20:意図しない重複
「そ、そういえばさ…さっき買ったコラボのアクセサリーなんだけど、買う時に六点って言われてさ」
「あれ?五種類だったよね。なんで…」
「多分一つ多く取ったと思うんだ。中、ここで確認していい?」
「いいよ」
「ありがとう」
先程買ったばかりの商品の包装を丁寧に取り、テーブルの上に並べていく。
髪留め、ピアス、イヤリング、指輪、これは、四角く加工した硝子を繋げたストラップか。
一概に装飾品としてのアイテムだけではなかったらしい。
重複していたのは、ストラップ。
他のものではなかった。これなら、どうにかなりそうだ。
「何が多かったの?」
「ストラップ」
「へぇ…綺麗だね」
小粒の硝子は数多の色を透かし、虹色に瞬く。
落ち着ける空間を作り上げるため、暖色かつ薄暗くされた照明に照らされた店内ではよく目立つ。
「…ストラップ、二つあっても使わないし。よければ、その。貰って、くれませんか」
「いいの?」
「もちろん」
「じゃあ、いただきます」
「助かるよ」
「せっかくだから、スマホにつけていい?」
「もう遠野さんのものだから。どうするかは遠野さんに任せるよ」
「じゃあ、遠慮なく」
優しい手つきでスマホのストラップ穴に紐を通し、しっかりと結わえ付ける。
スマホを揺らすと共に煌めくそれを僕に見せつつ、遠野さんは嬉しそうに笑ってくれていた。
「大事にするね」
「そうしてもらえると」
「ねえ、楠原君」
「何?」
「そのアクセサリーって、保管するだけなの?」
「その予定だけど…」
「どうせなら、その…ストラップだけでも使うのはどうかな。初めて放課後遊んだ記念、とかで」
「僕とお揃いになるけど…」
「そうしたいから、提案、してみたり…しています」
「じゃ、じゃあ…そういうことで…つけさせて、いただきます」
「お願い、します」
普段通りでいいと言われたばかりなのに、たどたどしく敬語を使って互いに話を続けてしまう。
お揃いにしたい。そう言ってくれるのは、素直に嬉しい。
けれど同時に、僕なんかでいいのかと思ってしまうのだ。
同性のお揃いと、異性のお揃い…同じように見えるけれど、意味合いは全然異なって見えるはずだ。
共通して言えることは、特段仲がいい友達とすることではないかという部分。
そんなことをする相手に僕なんかを選んでいいのか、と。素直に考えてしまうのだ。
けれど、けれど他でもない遠野さん自身が僕をお揃いの相手に選んでくれた。
だったら、自分でいいのかと悩む前に…喜ぶべきだと思う。
人付き合いが苦手な僕に、お揃いをしていいと言ってくれるような友達が、高校に入ってから出来た事実を。
表に出すのはやっぱり恥ずかしいけれど…心の中ではしっかり喜ぶべきだ。
震える手はなかなか自分のスマホのストラップ穴に紐を通すことができない。
何度か試行錯誤を重ねた後に、自分のスマホにストラップをつけることに成功した。
「…出来た」
普段はこんなに手間取らないのに、遠野さんの前ではいつも出来ることも、上手く出来なくなってしまう。
だからと言って、彼女と関わらない生活を選択することはない。
目の前で揺れる硝子のストラップの様に…彼女が僕の日々を輝かせてくれる。
その事実と、彼女が僕の友達であることには、確かな事実なのだ。
.…それが事実であって、いいのだろうか。
ふと、顔を上げて正面———遠野さんを見上げる。
そこには、先程よりも喜びを隠さずに笑う遠野さんがいた。
「…お揃いだね、楠原君」
店内のBGMに溶けてしまうぐらいの小さな声。
僕にしか聞こえていないであろう、囁くように伝えられた言葉。
遠野さんは僕のスマホと並べるようにスマホをこちらに差し出し、二つのストラップは揺れる感性で互いに交差する。
小粒の硝子が引っかかりあい、その交差は解けることがなく…僕らの目の前で主張を続けた。




