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11:そして昼食へ

学校から移動しつつ、各自連絡を行う。

成海君は一海さんと海人さんへ。

若葉、美咲、渉君、鷹峰君はお父さんかお母さんに連絡をしていた。


私はそれを終わるのを、じっと待つ。

高校生になっても、流石に午前中で帰ってくる予定なのに、全然帰ってこないのは家族も不安になるだろうから。

連絡するのは良いことだと思うし、同時に羨ましく思う。

そして、寂しさも感じてしまう。


「僕はこれでおしまい。新菜さんは?」

「うちは今日、両親ともに帰ってこないから…別にいいかなって」

「そっか…」


「これで全員連絡済だ。駅前行こうぜ〜」

「そういえば、渉。駅前のどこに行くんだ?」

「ホイゼ」

「なんだそれ」

「成海君知らない?ファミレスチェーン店だよ」

「…行ったことない」


こんなところで新事実をお出しされるとは思っていなかった。

確かに海人さんは忙しい人だし、自分で作ることが多かった成海君が外食する可能性は極めて低い。


「そうなんだ。あ、外食とかあまりしない感じ?」

「うん。こういうのもなんだけど、自分で買って作った方がってところが…」

「料理上手だから言えることだね」


外食で食べられるものは基本的に作れるタイプだ。

わざわざ店に出向くよりは、材料を買いにいくのだろう。


「でも、流石に外食をしたことがないって訳じゃないよね」

「うん。たまにお寿司屋さんに行くぐらい」

「…言い方が可愛い。可愛すぎて顔ない。美海ちゃんに頼まれてお皿取ってあげてそう」

「僕は取らないぞ?目の前で職人さんが握ってくれる上に、そのままそれぞれのお皿に置いてくれるし…」

「回ってなかった」


「叔母さん…父さんの妹さん夫婦が経営しているお店なんだ。試食も兼ねてよく遊びに行かせて貰ってる」

「皆が皆工房関係者になるわけじゃないんだね」

「父さんもそうだけど、叔母さんも硝子細工自体には興味が無かったんだ。がっつりやっていたのは…僕が知っている人だと、お爺ちゃんとお婆ちゃんぐらいか」

「へぇ…」


夫婦で硝子職人ってなんかいいなぁ。

一緒の事をしていたら、勤め先も、家を出る時間も帰る時間も同じで…。

…何考えているんだろうな、私。


「お二人さん、何話してんの?」

「外食するのは珍しいって話。ホイゼってところにも行ったことがないから」

「マジかよ。新菜は?」

「私は何度か」


「陸。お前も初めてか?」

「そんなことないよ?なんでそう思ったの?」

「いや、成海と似たようなところがあるし。もしかしてって思ってさ」

「何でも同じなわけがないだろう?ほら、早く行こう。俺もそろそろ手が疲れてきたよ」

「…私の頭から手を離せば、その疲労からおさらばできる。そんな単純な事にも気がつかないのはどうかしている。馬鹿と秀才は紙一重ってや…あだだ。頭が割れる」

「君の生殺与奪は俺が握っていることをくれぐれも忘れないで貰えると」


徹底的に美咲の頭を掴みつつける鷹峰君。

一瞬、彼の視線が私に向けられた気がした。

…何となく、怒っている気がするのは、気のせいだと思っていたい。


◇◇


ファミレス店内に入り、それぞれ席に着く。

四人テーブルと二人テーブルをくっつけて、六人のテーブルへ。

それぞれがメニューを覗き込み、自分が注文する物を選んでいく。


「…最近はハイテクなんだな。注文もここからできるだなんて」

「タブレットのメニューも初めて?操作大丈夫?」

「そこはなんとか。でも、メニューって、てっきりあの本型のだと思っていたから、面食らっているよ…」


確かにメニューと言われたら、あの本型の物が私も思い浮かぶ。


「最近はめっきり少なくなっている印象あるわ、それ」

「確かに、どこ行ってもタブレットって印象あるわ」


若葉と渉君の言葉に、成海君は若干しょんぼりしていた。

…スマホの操作で手間取っていたし、大丈夫だとは言ってたけれど。


「成海君、一緒にメニュー見てもいい?」

「うん。新菜さん、まだ注文していなかったんだな」

「色々ありすぎて悩んじゃって」

「なるほど。気になっているのは二つ?」

「うん」

「じゃあ、片方僕が頼むから、新菜さんはもう片方にして…少しだけ分けるっていうのはどう?」

「いいね。でも、成海君はそれでいいの?」

「僕も何を頼めば良いか分からなくてさ…色々ありすぎて、目移りする。新菜さんみたいに候補を絞れていたらよかったんだけど…それすらも」

「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰っていいかな」

「僕こそ」

「じゃあ、私が注文しておくね」

「お願いします」


タブレットを操作して、注文を終えて…最後の美咲へ。

美咲は私達の注文を凝視した後、小さくため息を吐く。


「…なんで皆飲み放題入れてないの?」

「ご飯を食べに来ただけであって、ゆっくりする気がないからだ」

「今日はいいかなって。それに食後のデザート注文したし」

「俺はジュースとか飲まないからな」

「私も若葉と同じだよ。デザートあるからいいかなって」


「飲み放題って何、美咲さん」

「文字通り向こうのドリンクバーの飲み物が飲み放題。ついでに今日のスープも飲み放題。ソフトクリームも作り放題。成海氏気になる?入れとく?」

「…気になるから、お願いします」

「よしきた」

「美咲、やっぱり私も入れておいて」

「あれ、新菜。デザート頼んだからって」

「ソフトクリーム食べ放題は聞いてないよ。それは別腹だよ」

「それもそうか」


美咲が三人分、飲み放題を注文してくれる。

それを終えた後、店員さんが「飲み放題利用中」と書かれた札を三人分持ってきてくれる。


「ブツは手に入れたし、お二人さん…遊びに行こうぜ」

「成海君、行こ」


札を両手で持ち上げ、目を輝かせていた成海君に声をかけ、ドリンクバーのエリアへ向かう。


「…新菜、二人きりにさせないつもりっぽいな」

「独占欲つよつよ彼女に無自覚に愛されてるの、成海は気付いてんのかね。見ていて微笑ましいなあいつら…」

「多分気付いてない…」

「だろうな」

「君達なに保護者面してるの?」


そんな私達を微笑ましく見守る二人と…もう一人。


「本当に厄介だな…」


ぼそっと呟いた言葉だけは、私の耳にしか届かない。

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