第55話「よきに計らえ!」
「……あれ?私、働く意味ある?」
帰宅後、カップラーメンを片手に、
何気なく呟いたヒカリ。
通帳には「神からのギフト」。
出勤すればイケメンドライバー。
会社では理不尽な上司。
「あっ、もういいや」
そう決めたヒカリは、
部長への退職メールを件名:ばいばいで送信。
即返信?即既読?即電話?
「しつこっ」
着信履歴が赤く染まる前に、全ブロック完了。
(明日から、なにしよう……)
考えれば考えるほど、自由が押し寄せてくる。
(もはや……日本を乗っ取るか)
寝る前の妄想がまた暴走する。
――翌朝。
「国王、こちらへどうぞ」
スーツ姿のイケメンドライバーが
今日も当たり前のように玄関前でスタンバイしていた。
ドアを開けると、そこには金の馬車
彼に手を引かれ、連れて行かれたのは――
「……ここ、どこ?」
「国務室でございます。さあ、陛下の執務が始まります」
国王制、いつの間に導入された。
スーツを脱がされ、着せられるのは真紅のマントと王冠。
玉座へ案内されると、次々と国の問題が報告される。
「国王、物価が急上昇しております!」
「国王、少子化が深刻です!」
「国王、SNSで炎上中です!」
「よきに計らえ!!」
何も考えず、全指示を一言で粉砕。
(やば。楽すぎる。私って天才?いや、神。)
執務を終えると、控えていたイケメン10人がズラリとお出迎え。
俳優、弁護士、探偵、歌手……
相変わらず全員が麗しすぎて逆に怖い。
誰も文句を言わず、
誰も嫉妬せず、
誰も面倒を起こさない。
(あぁ……やっと、報われた)
ヒカリの脳裏に浮かぶのは――
● 社畜だった日々
● 空っぽのRPG
● ルート分岐すら見れなかった恋愛ゲーム
● 永遠に終わらないパーティ地獄
(こんな日が……来るなんて……)
ヒカリの目から、ぽろりと涙が落ちた。
「国王……どうされましたか?」
優しく声をかけるイケメンNo.7(たぶん医者)
「ううん、なんでもないよ」
その瞬間、ドアが乱暴に開かれる。
「陛下!大変です!アジアでの戦争が激化しております!!」
「……え?」
「どう声明を出されますか?!」
ヒカリはしばらく黙り、
そして、玉座のクッションをふかふかしながら、口を開く。
「明日……答える」
(寝る前の妄想で解決してやる……)
世界の命運を、
今日もベッドに預けて。
ヒカリはふわりと笑った。
◆ヒカリの一言◆
「働かなくても眠れない夜ってあるのよ」




