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25:夏が終わる

話が終わった後、私達は待っていた四人と合流する。

成海君はいち早く気がつき、私達の元へ駆けてくれた。


「新菜さん、陸」

「…あ、成海君」

「話、終わった?」

「まあね。じゃ、俺は成海の部屋で待っておくから」

「ああ。あ、茶葉、好きだって言ってた奴、買っておいたから。好きに飲んでいてくれ」

「ありがとう。助かるよ」


鷹峰君は先に離脱し、私達だけが残される。


「新菜さんは…平気?」

「あー…うん。平気だよ。ちゃんと謝ってもらったし…」


でも、それだけではない。

心の中の汚い無自覚を暴かれ、彼に隠さなければいけない感情を露呈させられた。

そんなことは、口が裂けても言えない。

自分を繕って、いつも通りに。

綺麗な遠野新菜だけを、見せ続ける。


「もう気にしないから、ね?」

「…そっか」

「心配、だった?」

「少し。まあ、今から全部聞けばいいだけだから…」

「家で待っているって言っていたけれど…いつもなの?」

「まあね。話があるときは、いつも互いの家。提案した方の家に行って話し合いをすることにしているんだ」

「…そう」

「…新菜さんは、僕の方が心配?」

「少しね。私が原因で、仲違いとか、してほしくないし…」


厄介な男ではあるけれど、成海君に関することでは最も信用できる。

悪いようにはしないだろうし、そうならないように誘導するだろう。

鷹峰陸という人間なら、きっとそうする。

私と貴方は「お互い様」…なんでしょう?

だったら真っ先に閃いた考えが、彼の答えと重なる筈だ。


「そうならないようにしたいけれど…」

「状況次第では?」

「そうだね。君に厄介なんて言った理由を聞き出すまでは、きっと…荒い手段も使う事になるだろうから」


…私にした話をそのままするとは思えない。

自分を繕うために、どんな嘘を吐くのだろうか。

美咲に負けて土下座をさせられたよりも、精神的な負荷がかかる所業が彼には待っているのだろう。

…これで、痛み分けと言うことにしておくか。


「皆も、今日は色々とありがとうね」

「いいってことよ」

「で、結局あいつ…なんであんなこと言ったの?」

「成海君のことが心配なんだって。初めてできた彼女が成海君に害を成さないか心配しすぎて、心の中で考えていたことをついぽろっと言っちゃったみたい。過保護なんだよ」

「成海ぃ…保護者をそろそろ子離れさせろ〜?」

「気持ちはわからんでもないけど…やりすぎだわな〜」

「…新菜?」

「なぁに、美咲」

「…ううん。なんでもない」


美咲だけは、何かに気がついてしまう。

けれど私の言葉に全てを察したのか…目を伏せて、これ以上の追求を避けてくれた。


夕暮れと共に、夜が来る。

空と嘘を覆い隠し、時が過ぎる。


今日はここまで。


しかし、夜明けは必ず訪れる。

覆い隠された嘘が暴かれるのは、いつになることやら。

それは私にも…これから嘘を吐くであろう鷹峰君にも、わからない。

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