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27:新しい環境

広瀬先生は廊下側と窓際四隅に座る生徒にじゃんけんをさせた。

勝者である窓際列最前に座る生徒から、順にくじを引くように促し…結果をそれぞれが確認をする。


それを受けて、席の移動を開始する。

僕の席はどうやら七列中三列目の一番後ろらしい。

その先に向かうと…。


「若葉さんだ」

「成海が隣?大勝利じゃん」

「よろしくね」

「こっちもね。反対側は?」


「あ、お隣楠原君だ」

「藤枝さんだ」

「よろしくね〜」

「こちらこそ」


後ろの列が比較的平和に固まる中、最前列の様子がおかしい。

何かあったのだろうか…。


「成海君だけ離れて貴方とはまた一緒なの…?」

「…奇遇だね。俺も同じだよ。どうして僕の隣は成海じゃないんだ」


教卓前の最前列二席。

そこに新菜さんと陸が隣同士で腰掛け、背後からでも分かる程落ち込んでいる様子を見せていた。


「…マジかよ」

「これ詰んだわ」


陸の背後を埋めたのが渉。反対側の隣を埋めたのが美咲さん。

二人も哀愁漂う背をこちらに向けつつ、自分の席についた。


「男女で列が決まっている訳でもないのに…!新菜だけじゃなくて美咲と渉も陸の包

囲網下にいる…!」


それを見て、若葉さんだけは大笑い。

その声が聞こえたのだろう。四人同時に僕らの方へ振り返る。


「わ、若葉…姿が見えないと思ったら、ちゃっかり成海君の隣を確保してる…!」

「しかも後ろという名のパラダイスで…!新菜、あれが裏切り者の姿だよ…!」

「誰が裏切り者だ〜?言ってみ、美咲?」

「成海〜。前列我慢するから、せめてお前の保護者だけ後列で引き取ってくれね〜?」

「誰が保護者だって?」

「お前だよ陸さんや。成海が心配でチラチラチラチラ後ろ向きやがって。あ、実は俺の方を見てる?俺の事好きか?ん?」

「ち〜が〜う〜!」

「まあまあ…」


陸が新菜さん相手に「厄介」と言い放った一件以降も、僕らは何もなかったかの用に過ごしている。

まあ、渉から陸へのからかいが強くなったような気がするが。

むしろ無遠慮になったような気がしなくもない。

帰宅した後、陸と二人で話し…どうしてそんなことをしたのかを問いただしたのは記憶に新しい。


新菜さんが関わって以降、僕の生活は大きく変わった。

倒れることもあった。一部男子からの妬みも買っている。

今後僕へ不利になるような事態が訪れると考えた時、新菜さんの存在が邪魔で…厄介だと思ってしまっていたこと。

それをうっかり口に出してしまったことを、教えて貰った。


そのことは渉や若葉さん、美咲さんや新菜さんにも伝えている。

皆、気になっていたようだし…陸にも勿論話す許可は取っている。

四人からそれぞれ理解を得て貰い、改めて謝罪を述べた後…いつもの時間に収まっているのが現状だ。


美咲さんと渉にからかわれながらも、年相応に振る舞う陸の背を見て、笑みが零れる。

彼が彼らしく、年相応に振る舞える環境はきっと大事なものだと思うから。

しかし、僕も余裕を持っている場合ではないらしい。

新菜さん達と僕を遮るように、ある人物が立つ。


「…マジかよ」

「…木島君」


木島祐平きじまゆうへい。なぜか僕に突っかかってくる不思議な人。

そんな彼と前後になるとは思っていなかった。


「…鷹峰君。鷹峰君」

「なにさー!」

「ここは言い争っている場合じゃない。後ろ見て」

「…遠野さん。げっ…うっそだろ」


木島君を避けるようにして見てくる新菜さんと陸から不安そうな視線が飛んでくる。

結果は変えられない。

でも、少なくとも…関わろうとしなかった彼と関わる機会を得たのだ。

少しでも、心意を知れたら良いのだが。

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