Extra3:朝8時。準備は順調に
朝ご飯を終えた後、成海は洗濯に取りかかる。
朝の時間を上手く有効活用するならば、食事中に洗濯機を回すのがセオリーだろう。
勿論洗濯機はちゃんと回していた。先程まで寝ていた布団のシーツを洗っていたのだから。
「布団はよし・・・後は敷き布団を天日干しして、ケースに入れておけば、大丈夫」
「気がつけば、成海が買ってきた布団で一緒に寝ていたから、私のベッドって・・・」
「ここ数年は全然使ってないね・・・もう三年ぐらいかな」
「もうそんなになるのか・・・」
元々、高校卒業を機に一人暮らしを始めたのだが・・・色々あって、両親は「一人暮らしはやめて、自分達と同じ沖縄まで来てほしい」と言い出した事がある。
私も凄く怖かったし、けれど成海と離れるのはもっと嫌だった。
成海も、遠距離をやるぐらいなら一緒に暮らせるよう、家を探すと言ってくれた。
両親がダメだというのなら籍を入れることもやぶさかではないと、両親を説得してくれたのは記憶に新しい。
幸いにして、両親の好感度もしっかり稼いでくれていた成海の言葉に両親が甘えてくれたので、こうして同棲が実現していた事情がある。
成海が生真面目な人でよかった。
ずっと「お願いだからお母さん達と一緒に」と泣いていたお母さんが「成海君が一緒なら」と受け入れてくれたから。
「・・・」
「どうした新菜」
彼の肩に頭を置く。
大事な時に駆け付けて、側にいてくれた大事な人。
生真面目で、誰にでも誠実でいてくれたから、色々な人に認められることができた人。
「ううん。こうして、成海に会えて本当に良かったなぁって・・・改めて実感していたところ」
「唐突だな・・・」
「明日には引っ越しだなって思うとね。ここに来た時は色々あったからさ」
「あぁ・・・」
「前は逃げるような引っ越しだったけど、今回は新しい門出の引っ越しだから。久々に引っ越しが楽しみだよ。ねえ、成海。新居ってどんなところなの?朝陽ヶ丘に戻るとは聞いているけれど、どこにあるかまでは教えてくれないよね」
「・・・見てからのお楽しみだ。絶対、がっかりさせない」
成海は新居のことを一切話してくれないまま、引っ越し前日となっている。
サプライズのつもりだろうが、こういうのを私以外の女の子にしたら間違いなく幻滅されると思うよ、成海。
大きな買い物でやるサプライズは厳禁だって、ちゃんと叩き込んでおかないと。
まあ、成海のセンスで選んだ家だ。心配はしていない。
思いやりはちゃんとある人だ。立地を含め選び抜いているはずだと信じている。
きっと、毎日過ごすのが楽しい家なのだろう。
「明日引っ越しが終わったら、ちゃんとお話ししようね・・・」
「・・・何か寒気が」
「そうだよ。寒気がするお話。お説教だから、身構えておいてね」
「・・・はい」
きちんと予告をしておく。
怒られた子供の様に・・・事実怒られることが確定はしているんだけど、しょんぼりして項垂れてしまう。
この姿も、情けないけど嫌いではない。
むしろずっと見ていたい成海の姿で第三位ぐらいには入る。
「ね。成海」
「んー?」
「私さ、成海がいなかったらどうなっていたんだろうね」
「それは僕の台詞だけど・・・新菜だったら、僕がいなくても色々な人が周囲にいたし、なんだかんだで上手くやっていたんじゃないか?」
「そうかなぁ・・・」
「人付き合いは多かっただろう?けれど、彼氏は多分長続きしないと思う」
「それはどういうことかな?」
「新菜は、良くも悪くも感情が重いから。並の男じゃ新菜がくれる愛情を受け止めきれない」
「・・・そうなの?」
「ああ。それを八年間受け止めて、今も抱きかかえている僕が断言する」
「じゃあ、そんな私に付き合える成海って、何なわけ?聖人?」
「同じく、感情が重い人間」
成海はそう言いながら、私の頭を肩と頭で挟み込んでくる。
少しだけ重いけれど、嫌じゃない重さ。
もう少し重くたっていいんだよ。
どんな君でも、私はずっと受け入れるし・・・受け入れていたいからね。




