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12:夏休みの予定

「さて、補習漬けが確定している約一名を除き、期末テストを無事に乗り越えた俺たちは夏休みって訳だけど、お前ら何すんの?」

「俺、夏期講習」

「僕は家の手伝い」

「浪漫ねぇな…って、俺も家の手伝いばっかりだけどさ」


男子三人で顔を見合わせる。

陸は自分で入れた予定だとして、僕と渉に関しては家の事情だ。

悲しいが、こなすしかない。


「そう思うと、私は何もすること無いかも」

「私も。若葉と一緒」

「だったらさ、今年も学校に「長期紹介バイト」の募集かけるからさ。どっちかやってみないか?うちは住み込みでもOKだからさ」


「なにそれ」

「あれ、陸は知らねぇの?うちの高校、厳密な審査を越えないとバイト出来ないんだよ」

「初めて知った」

「初めて知った、かな」

「……?」

「新菜と若葉はともかく、成海は知っておかないとだろ…お前の姉ちゃんも関係ある話だしさ…」


ああ。だから姉さんはモデルを続けていても退学にならなかったのか。

…僕、新菜さんにバイト禁止だって言わなかっただろうか。

うわぁ…無知で嘘を吐いてしまっている。申し訳ない。後で謝ろう。


「とにかく…今、うちの高校でバイトっぽいこと出来ているの、広告塔として期待された成海の姉ちゃん以外は片親世帯とか、離島とか県外から来ている奴が多いんだよ。じゃあ、それ以外の生徒って金を稼ぐ方法無いわけ?って話になるじゃん?」

「最終手段として無断バイトがあるといえばあるけど…」

「それはリスク高いしね。バレたら休学じゃ無くて、一発退学だし」

「そうだな。でも、やっぱり学生だし自由になる金は欲しくなる。そこで、学校側も「指定施設」かつ「レポートを出せば」夏期休暇や冬期休暇の際にバイトが出来る制度を設けているわけ。それが「長期紹介バイト」だ」

「「「「へー」」」」


「俺とか成海の家が申請を出せば、案外簡単に通るはずだ」

「我が家でも通るのか…」

「ま、任せるのは軽作業とか、裏方仕事とか学生にやらせても問題ない仕事が主だけど。長期紹介バイトはきちんと給料も出るし、なんなら学生アルバイトの相場より少し高く設定されている。一年二年の時にこなして、一人暮らしの資金にしているなんて話もよく聞いたよ」


流石渉。かつて長期紹介バイトを利用した経験をさらっと僕らに説明してくれている。

そうか、うちでも…募集をかけられるのか。

でも、うちで出来ることと言えば退屈な店番ぐらいだろうし…。

それでも父さんは制度を知れば喜んで募集をかけるだろう。常日頃から僕らに店番をさせる程、我が家は人手不足なのだから。


でも、今まで姉さんが父さんに説明しなかったことを考えるに…姉さんはそれで応募してきた生徒を警戒するのではないだろうか。

うちとしても姉さん目当ての変な奴が来られても困るしなぁ…そういうの、配慮して貰えるのだろうか。


「んぅ…」

「…成海君、成海君」

「ん?」


考え事をしていると、新菜さんがそっと耳打ちをしてくる。

どうしたのだろうか。


「…成海君ちのバイト、あったら応募したいな」


こちらとしても嬉しい誘い。

僕と姉さんの負担も大きく減ってくれるし…。

それに、見知った新菜さん相手なら、姉さんも安心できるだろうし…。


「…話はしてみる。父さん次第だけど、うちはいつも人手不足だし、喜んで応募かけると思うよ、新菜さん」

「本当?」

「うん。後は先生に相談して、色々調整して貰うことになるだろうけど…とりあえず、父さんに聞いてみるよ」

「うん!楽しみにしてるね!」

「…期待しておいて」


まだ確定していないことに胸を弾ませる新菜さん。

なるべく期待に応えられる結果を出したいな。そうなればいいなと思いつつ…彼女がはしゃぐ姿を眺めた。


「…なあ、やっぱり新菜。成海のこと名前呼びしてるよな」

「してるわ。私にもばっちり聞こえたわ。なんなら成海も新菜呼びしてるわ」

「…声、ばっちし聞こえてた」

「…互いに顔にも行動にも出てるし、隠しているつもりなのかな?」

「「…本人達は隠しているつもりなんだ。指摘するな」」

「何を隠すの?」

「お前はまだ知らなくていい世界の話だよ、美咲…」

「?」


僕らが談笑を続ける中、四人が奇妙な反応をそれぞれ見せる。

何も分かっていない美咲さんは、僕らと神妙な顔を浮かべる三人を交互に見つめて…最終的には首を傾げ…理解できない現実から目を逸らした。

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