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訓練開始

-------


「ちゃんと昨日話し合いはしたかい?」


朝起きて飯を食べて外に出ると、鳴海教官は俺たちを待っていた。ここの食事は美味しい。食べたこともないような食事も出てくる。


稼げるようになったら亜子と奏多に食べさせてやらなきゃ。そう思いながらありがたく胃にいれていく。



「小春、もう要らないのか?」


相変わらず今日もあまり食べようとしない小春が心配になって声をかけた。


「緊張して、喉を通らない」


まぁ気持ちはわかるけど。

訓練途中で倒れちゃったりしないかな。



「しゃーないなぁ。吐かれても困るしな。お前ら、フルーツ小春にあげようや」



お前フルーツなら昨日からパクパク食べてるやん。好きなんやろ?

そう凛は小春のことを見ながら話しかけている。



「あ、りがと」



少しだけ小春が笑った。

無表情な子が笑うとちょっとドキッとするな。


みんなでデザートのフルーツを小春に渡す。フルーツだらけでいいのかな?と思ったけど、喜んでるみたいだからいいか。


何だか全員いい奴そうで安心したよ。


朝食タイムは平和にすぎた。


でもみんなどこか緊張しているんだと思う。昨日よりも表情が硬いから。



「さーてさて?6人だから…ちゃんとチーム作ったわね?」



言われなくてもそれくらいしているだろうという言い方をする鳴海教官。各々チームのリーダを決めろと言われて、俺らのチームは凛がリーダー。

もう1チームは風太がリーダー。


1番周りをキョロキョロみているのは小春。物珍しいのはわかるけど、見過ぎな?

忙しなく視線を動かしている。確かに……アービターの施設って俺たちのいつもいる世界とは別世界だもんな。


そして辿り着いたのは……未来の世界ではないかというような部屋。



みんなが目を輝かせる中、小春だけが険しい顔をして、何か考え込むような素振りを見せた。



「私たちの世界にこんな物があるわけないだろう」



小さくて聞き取りにくかったが、そう言ったように聞こえる。どういう事かと気になり、小春のことを見ていると目が合ってしまう。


「すごいね」


「え?あぁ。そうだね」


すごいねだなんて顔してないじゃん。でも何も言えなくて同意するしか無かった。小春はそのまま何ともない



「藍斗みろよ!俺たちが動いてるぞ!見ろよ!」



風太は興奮気味に前の白い画面を指さす。そこには何故か俺たちが映し出されていた。

俺たちが動けば目の前の画面の俺たちも動く。


連動してる…



「さっそくだけど、今日から仮想妖魔と戦ってもらう」


「仮想妖魔?」



鳴海教官は腰に手を当てて仮想妖魔という聞きなれない言葉を発した。仮想って本物じゃ無いってこと?誰かが妖魔の動きを真似てくれるのか?



「アービターは最新技術が搭載されている施設だ。この空間では、衝撃はあるが痛みは感じず、血は流れない。そしてリアルな映像の妖魔と戦える」



………ん?鳴海教官が何が言いたいか全く分からない。映像と闘う?イメージがわかず、戸惑う俺たちを見てクスクス笑う。



「まぁ見てな」


そう言って、手元の何かボタンがいっぱいある場所で鳴海教官は機械を操作をしている。

端っこに寄れと言われて6人で下がれば…



「さ、頭で理解するより体で覚えるんだよ」



鳴海教官がそう言うと、不思議な機械音と共に目の前に半透明の妖魔が突然現れた。

みんな目を丸くして驚き、パッと刀に手を添える。


異様な空気が流れ出すが、鳴海教官はニコニコ笑ったまま刀を抜いた。



「妖魔の攻撃を受けてみるから、どうなるか見ておいてね」



刀をプラリと下ろし、戦う気がないと言いたげな鳴海教官は俺たちに話しかける。その後ろで、半透明の妖魔が鳴海教官に腕を振り下ろした。


速い!


振り下ろされた手があたり、鳴海教官の身体は後ろに吹っ飛び転んだ。何をしてるんだよ!



「「鳴海教官!!」」



心配して駆け寄ろうとしたら、ひょっこりと鳴海教官は起き上がる。



「まぁこんな感じで衝撃は来るけど、痛くない。転んだ時の痛みはあるけどね。妖魔にどつかれた傷は全く痛く無いし血も出ない」



確かに爪が当たったはずなのに…?何がどうなってる?なんだよ、この半透明の妖魔は!


だけど……

そう言って鳴海教官は自分の肩を見せてきた。今妖魔に引っ掻かれた場所辺り。



「妖魔に触れられたところはこうやって、赤くなる。血もこれくらい出るって目安だ。これで妖魔と戦う時に、どの部分を触られてしまうのか、自分の動きの癖なんかもわかるんだ」



話が進んでいくが頭がついていかない。

それは皆んなもそう。だってこんな最新鋭の技術を目の当たりにするなんて思ってもなかったし、何一つ理解もできない。


これは一体?



「とまぁ説明はこんな感じ。このスーツを着て?赤くなるのは血の量を示してるから、一定量触れられたり、衝撃を受ければ死ぬってことだからね」



ま、この仮想妖魔に殺されることはないけど。そう鳴海教官は笑った。


まじでなんなの?

父さんもこんな所で仮想妖魔と戦いの練習をしていたの?


みんな戸惑った顔のまま言われるがまま指定されたスーツを着る。軽いな。



「じゃ、まずは風太のチームからいこうか」



鳴海教官に呼ばれて3人が部屋の真ん中へ。

3人とも何もわかってないからだろうけど不安そうな顔をしている。



「死なないから。痛くもないから。貴方達が強いと思う人をイメージして、仲間に刀が当たらないように振りなさい」



じゃ、レッツゴーと陽気な声が聞こえたと共に、下等種の妖魔が現れた。先ほどと同じで、うっすら透けている。


これが映像?でもそこに実体があるように見えるけど。

だって生々しいから。



「2人とも妖魔の動き見ときや。よく分からんけどパターン化された動きしかでけへん可能性があるからかな」


凛はこんなもんあるなら、なんぼでも対妖魔戦の練習できるやんけ。そう呟いた。


俺も思う。痛くないなら、何度でも立ち向かえるじゃん。

それに死なないなら尚更、妖魔に慣れるためにも使えるしこれで練習していけば何か掴めるかもしれない。そう思った。



「……感情は組み込めないだろうから、果たしてこれが、本当に対妖魔戦に役立つのかは分からないがな」


「「え?」」



隣から聞こえた小春の声。でも話し方が…違うし、なんだか的を得ているようなことも言ってるし。



「……ごめん。発言だけ強気にしたら…なんとかなるかなって」



急にしゅんとした顔をする。

小春ってやっぱり二重人格なのかも。


凛も笑っている。



「確かにな。この技術が何かは知らんけど、感情までコントロールできるものはないやろな。小春、お前やっぱ妖魔とやり合ったことあるやろ」


凛はニヤリとした顔で小春のことを見た。


「下等種でも……感情はあるからな。斬れば痛みに苦しみ、傷を庇いながら襲ってくる。俺たちと同じようにあいつらも感じとるねん」


凛は弱い下等種とは何回か戦ったと言ってた。


小春もなんだか刀筋はおかしいけど、時々妖魔に対して恐怖がないみたいな顔になる時がある。


「始まったで」


凛の声で前を向くと、妖魔を3人が囲っていた。


妖魔は暁月を狙う。

暁月は避けたがその手が当たったのか後ろに転ぶ。妖魔が腕を振り下ろした瞬間に、風太と椎名が左右から飛びかかる。


2人の刀はちゃんと妖魔に当たった。だけど、妖魔は苦しみはしたが腕を振りまわしまだ襲ってくる。


そうだ。少し刀が刺さったくらいで死ぬような奴らではない。



「しぶとさも本物なら大変やな」



長引くにつれて体力も奪われて、妖魔の腕や足がみんなに当たり出す。



「真っ赤ね」


小春は3人を見て言った。

本来なら、赤くなった所から血が出ていると言うこと…だよな?

今みんなは痛みがないから動けているけど、実際は傷を負えば動きも鈍り痛みで動けなくなる。


妖魔一匹に、これだけ真っ赤になってたらダメだってことだ。



「そろそろ限界やな。多分出血判定であいつら終わりちゃう?」


凛はなんやおもろい訓練やんと笑っている。

楽しみだけど、なんだか不思議な気持ちだ。



「作戦はどうする?」


「俺が引きつけるよ。凛は狙いに行って。仮想だといっても、血だらけ判定は困るから、小春は様子を見ながら動いて…」


「せやな。小春はちっさいから、妖魔の周りウロウロしてくれたら助かる」


凛と俺の指示に小春はコクリと小さく頷いた。


風太チームは、全身スーツを真っ赤にして妖魔を倒せず終わった。



「だーーーしんどい!!全然倒れない!」


「刀が浅いのかな。ハァハァ。しんど」


「む、りだ」



3人とも酷く疲弊している。下等種1匹にこれだ。俺たちは下等種くらいスムーズに倒せるようにならなきゃいけない。



「風太、お前が1番くらっとったで?」


「うるさいなー!次は半分くらいしか赤くならないようにするもん!」


凛にお前も真っ赤になるなよ!と風太は笑って話している。

楽しそう。

疲れてるけど風太たちは楽しそうだ。


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