表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/57

第12話:図書室で出会ったのは、“攻略対象としての”私だった

「ふふふふ……これが、青春……!」


昨日の放課後、橘くんとの甘酸っぱいイベントを噛みしめながら、

ヒカリは教室の自席にニヤニヤ座っていた。


(あの汗、あのまっすぐな瞳……うっかり“専属マネージャー”になりかけたわ)


「日向ー!」


担任の怒鳴り声に現実へ引き戻される。


「はいっ!」


「これ、図書室に返してこいー!」


ドンと渡されたのは分厚い歴史書。

“封印の古代語とその変遷”──めっちゃ重そう。


(えー……でもまあ、図書室ってなんかイベント起きがちだしな……)


そう、ヒカリの感覚は既に“乙女ゲー脳”に完全侵食されていた。



──静寂。

──紙の擦れる音。

──涼しい空気。


図書室。


(……落ち着く……イベントくるなら今……!)


返却棚に本を戻し、ふと奥の書架を覗くと、

一人の男子生徒が机に向かっていた。


霧島きりしま 冬真とうま

文武両道、寡黙でミステリアスな“図書室の君”。


光の差す窓際で、本のページをめくる彼は──まるで映画のワンシーン。


(ふぁっ……何その儚げショット……キマりすぎでしょ……)


だが次の瞬間。

霧島の視線がふとこちらに向き──にこ、と笑った。


「来たんだ。日向さん」


(え……あっ……やば、知ってた!?)


「待ってたんだよね、“君がここに来る日”」


静かに立ち上がり、近づいてくる霧島。


「だって──君、好感度すごく高い顔してる」


「えっ……はい?」


「ううん、こっちの話」


そのまま手を取られ、机の向かいに座らされる。


「ねぇ、日向さん。君は、

“自分が誰かの好み”にどれだけ当てはまってるか、意識したことある?」


「え、な、なにいきなり……」


霧島は、自分のノートを開いた。


──びっしり書かれたヒカリの“観察記録”。


「ツインテールが似合う女子は恋愛ジャンルで王道。声のトーン、反応、仕草……全部記録してる。

君はその条件、89%満たしてた」


「……は?」


「だからね……“推しヒロイン”としては、かなり高ランク。

攻略したいなって思った。いや、もうすでに攻略中かもしれないけど」


「おまっ……きも……いや、変態かよ!!」


でも、ヒカリの頬は赤かった。


「君が他の男に“いい反応”してたの、廊下で見た。……ちょっと、嫉妬したかも」


耳元でささやくその声は、ゾクッとするほど甘くて冷たい。


「君の“好感度バー”……今、何%くらいかな?」


「……っ!」


(だ、だめだ……このタイプ、好きなやつ……)


ヒカリの脳内で好感度ゲージがガン上がりしていく。


「はあ……図書室、なんでこんな攻撃力高いの……!!」


その日。

ヒカリの“恋愛図鑑”に、新たなページが追加された。


《第2の恋:図書室の監視者 霧島 冬真》


「次は、放課後の“特別室”で、続きをしよう。

……君をもっと知りたいんだ。“ヒロイン”としてじゃなくて、“君自身”をね」


「だからそういう言い回しがズルいんだってばぁぁぁ!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ