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18:衝撃の裏に

二月十四日。

いつも通り登校をする中、新菜の顔が若干引きつっていた。


「どうした、新菜」

「あー…いや、うん。悩むなら先に渡そうかな。これ」

「あ、新菜の?ありがとう。じゃあ僕も…」


昨日のうちに作っておいた手渡し用のお菓子を彼女に渡そうとすると、彼女は首を縦に振る。


「…成海君の、渡す前に中身を確認して欲しい」

「なんで?」

「いいから」

「…ん。あ、二つある」


一つは手作りらしいラッピングがされた箱。

中身は事前に伝えられていた通りだろう。チョコマフィン。楽しみだ。

しかし、もう一つの高級感があるラッピングはなんだろうか。

手紙もついているようだが…もしかして。


「もしかして、ご両親からか!?」

「残念。お父さんオンリー」

「えぇ…和久さんが…」

「流石に引くよね…」


流石にびっくりした。麻紀さんと二人でって話なら分からないこともないけれど、和久さんオンリーなら本気で意味が分からない。

引きはしない。嬉しい気持ちの方が強い。

でも、なんか…凄く、わからない。なんで?


「あ、いや…なんでこんな高級店のチョコを僕に?とは思う。ブルイヤール・ネージュって並んでもなかなか買えないって…特にこの時期は予約も抽選なんだろう?」

「らしいね…私も調べてびっくりしたよ…」

「これ、貰っていいのか?」

「貰ってあげて。それ、成海君にって買ってきたから…」

「それは嬉しいけど…なんでだろうという気持ちが今も強い」

「だよねぇ…あ、お父さん文通したいって言っていたから、後でメッセのアカウント教えるね」

「助かるよ。この件のお礼もしたいし」

「そうして。連絡してくれると、お父さん喜ぶだろうから」

「ああ。ありがとう、新菜。運んでくれて」

「いいって」


和久さんのインパクトで忘れそうになるが、一番貰って嬉しいものは変わりない。

変わってはいけない。


「それから、新菜。マフィンありがとう」

「…忘れているかと思った」

「そんなことはない。確かに、和久さんのインパクトが大きかったけど…貰って一番嬉しいものは新菜の手作り」

「ありがと。そう言ってくれると嬉しいよ」


「僕の分も今渡しておく」

「ありがとう。中身はパフェ?全部盛り?」

「そんなわけないだろう?パフェはまた次の土曜に」

「用意はあるんだ…」


既に材料の手配も終えている。

それから、あれを完成させるだけ。


「今、パフェグラス作ってるから」

「そこまで?」

「出来ることは、できるだけやりたいなと…なかなか難しいな、お洒落な食器」

「成海君、こだわりすぎないようにね」

「君が使うものだからこだわりたい。後、洗いやすさも求めたいよな…」

「も〜」


僕が渡した箱を嬉しそうに握りしめ、いつもと変わらず笑ってくれる。

…本当に和久さんの一件に対する反応が心配だったんだな。


「じゃあ、この箱の中身って…?」

「実は、焼き菓子の詰め合わせとマカロンのあまりが入っております…」

「全部盛りとは言わないけど、アソートなんだ」

「そうそう」

「楽しみ。でも、なんでマカロン?」

「…渉には、流石に騙したこと謝りたいなと」

「…メッセージ内で作れないって嘘吐いたの、気にしてたの?」

「少々…」


「渉君も気にしないと思うけどな」

「親しき仲にも礼儀ありだぞ新菜。こういうのは、ちゃんとしたい」

「そういうところほんと好き」

「もー…人前だぞ」

「聞いてないって〜」


聞いてなかったら、周囲から妬みは飛んでこないと思うんだ。新菜。

姉さんといた時よりもトゲがある視線を向けられながら、彼女から貰った袋を落とさないようしっかり握りしめる。

まだ、今日は始まったばかり。

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