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15:一日が終わる前に

晩ご飯を終えて、自室へ。


「…メッセ、送ろう」


姉さんも美海も長風呂派なので、十時以降しかお風呂に入れない。

連絡するなら、常識的な時間の今だろう。


「バイトの件、父さんからいい返事が聞けた」


たった一言。メッセージを送るだけ。

文面は用意できたし、後は送信ボタンを押すだけなのに、指が震える。

ついでに腕の長さと肩幅の情報もすぐに送信出来るように、メモを写真に収めている。


「もう勢いか…」


うだうだするよりは、ささっと終わらせた方がいい。


「えいっ」


送信ボタンを押す。

ささっと操作して、写真も送る。


送り先はちゃんと新菜さん。

思えば、二ヶ月前と比較して…大分上手く操作ができるようになった気がする。

これも何もかも、毎日些細な話題と共にメッセージを送り、送信の練習をさせてくれた新菜さんのおかげだ。


…でも、ここまでする理由って、新菜さんには無いと思う。

友達だから、面倒を見てくれている。

それだけでは、絶対にないことは何となく理解できていた。


…自惚れてもいいのなら、このまま自惚れていたい。

けれど、いつかは何かしら変わるきっかけを用意しなければいけないだろう。

でも、この時間はとても心地いい。


「友達」でいることに、不満を覚えてはいる。

けれど「友達」でいる時間はとても心地よくて…。

本当に自惚れで、行動を起こしたことで今の時間が壊れてしまうぐらいならば…僕は「友達」で十分だ。


『わ、本当?後は私が応募して、受かるだけだね!』

『応募、新菜さん以外ないと思うけど…』

『一海さんの事もあるし、狭き関門になりそうなのは自覚してるよ。それでも選ばれてみせるからね!』

『…頼もしい。でも、なんでうち?』

『そりゃあ、成海君がいるから…お仕事関係で不安な事があっても、相談しやすいっていうのが一番かな』

『ああ、なるほど…』


確かに、知らない環境に、慣れない環境に一人でいるよりは、見知った誰かと一緒の方が精神的には楽だろう。


『最初のバイトは友達と一緒〜っていうのは、よくある話だと思わない?』

『なんかわかるかも。安心感、大事』

『だよね〜。あ、勿論だけど、成海君がいるからって仕事中に気を抜いたりはしないから。そこはちゃんと割り切るからね』

『凄く真面目』

『成海君程じゃないよ〜』


文章だけの味気ない会話でも、彼女の感情が節々から伝わってくる。

スマホの画面を眺めつつ、顔が綻び…メッセージのやりとりを続けていった。


『服のサイズもありがとうね』

『いえいえ』

『…身長、意外と高いんだね』

『そうかな?』

『ん。私、161cmだから…私との身長差、15cmだ』

『へぇ…新菜さんも高いね』

『へへ〜』


新菜さんや姉さん、それから足立さんが高めで、周囲は大体吹上さんぐらいの身長。

160を越えたら、高い部類だと思っていたのだが…。

最近はどうなんだろうな…。平均身長。

周囲が高めだと、よく分からなくなってくる。


『並んだら、どう見えているんだろうね』

『思えば、客観的に自分達って見たことないな』

『今度鏡とか、窓硝子越しに見てみようよ』

『上手く見えるかな』

『大丈夫だよ。目視できなくても写真撮ったりして、加工したら見えたりするかもだしさ』

『あー。なるほど』


『そういうのは任せてよ。せっかくだから学校で撮ろ。大きな鏡もあるし』

『大丈夫かな』

『ふっふっふ、屋上前の踊り場は誰も来ない上に、大きな鏡があるんだよ。そこでやろ』

『わかった。後は、新菜さんの都合がいい時に』

『了解!じゃ、また明日ね!』


それを合図に、メッセージは終わる。

キリがあるのは、いいことだ。

名残惜しさは、あるけれど。


「成海〜。お風呂空いたから入っちゃいな〜」

「ん〜」


ちょうど、姉さんからの合図もかかる。

着替えを片手に、風呂場へ向かう。

やるべき事をやって、一日を終えよう。

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