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13:幼馴染の知らない顔

成海君と二人、席に戻った先に…美咲と鷹峰君はいなかった。

残っていたのは、深刻そうに俯く若葉と渉君のみ。


「…何が、あった?」

「美咲が、陸に喧嘩売りに行った」

「…」


成海君はゆっくり席に腰掛け、頭を抱える。

それもそうだろう。美咲が動く程の事が起きている。

彼が知らない場所で、想定外のことが起こりすぎている。

混乱するのも無理はない。


「大丈夫か、成海」

「あ、いや…大丈夫とは、思いたいけど」

「流石に無理でしょ。ほれ、アイスティーにソフトクリームぶち込んで飲んじまいな」

「あー…確かにミルクでまろやかになるし、甘そうだしでちょうどいいかも…」


成海君は若葉の進めでソフトクリームをアイスティーの中に入れ、ゆっくりとかき混ぜる。

まろやかな色合いになったそれをストローで吸い上げて、ほっと一息。


「ふぅ…」

「美味しい?」

「ん」

「私も真似しよ〜っと」


私も成海君に倣い、同じようにアイスティーの中にソフトクリームを少々混ぜ込む。

…ミルクティーにはほど遠いけど、うっすら甘くてマイルドでいけるかも。


「なんか、見てると真似したくなる…」

「美咲の権利使えば?謎ジュース飲んで終わりって勿体ないだろ」

「それはルール上よくない。追加で頼む」

「若葉って見た目からは想像できないレベルで真面目だよな」

「は?見た目派手めでも真面目なところは真面目だし」

「すまんすまん。ま、人は見かけによらないなって話だよ。俺も頼も」


「渉、あんたお金大丈夫なの?」

「なんでそんなこと聞くの?」

「あんた小遣い制でしょ?この前ゲーム買ってたのに、残高あんの?」

「お前は俺のお袋か!?なかったら注文なんざせず、誰かにシェアセットの購入を促してたわい!」


ちょうど来た店員さんに飲み放題の追加を頼み、二人はささっと飲み物とスープをちゃっかり確保してくる。

ちなみに二人とも無糖コーヒーだった。

ドリンクにソフトクリームを入れる流れだったから、てっきりソフトクリームも取ってくるかと思いきや、そんなことはなかった。


「というか、なぜ若葉さんは渉の財布事情を」

「約二ヶ月毎日顔会わせて、休みの時は二人で出かけてたから」

「うちのバイト、今年は一年若葉だけでさ。二年と三年はそれぞれ派閥できてて、自然と俺と一緒って事が多くって」

「ハブられていた訳じゃないんだけど「とりあえず一人だし後輩構っとくか〜」みたいな義務感に耐えきれなくて。渉といた方が楽だったわけね」

「「なるほど〜」」

「「そこ〜?何にやついてんだ〜?」」

「いや、なんか私達を見ていた若葉達の気持ちが分かった気がしてさ」

「微笑ましいなと思ってな」


私達が向かいの席で若葉と渉君の様子を微笑ましく見守ると、二人は互いに顔を向かい合わせ…気まずそうに目を背ける。


「ま、まあ俺たちの事は良いだろ。てか、俺たちより二人の話の方が需要あるし」

「それは…」

「ま、新菜の惚気で時間潰してもいいんだけどさ。図書館に行くにはちょっと空気重いし…新菜、メッセでやりとりできるならメッセで宿題して」

「そう言おうと思ったところ…流石に今やるべき事は宿題じゃないしね…」


宿題の空白部分は少し。

分からなかったからと空白で出すのもありだ。なんなら明日の昼休みに先生へ直接聞くという手段も残されている。

今、ここですべき話はそれではない。後回しにできることではない部分から、少しずつ進めていかなければ。


「…成海ってさ、陸とは付き合い長いんだよな」

「ああ。小学一年生の時からの付き合いだ。本人から話があった通り、僕が色々と大変な時期も支えてくれた大事な存在。なんだが…」

「正直、成海以外には全員敵意むき出しだよな。新菜と付き合った事を知ってから一気に露骨かした気がする」

「試験前勉強会もさ、言うの悩んだんだけど…私達の心配ってよりは、私達に関わる成海の心配が多かった印象なんだよね」


「前から皆への対応は悪かったりするのか…?」

「本性出し始めたのは試験勉強あたりだな」

「それ以外は成海が心配すぎて、ちょっときつめな時あるな〜って感じ。ま、成海自身の事情もあるし、私達のこと警戒するのも理解できたけど…最近はね」

「そうか…」


「陸自身、何考えてるのかわかんないけど…新菜の事を厄介扱いしたり、とてもじゃないが良い印象を抱かない」

「…」

「俺たちが縁を切るのは簡単だ。だけど、どうしてあそこまでするのか。その理由を聞いてからでも遅くはない」

「…僕が、確認を」

「いいや。成海は新菜についていてやってくれ。俺たちは美咲を追いかけて、あいつに理由を問いただす」

「でも」

「陸と新菜、どっちを優先すべきか悩む部分だと思う。恩人みたいな陸を優先させたい気持ちもちゃんとわかる。でも、今は新菜の側にいてあげて。平気そうな顔してるけど…あんな事言われて傷つかない人間なんていないから」

「二人とも!格好良く出て行こうとしないでくれ!」


「「何故止める」」

「料理が来たからだ」

「「…そうだった」」


陸君と美咲が注文した分も含めて、全員分の食事がやってくる。

流石にコレを二人で食べろというのは…無茶な話だ。


「た、食べてからでも遅くないと思うよ?」

「そうだな。なんだったか、腹が減っては戦いはできぬだったか」

「戦ね」


若葉と渉君は席に引き返し、やってきた食事に箸を伸ばす。

美咲が頼んだシェアポテトセットも、陸君が頼んだナポリタンも、四人で分けて、全部お腹の中に収めていく。


今回の一件も、こうやって収まれば良いのだが。

果たして…。

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