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22:終業式の合間に

あれから一週間が過ぎ、あっという間に終業式を迎えた。

明日から夏休み。

それぞれが予め計画した夏の予定に繰り出していく。


「若葉。明日からよろしくな〜」

「任せろ…と、言いたいところだけど、民宿って何やんの?」

「色々」

「ざっくりしすぎでしょ」


若葉はバイト先として森園君の家が経営している民宿を選んだそうだ。

私と同じく「知り合いがいた方が少しは気持ちが楽だろうから」という理由で選んだらしい。


「泊まり込みって凄いね、若葉…」

「ま〜。同級生の家っていうのはあれだけど、他にもいるし…それにうち、結構狭いからさぁ…夏休み、終始弟達と顔を合わせるぐらいなら、将来一人暮らしの練習とか、そういうのも出来たらな〜って感じなんだよね」


「練習…。あ、食事って、自炊なの?」

「いや、三食賄い出るよ。働く時間は少し長めだけど、就労期間中の生活は結構手厚く面倒見て貰えるし、個室も貰えてるしさ」

「プライベートって大事だからなぁ〜」


慣れている気がするのは毎年の様に生徒の受け入れを行っているから…なんだろうな。

成海君の家は、どんな感じで進めるんだろう。

遠慮が不要な私と室橋先輩相手とは言え、生徒の受け入れなんてほとんどしていなかったようだし…。

でも、成海君達のお父さんなら上手くやってくれそう。


「新菜は成海のところなんだよね?」

「うん。成海君のところでお世話になるよ!」

「へぇ…成海君」

「゛あっ…」


いつものノリで、呼んでしまう二人きりの時だけの名前。

とっさに口を塞いでも、近くにいた二人には聞こえてしまう。


「…あのさ、新菜」

「う、うん」

「新菜は本気で成海狙いでええ感じなんか?」

「な、なんで急に訛った言い方に…」

「あ〜。それ俺も気になるわ。そこのところどうなん、新菜さんや…」

「森園君まで…!?」

「「で、どうなんよ?」」


二人の距離が近くなる。

うっかりミスでこうも尋問される羽目になるとは思っていなかった。

それほどまでに、見られているというか…わかりやすかったのだろうか。

…仕方ない。今、成海君は室橋先輩に会いに行っているし…。

二人に話すのなら、今のうちかもしれない。


「…た、確かにね。その通り、なんだけどね」

「ゴメン、俺アホだから「その通り」とか何か伏せられてもわかんねぇんだわ」

「あ〜。すまん新菜。私もよくわからんからはっきりよろ。成海とどうなりたいんだよ。言っちゃいな」


「酷いよ二人とも!察して!これ以上は流石に!」

「いやぁ…将来成海本人の前でぶっちゃけることを考えたら、俺たち相手に恥じらうのはお門違いじゃねえかなって…」

「大丈夫。私達「は」分かってやってるからさ…。気づいてないのは成海と美咲ぐらいだから。陸も気づいてるから」

「なんならあいつが一番空気読んでるよな」

「た、鷹峰君まで…」


「それほどまでにわかりやすいってこった…」

「なんなら新菜達はこう…申し訳ないけど、鈍すぎる。いや、本気で。見てるこっちが困惑するぐらいに距離感おかしいから…」

「そこまでなの!?」

「「そこまでなんだよ。ホント無自覚なのな…」」


若葉と森園君から呆れきった視線を向けられる。

そこまでわかりやすいものだっただろうか…。


「ここまで来たら確認しておきたいんだけど、夏休みで勝負決めるの?」

「そ、それは…」

「夏休み入ったら、メッセぐらいでしか相談乗れないからな〜。俺たちは島で毎日仕事。新菜だって成海のところで仕事だろ?」

「うう…」

「いや、さ。新菜からしたら、余計な世話かもしれないんだけど…」

「なんか見ていて「こいつら大丈夫なのか?」って心配になるっていうか、このまま放置して大丈夫なんかな〜とか、手助け出来ることあるのかとか、考えちゃうわけでさ」

「…二人とも」


「大丈夫。成海は良い奴だけど、そういう点では論外だから」

「なんで…?凄く優しいのに…いい人なのに…?」

「うっ…まあ、私の好みじゃないだけだから、その負のオーラ引っ込めな…」

「そうだよね。好みは人それぞれだよね」


…皆が皆、成海君がドストライクだと困っちゃうもの。

よかったぁ。若葉の好みが外れてくれていて。

でも、良いところが分かってないのは何か不服かも…。


「…ま、好奇心で声かけてるわけじゃ無いからさ。出来ることあったら、いつでも声かけてくれってこと」

「二人ともありがとうね。でも、流石に何というか…三ヶ月程度は、行動に移すの早いかなって思っていて…」

「…早いとか遅いとかあるの?」

「テレビとかでも交際ゼロ日で結婚しましたとかやってんじゃん。俺は恋だの愛だのよくわかんないけど、交際ゼロ日婚も世の中にはいるんだ。出会って三ヶ月で交際発展とか有なんじゃねえの?互いの気持ちさえ一致してれば上手くいくって」

「そっか…なんか安心したよ!夏休み、チャンスがあれば挑んでみる!」


「相談いつでも乗るから」

「ありがとう、若葉。森園君も」

「いいって」


二人の協力に背を押されつつ、私は夏休みへと踏み入れる。

今年の夏は、変化の夏になれるように。

後悔がないように、過ごしていこう。

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