14:足立さんちの三人きょうだい
食事を終えた私達は、美咲と鷹峰君にそれぞれ連絡を入れ…街中を探し出す。
「とりあえず、二人に「今どこ?」って送ってみた。返事無いけど」
「ありがとう成海君。仕方ないけど、歩いて探すしかないよね。この辺で人通りが少なくて言い合いしやすそうな場所って…」
「住宅街の方になると思う。駅前でやるほどあの二人も馬鹿じゃないだろうし」
「ま、それはそれで嫌なんだけどな…」
「近くに誰も来ないような公園が確かあったはず。その辺りから攻めていこう」
若葉の先導で、私達は駅前周辺の住宅街を歩いて行く。
彼女はこの辺りに住んでいる。地の利があるし、今日は存分に頼らせてもらおう。
「あれ、姉ちゃん?」
「姉ちゃんだ」
「よっ、弟共」
「なんだ。後ろの彼氏か?」
「な訳あるかい。クラスメイト」
「葉輔。よく見ろ。女の子もいんだろ。彼女かもしんねーぞ」
「マジかよ。葉平。お前天才か?」
「二人揃って馬鹿でしょ。ごめん皆。こいつら私の弟。ほら、自己紹介して」
「足立葉平。小学六年」
「足立葉輔。同じく小学六年」
「双子で、葉平が兄、葉輔が弟ね」
「あ、姉ちゃんそれを言うのは反則だ」
「俺たちはどちらが先に産まれたとか、兄とか弟とかそういう概念は揉めるから無かったことにしているんだ」
「世間的にはそうなってんの。あんた達はあんた達で好き勝手してて良いから、自分ルールは押しつけんな」
若葉が振り回されつつ、双子の弟君達に私達の事を紹介してくれる。
この辺りの小学六年生ってことは…。
「成海兄ちゃんって、もしかして美海の兄ちゃん?」
「あ、うちの妹知ってる?」
「今、俺たちと同じクラス」
「姉ちゃんと兄ちゃんがいるとは聞いてたけど、世間狭いな〜」
やっぱり、若葉の弟君達は美海ちゃんと同じ小学校らしい。
けれど、なんだろう。
若葉と成海君って、確か小学校は一緒じゃないんだよね…?
「え、なんで浜波小に楠原妹いんの?向こうの朝陽ヶ丘小じゃないの?」
「学校が統廃合されて、僕らが通って、美海が入学した朝陽ヶ丘小は閉校したんだ」
「マジか。知らんかった」
「そこに通っていた子は今、若葉さん達が通っていて、葉平君と葉輔君がいる浜波小に通うことになったんだ。確か…美海が四年生の時だったから、二年前になるはず」
「姉ちゃん、美海の兄ちゃんより情報持ってねえじゃん」
「この情報社会でよく生き残れてたな」
「うるせー」
弟君達の頭を掴む中、若葉は何か閃いたらしく…手を止める。
「そういや葉平、葉輔。あんた達ランドセル置いてきてるって事は、家に帰って遊びほうけてた訳よね」
「まあな〜」
「だって家狭いしな〜。寝る時だけいれば十分って感じ〜」
「遊び始めて何分ぐらい?」
「一時間ぐらいは外にいるよな」
「ん。昼飯も用意されてたのを外に持ち出して食べたし。ラップのおにぎり三つな」
「…その間、私達と一緒の制服を着た男女のコンビ見た?」
なるほど。この辺で遊んでいた二人なら、美咲と鷹峰君を見ている可能性がある。
二人は顔を合わせ、若葉の問いに答える。
「俺たちは見てないけど、見たって奴から話があった」
「そいつによると、駄菓子屋の近くにいるって聞いた」
「…なんでそんな情報が」
「いや、何か揉めながらメンコ叩き合ってるらしくて」
「おもしれー高校生いるから見物しようぜってことで誘われてさ〜」
「…これじゃね?」
渉君も頭を抱えて、大きく息を吐く。
成海君は若干苦笑い状態だ。かくいう私も、普通の表所はできていないだろう。
何をしているんだ、あの二人は…。
「とりあえず、その情報が私達が探している人間と一致したのなら、駄菓子屋でお好み焼き奢るわ。あんた達、おにぎり三つじゃ腹すかせてるでしょ」
「マジかよ姉ちゃん!最高だぜ!」
「この前バイト代入ったからって太っ腹だな!」
「でもこういうのもなんだけど、交友関係は見つめ直した方がいいぞ」
「類友とか思われたら、俺達の沽券に関わるし」
「へいへい…片方は考えとくわ…」
「それから御姉様、俺…おやつもつけて欲しいなって」
「スルメのボトル大人買いしようぜ姉ちゃん」
「…お好み焼き一枚、おやつは各五百円までね」
「うっひょ!交渉した甲斐があるぜ!流石麗しの御姉様!一生ついていきやすぜ!」
「姉ちゃん、最高」
…葉平君と葉輔君、ぱっと見の区別はつかない。
双子だからと言うこともあるだろう。
それに、二人とも性格が同じ。
若葉は家族だからか、二人がどちらか見分けられているようだが…私達には見分けがつかない。
服も一緒だし、何か判別材料とかあるのだろうか…。
「とりあえず、駄菓子屋の方に向かおう。美咲と陸、いると思うし」
弟君達も合流し、私達は駄菓子屋さんの方へ向かう。
高校生が何やら言い合いをしながらメンコを叩いているらしい、謎の現場へ…。




