第26話「無限の空を撃ち尽くして」
「さあ、司令官!出撃の時間です!」
頭の奥に響いたその声で、ヒカリは目を覚ました。
今度は、操縦席。視界いっぱいに並ぶボタンと、どこまでも広がる宇宙。
「え、ここ……」
コクピットの中、背もたれに貼り付けられたまま、呆然とする。
目の前には、銀河の果てから押し寄せる無数の敵艦隊。
銀色の羽根を広げた巨大戦艦の群れが、静かに──しかし確実にこちらへ迫っていた。
「シューティングかぁ……。
まあ、RPGよりは短いし、サクッと終わるかな……?」
自分でそう妄想したことを思い出して、ヒカリは苦笑いを浮かべた。
(どうせなら、全武器・全スキル・全回避能力持ちでお願いね)
そう願った通り、
画面の横には**“全兵装解放中”**の文字がずらりと並んでいた。
「よし……なら、いくか!」
ボタンを押す。
砲撃音と共に、ビームが放たれる。
シュバァアァァアアアッ!!
「ぬるっ! 敵が豆腐のように砕ける!! え、楽勝じゃん!」
光の渦の中を、敵機をなぎ倒しながら突き進む。
無数の弾幕が飛び交うも、オート回避機能が全て処理してくれる。
まさに、無敵。
10分後──
「うおおおおおおお!!」
20分後──
「敵、多すぎィ!!」
30分後──
「てか、終わらないんだけど……!?」
50分後──
「うそでしょ……? “エリア9999”ってなに……???」
脳内が痺れていく。
景色はずっと爆発、音もずっと“ドゴォン”と“ビシュッ!”の繰り返し。
どこまで行ってもステージが切り替わらない。終わらない。止まらない。
「やば……これ、もしや……終わらない系の、やつ……?」
完全に自業自得。妄想の産物。
でも、気づいてしまった。
「疲れた……もう、戦いたくない……」
⸻
数時間後。
ヒカリは、燃え尽きたように宇宙空間を漂っていた。
撃ち尽くしたビーム。
聞き飽きたBGM。
震える指。乾いた目。
満たされた達成感など、どこにもなかった。
「私、もっと……こう、まったりしたゲームが、したいだけなのに……」
ぽつりとつぶやいた。
「みんなで、サイコロ振って、のんびりボード回って……
あれだよ。ミニゲームして、スター集めて、ワイワイして……。
あー、あれ、あれ……マリ、なんだっけ……?」
疲れ果てた体が、ゆっくりと眠りに沈んでいく。
「……楽しそう……あのゲーム、やってみたいな……」
⸻
次回、第27話──
《無限ループ編:サイコロ地獄とヒカリの罠》
「ターン1、スタートです♪」
「うん、これは絶対楽勝でしょ!」
それが、地獄の始まりとも知らずに──。




