天井と……

画面でしか見たことのない、紺色の制服――ズボン付き。


「……ズボン?」


見下ろすと、自分の脚には完璧にアイロンがかかった男子制服のスラックス。


「ちょっ、待っ……ちが……私、女なんだけどっ!?」


慌てて布団をかぶりなおし、再度目を閉じる。


「これはバグだ。絶対バグだ。女勇者だった私が、男子ルートに飛ばされるわけないじゃん……!

……二度寝するしかない……」


深呼吸一つ。再起動。



「ひかりっ! 起きないと間に合わないわよ!」


再び母親の声。今度はやや怒気混じり。


そっと目を開けると、制服が変わっていた。


今度は――ブレザーにチェック柄のスカート。


ひかりは静かに、だが力強くガッツポーズを決めた。


「よし、ガールズサイド、成功!!」



制服の質感は、過去にイベントで着たコスプレ衣装と同じ……いや、それ以上。


「これ……ガチの本物……!」


部屋を見渡す。


(えっ、すご。ベッドの位置、窓、ポスター、机、棚まである……)


かつてゲーム画面で“ワンカット固定”だったプレイヤーの部屋。

今、360度すべてが自分の空間として存在している。


ドキドキしながら、鏡の前へ。


「……なにこれ」


瞬間、ひかりのテンションは爆発した。


「超! 美少女じゃん!!

肌つるっつる! 髪サラッサラ! 顔ちっさ! 目でっか!

てか、見るからに10代! え、神様ありがとう!!」


思わずクルクルと回ってみる。スカートがふわっと揺れて、完璧だった。


「あぁ……これが、青春か……」


──と、感動に浸るその瞬間。


「ひっかぁーりーーー!!! 遅刻するわよ!!!」


「えっ、うそ。……何時!?」


時計を見る。


始業:8:30

現在:8:22


「……ギリギリどころか詰んでる!!!」


歯も磨いてない! 髪も整ってない! 靴下どこ!?


でも──


「やばい、やばいんだけど……めっちゃ楽しい!!」


青春の幕開けは、大遅刻寸前からスタートだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ