第54話「私、神様じゃん!!!」
「よし……今度は……」
ヒカリは布団に潜り込むと、深呼吸をひとつ。
(現実の私が、現実のまま、お金持ちになれたら……)
想像するのは、ありとあらゆる大富豪ライフ。
「豪邸、豪車、豪犬、豪猫、豪腕……いや腕はいいや」
寝る前にふわふわと妄想を膨らませ、
「働かなくても生きていける自分」へと想いを込める。
――翌朝。
「ふぁあ……」
目覚めたヒカリは、何の変哲もない自分の部屋に肩を落とす。
「……やっぱり、夢だよね〜〜〜」
なんとなくでスマホを開き、預金残高のアプリを確認。
「って……え?」
目をこする。
「……0が……1,2,3,4,5,6,7……」
「ええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
ケタ違いの残高に、声が裏返った。
「う、嘘でしょ……これ……数字のバグじゃないよね!?!?」
金額の横にはしっかり「JPY」の表示。
しかも取引履歴には、**「神からのギフト」**という謎の名義で振り込まれていた。
「……神からの……ギフト?」
(いやいやいや、わたし神様じゃん……!)
冷静を保とうとしながらも、内心は大荒れの大海原。
それでも、出勤する準備を整え、
電車に乗って、会社に向かう。
「……現実でも叶うんだ……!」
背筋を伸ばし、心はルンルン。
もはやこの社会は、私の舞台装置。
が。
「木村さーん、電話です」
「はーい!」
出てみると――
「はい、○○銀行の××と申します。木村様、当行のプレミアム顧客向け……」
そこから始まる、終わらない金融商品の勧誘地獄。
「当社では税制優遇されたファンドもご紹介できまして……」
「いらないですから!!!!!!」
昼休みにも、終業後にも、ひっきりなしに電話が鳴り続けた。
夜、ヘトヘトになって帰宅したヒカリはベッドに倒れこむ。
「金持ちも……楽じゃないのね……」
そう思いながら、また妄想タイムへ。
「よし、今夜は……イケメン彼氏10人!!」
俳優、弁護士、税理士、歌手、政治家、医者、パイロット、スポーツ選手、作家、探偵。
そして、全員がゲームの中から飛び出してきたかのような完璧さ。
「そして、勧誘されない日々……これ、めっちゃ大事……」
――翌朝。
ピンポーン。
「お迎えにあがりました、木村様」
ドアの前には、スーツに身を包んだ激烈イケメンドライバー。
しかもベンツ。
しかもドア開けてくれるタイプ。
「どちらまで?」
「会社です……(出勤する意味、もうない気がするけど)」
車内でシートに身を預けながら、ヒカリは小さく呟く。
「私、神様じゃん……!」
◆ヒカリの一言◆
「全能感、アレって中毒性あるよね」




