第52話「スターと眠りと、わたしの勝利」
スターの、ほんの――ほんの数マス手前だった。
ヒカリの頭はフル回転していた。
……緑髭はこのルートを通らない。赤髭はクッパマスを避けてルート変更済み。
つまり、次のターンでスターに一番近いのは――
「私しかいない……!」
これまで、何度も何度もダイスを振り、転び、踏まれ、列車に運ばれ、ドッスンに塞がれ、犬に吠えられ、スターの目前でアイテムを奪われ、桃色姫にかっさらわれた日々。
「全部、見てきた……全部、記録した……!」
振る手が震える。期待なんて、何百回裏切られてきたか。でも、今だけは――
「お願い、出ろ……!」
サイコロ 7!
スターまで、ちょうど!
周囲がスローモーションになる。
ピンクのスターが微笑んでいるように見える。
「よく、ここまで来たね」
言われた気がして、泣きそうになった。
「スター、くださぁああああああい!!!!」
獲得。
画面が眩しく光る。
その瞬間――
ヒカリの視界が、真っ暗になった。
「……え、なに?」
足元がふわりと浮く。
あの、ゲームの外の白い空間。
「……戻って、これたの……?」
ふと、頬に触れる感触。
涙だった。無意識に泣いていた。
「……やっと……寝れる……」
ぽすん、と何かに身を預ける。
ああ、柔らかい。まぶたが重い。
「無限ターンって言ってたくせに……案外、あっけなかったじゃん……」
――そのまま、静かに眠りへと落ちていった。
【ヒカリの一言】
「おやすみ、また……夢で会おうね」




