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奇妙な信頼関係

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藍斗が黒い機械に気が付いたのか一つ壊してくれた。これでモニターは真っ暗。見られている気配はなくなった気がする。


2人を生かすには、この妖魔を倒さなければならないが数えきれない量が天井にへばりついている。


右手じゃ厳しい。

でもとにかくやるしかない。



「妖魔達が私の方へ集まるようにしてくれ」


『そんなお願いしてくる奴いないぞ』


「ふざけてる場合ではない。できるのか?できないのか?」



こんな数の妖魔が一斉に各々違う動作をすれば、私が困るんだ。私を狙ってくれる方が戦いやすい。



『妖魔を引きつける方法がある。だけどお前が生き延びれるかは怪しい』


「大丈夫だ。私は死なないから」



妖蛭の溜息が身体中に響く。そんな大きな声を出すなよ。



『お前が死んだら俺も死ぬ』


「分かってるよ。でもこの妖魔を倒して鳴海と話さなければいけない」



鳴海から……



「鳴海から妖畏の臭いがする。妖畏と近い存在の可能性がある」



私たちの復讐の相手だ。



『……小春は俺を、信じるか?』



妖魔から信じるか?なんて言葉が出てきて誰が信じると言うのだ。でも私は普通の人間とは違うからな。


妖蛭も、普通の妖魔とは違うから。


こんな言葉妖魔に対して使いたくもないが、妖蛭ならいいと思える。



「私は……妖蛭、お前を信じるよ」



そう言うと、全身が熱くなる。

馬鹿な妖魔だよ。なに喜んでるんだか。



『お前の望む通り俺の力を使って、ここにいるかなりの数の妖魔がお前だけを狙うようにしてやる。だからお前…小春は…』



俺を信じて進め


本当にふざけた運命共同体だよ。

これで力が湧く私もどうかしている。


2人の元に行き伝えた。あまり見えないように闘うつもりだが、2人には私の姿が見えるかもしれない。


妖魔よりも怖がらせてしまうかもしれない。



だから……

もし生きていたら、どうか私のことをなにも聞かないで欲しい。こいつはバケモノだと思ったら、静かに距離を置いて欲しい。


答えられないから。


だから静かに私の元を去ってくれればそれでいい。


戸惑う2人に説明をしてやりたい気もするがそんな暇もなく、そろそろ時間だ。


妖魔達のジュルリと舌を鳴らす音が私には聞こえる。



妖蛭いくぞ



『……あぁ』



刀を構えれば、天井に張り付いていた無数の妖魔が一気に地へ降りてくる。



藍斗



「死ぬなよ」



いくら妖蛭がそうできるからと言って、確実に私を狙うとも限らない。1匹くらい漏れて2人の元に来てしまうかもしれない。

でも2人なら…2.3匹くらいならやってくれるよな。


妖魔の大群の中に突っ込む。



「妖蛭、出番だ」



これで2人からは姿は見えないから、私の愛用している刀を左手で引き抜き、周りにいる妖魔達に回転しながら斬りつけた。



『見事だ』



その一振りで6体一気に灰になる。

弱点を感じることができる。

崩れ落ちていく妖魔をみるのは快感だな。


私の動きに合わせて妖蛭が舞う。


6匹一気に倒したと言うのに、山のように湧いてくる妖魔。お陰様で2人には姿が見られなくて……有難いよ!!!!刀に力を入れれば肉の裂ける感覚が伝わる。



『舞え、小春』


「バカ言え。私の動きに合わせてお前が舞うんだよ」



心を無にして斬る。なんだかとても調子がいいな。


勝手に妖魔の血を吸っているからか、妖蛭も変わらずついてくる。



ただ私にだって限界というものがある。私も人間の部分の方が多いからな。普通に怪我をすれば痛いし血は止まらないし、バケモノみたいな身体能力があるわけでもないから。



『なんだ?もう限界か?』


「うるさい。お前の動きが鈍くなった」


『俺はお前の身体に宿るんだ。俺が鈍くなったのはお前が疲れているせいだ』



なるほどな。言ってくれるよ。

本当にこいつとは、どれだけ戦っても毎回言い合いになるな。



「妖蛭」


『なんだ、小春』



「生きて、妖畏にたどり着くぞ」



8年か。

もう8年も共に過ごしている。

こいつが妖魔だとか、前妖魔王だとかどうでもいい。


ある意味愛着が湧いている。



『あぁ。2人で…妖畏を殺そう』



こんなふざけた関係では考えられない絶大なる信頼感がある。それは互いにだ。



「これでもし生きていられたら、お前のことを少し教えてくれ」


『………生きていたらな』



あぁ、それでいい。生きていたら…はなそう。生きていたらなんて曖昧なことを言うのには訳がある。


流石に疲れたんだ。

血を流しすぎた。


傷が痛いな



『首の傷……長引けば致命傷だ』


「長引けば、ね」


『お前の傷の修復に力を回す』


「いや、待て。今この状態でお前の力を傷の修復に回せば、まだ妖魔が沢山いるから……それが藍斗達に向かうのは困る」



妖蛭は今自分の妖力を、妖魔を私に引きつけることに使っている。

もし妖蛭が私の傷の修復に力を回せば……途端に妖魔達は各々動き出し、藍斗と凛のところへ向かうだろう。


だから……



「せめて残り2体まで斬りたいな…」



そうすれば2人なら大丈夫だと思うから。


そして2人の姿が見えた。

戦っている。

恐ろしくて動けなくなるかと思ったのに。強いな、あいつらは



『御人好しで死んだら意味ないぞ』


「御人好し?馬鹿言え。そんな人間みたいな感情で私は動かないぞ」



2人の姿が見えたからな。

右手を使うか。



『今まで出会った人間の中で、お前は1番人間らしいよ』


「慰めているのか?そんな事はどうでもいい。茶番に付き合え。お前を右手で使う」


『おいおい…下手くそは嫌いなんだが』



5日間右手だけで刀を振ってきたんだ。少しは慣れたよ。少しな。


妖蛭は文句をいいながらも妖魔を斬っている。


右手も上手くなったものだな。



『調子に乗るな!俺がお前の刀を安定させているんだ!』


「器用だな。私はちょっと血が足りない。お前で頑張ってくれ」



そろそろ立っているのがやっとだ。言い返す気力も無くなって来た。

離れたところで藍斗の声がする。


バカだな


私なんかを助けようとするなんて。


御人好しばかりだ。



「『そんな人間が好きだ』」



ふん。

相変わらずいいところで被せてくる。


この場に残る妖魔は5匹。

妖魔の残骸で山ができているからその残骸を踏み、次の妖魔を倒す。



「あと3匹倒したら傷の修復に回ってくれ」


『……手遅れじゃないといいな』



はは…

本当だよ。首が痛くて仕方がないよ。


はじめてだ。この数の妖魔を相手したのは。

色々仕組まれている気がするが、今はどうでもいい。後で考える。


これだけ妖魔がいても全部自分を狙ってくるなんてことがなかったから…

私もまだまだだと思い知らされたよ。まだまだ弱い。

こんなのでは妖畏に勝てない。



『血が流れすぎだ。少し傷を修復する。じゃなきゃお前が死ぬ』



くそ…

フラフラでなにも考えられないし、いつもより早く息が荒くなる。


最後の一振り。

そう思ったが視界に藍斗が入った。藍斗は妖魔の死骸に足を取られて身動きが取れずにいる。


今妖蛭は私の傷を治している。



私を襲わなくなった妖魔は近くにいる藍斗を視界に捉えて迷う事なく藍斗に向かう。クソッ



刀を左手に持ち替えて藍斗の方に飛び込んで周りの妖魔を2匹斬る。死ぬぞ、こっちも!


そしてもう一振り


妖魔の腕が飛んでくる。


刀は2匹の妖魔を斬って、弧を描くように流れている。この刀を戻してこの攻撃を防ぐには時間が足りない。


動かない頭の中で必死に考えた。



『右をつかえ、小春』



なるほどな。お前はさすが前妖魔王。闘い方がすごいよ。


空いていた右手で訓練用の刀を引き抜き妖魔の腕をガードする。


切れ味が悪い。ガードする事で精一杯だ。でも時間は稼げた。

そのまま右手を動かし、トドメをさす。



クソ

冗談抜きで死にそうだ



『おい、塞いでるところなんだから無茶をするな』



うるさいな。あぁ、でもこれは本格的にヤバいかもしれない。視界が白くなると危ないんだよ。


自分の身体が赤い。



そうか。妖魔の血よりも、自分の血の方がついているな。まだ私の血は…赤かったか。

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