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異変

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要するに、何かあれば一緒にアービターを潰してくれ。

そんな突拍子もないことを刀を肩に乗せて笑って小春は言うんだ。


アービターを…潰す?



「「は?」」



凛と声が重なり、それを聞いて小春は笑う。

何を…言ってるんだよ。


小春は時々俺たちが知らない何かを知ってるみたいな話し方をするんだ。


聞きたいことがある。

聞いたらダメだと思って聞かなかったし、きっとみんなお互い踏み込まれたくない領域があるだろうから。


小春はどうして現妖魔王を探しているのだろうか。いや、アービターの人達も、現妖魔王のことは探してるんだろうけどさ?小春のことが少し気になる。


1人でなんでもしてしまいそうだから。だからこそ、強くてそして危うい。



小春に問いかけようとした時、けたたましい音が鳴り響く。聞いたこともな音。



ビーーービーーー


「なんや、この音」


警報器のような音が鳴る。

この地下の空間全部に響く音は、反響して耳が痛くなるほどの音。



凛と小春の近くに寄り、3人で固まる。なんだ、これは。



すると近くにいた小春はハッと声を出して、刀を持って突如走り出してしまう。



「おい、小春!離れんな!」



単独行動は危険だ。何かがおかしい。そんな雰囲気がするんだ。

小春はどこかに行こうとしているのかと思ったが違う。小春はこの訓練所の空間の角に向かって走っていっている。


そして刀を振るい、何かを壊した。


え?


そして違う角に走りまた同じように何かに向かって刀を振り下ろしている。



「あいつ、おかしなったんか?」


「……分からないけど…」


小春はこの空間の4隅に何かあるのか、順に刀を振っている。何かを壊してるんだと思うけど。


1番近くの角を見てみる。


そこには黒い何かが壁についている。これはなんだ?そう思った時に気がついた。


俺たちが角に近づくと、モニターに映る自分の顔がアップになった。


なるほど?この角に何かがあって、俺たちがモニターに映し出されていると言うことか。

そして……小春はこれを壊したいんだな?



「藍斗!何しとんねん!」


「分かんないけど、小春がこれを壊してるから」



これを壊したらどれだけ弁償だとか、そんな事は今は考えていなかった。


ただ小春の空気が変わったから。

たまにピリピリしてる時はあるけど比べ物にならないくらいの殺気を感じた。

何に対しての…殺気かはわからないけど。


今だに警報音は鳴り止まない。頭まで痛くなるような音だ。


3つ壊し終えた小春が近くに来て耳元で囁いた。

なんだって?


聞き間違えか?





「妖魔がいる」



小春は真剣な顔でそう言うのでバッと周りを見るが何も居ない。どこだ?

だけど小春は俺たち2人を守るように後ろに下がらせる。


何がいるんだ?小春に何が見える?



小春が壊した黒い何かは粉々になっている。だからモニターに俺たちは映らなくなった。どうして小春はそうしたかったのか。


そんなことを聞く暇もなかった。



「殺そうと思うな。命を守ることだけ考えろ。そして出来るなら……これが終わり生きていたら、私のことについて何も聞かないでくれ」



何故か眉を下げて切なそうに小春が笑った。


意味がわからないよ。

何も聞くなってどう言うこと?生きていたらって…何?


凛と俺はよくわからない状況で、どうして刀を握らないといけないのかと、混乱していた。

だってここには俺たち以外何もいないから。


だけどすぐに分かったんだ。

もう取り返しのつかないような事になっていると。




「2人は必ず近くで戦え。無理だと思っても、私たちの寝泊まりする方の広間には行くな」



そっちの方がうじゃうじゃいる。


小春はそう言って刀を頭の上で、ガードするように構えた。




「上だ」



ギィヤァァ

と音にもならないような妖魔の呻き声が突然頭の上で聞こえた。


気づいた時にはもう、妖魔は小春の刀めがけて腕を振り下ろしていた。



上?


おそるおそる上を見れば……




「これ……無理やろ」



天井に張り付くように妖魔達が蠢いている。

妖魔がいると分かった瞬間から、悪臭が漂い、あちらこちらから奇声が聞こえる。



死ぬなよ。


それだけ告げて、天井から降りてきた妖魔の大群に小春が突っ込んでいく。


無茶だ

数えられないくらいの量がいる。


一瞬死を覚悟したが、おかしなことが起こっている。



なんで?



「妖魔、小春のこと狙ってる?」



何故か意思をもって小春に攻撃を仕掛けている妖魔達。俺たちの方は一切見ない。


妖魔同士の攻撃が当たり、あちこちで呻き声が聞こえ耳が痛くなる。



妖魔に紛れてしまった小春の姿が見えない


見えないけど……



あそこで戦ってる。

あの唸り声が集中している場所。あそこに小春がいる。


よくわからないけど……助けなきゃ。




「おいおい待てって!!死ににいくんか!」


「違うけど。でも、小春1人でなんて無理だよ」


「俺らが行ってどうにかなる訳ちゃうやろ!」



そんなの分かってる。だけど、何もしないで死ぬより何かした方がいい。



「小春は仲間だ。助ける」



凛の方が正しい。何故か妖魔は小春を狙っているから、逃げようと思ったら逃げられる。だけど……もう逃げるのは嫌だ。



これで死んだらお前ら2人、あの世でどつき回すからな!と凛は怒鳴り、もうヤケクソじゃと妖魔の群れに斬りかかった。


妖魔の群れに近づいてわかったのは、かなり量が減っていると言うこと。

俺らが斬りつけても、妖魔はこっちを向くことさえせずにひたすら小春を狙う。なんなんだよ。


そしてその妖魔の中心



小春は血だらけで妖魔の残骸の上に立っていた。



あれ、なんだろう。

どこかでこれと同じような感覚になったんだけど。


なんだ、この妙に血が沸き立つ感じは。


小春を次々と妖魔が襲う。妖魔がたくさん覆い被さり、小春の姿はすぐに見えなくなったが分かる。


小春は……妖魔を斬り続けている。


1匹こちらにフラフラと歩いてくる妖魔。


凛と2人で囲う。


仮想妖魔じゃない。これは本物だ。

ベタベタと異様に光っている皮膚は、筋肉が浮き出て気持ちが悪い。

向かい合っただけで吐きそうだ。



「訓練しとんねん。負けてたまるか!」



凛の動きに合わせて妖魔に斬りかかる。

俺の最近の強い人のイメージって、小春なんだよな。


身近にいる人だから余計イメージが湧く。

小春の動きがよくわかるんだ。


ただ無心に斬りつけた。

今まで当たっても衝撃だけだったその妖魔の腕も、何もかも……痛い。


血が出ている。自分の血なのか妖魔の血なのかわからない。


「あ。やばい」



残骸の妖魔に足を取られて転んでしまう。



やばいと思った時には遅かった。恰好の餌食だと思ったのか、小春を狙わなくなった3体の妖魔が口を開いて飛びかかってきた。


くそ、足が抜けない…



くそっ!!!

終わりだと悟ったが身体に痛みは感じなかった。それよりも優しい温かい声に包まれた。



「ハァ…ハァ…怪我はない、か」


「小春…」



離れていた場所に居たはずの小春が、息を荒げたまま2匹の妖魔を一太刀で真っ二つにして、残り1匹の妖魔の腕を……刀で受け止めた。


両手に刀を持ってる?



「凛のそばを離れるな」


小春は。すぐに鞘に刀を戻していつもの刀で、トドメを刺すために倒れた妖魔に突き刺す。その妖魔は灰となって消えた。


小春……?



なんだか自分がたった今死にかけたと言うのに、小春の動きが凄すぎて魅入ってしまっていた。


そうか、そうだ。



小春は……あの兎の面の人と雰囲気が似ているんだ。この一瞬で目を奪われる動き……


あの人みたいだ。


そして気がつけば妖魔は2匹だけ立ち上がっている。その1匹を凛が相手をして、もう1匹はすでに小春に斬られたのかフラフラとしている。


あんなに居たのに…



「こ、小春!血が…」



そして気が付いた。小春の首や腕、脚から血が出ている。妖魔の血ではなく、小春自身の血。

怪我とかのレベルじゃない……


首の傷が痛いのか、小春は舌打ちをして首を押さえたままフラフラしている。

首って、やばいじゃん。



「こっちで手当てしよう」


「これくらい…大丈夫だ」


「そんな訳ないだろ!」



手ぬぐいを渡して傷を抑えさせる。そこまで深くはないのか?だけど、血が止まらない。


小春は……この数の妖魔を1人で相手したの?


訳が分からなくて正常に頭が働かない。考える時間も与えてくれない。小春は一体……



「何も言わないで」



俺が何か言う前に、小春にそう言われて本当に何も言えなくなった。あまりにも悲しい顔をしていたから。


応急処置だがこれで出血は少しだけマシになる。でも危険な状態だ。



「少し…5分…いや、3分時間が欲しい。まだ妖魔の気配がある。でも私は休憩したい。そうしたらまた戦えるから。このままだと集中が切れる。だから……」



休憩ね。してよ。俺たちで頑張るから。



「わかった。5分くらいなんとかするよ。俺たちを信じて」



自信も何もないけど、そう言わなきゃ小春は不安で休憩もできないだろうから。

俺の言葉に安堵したのか、その場にしゃがみ込んで妖魔を背もたれにし、小春は目を閉じた。


動き出したりするとか思わないのかな…?大丈夫だよな?


普通の人の思う休憩とは少し違う。

目を閉じて何かを瞑想するようにスーッと大きく息を吐く。


唇が少しだけ動き、ブツブツ何かを呟いている。まるで誰かと会話しているよう。




「藍斗!サボんな!」


そうだったね。

今は小春の集中を切らさないように守らなきゃ。俺たち2人で。

小春がしてくれたように。



正直、俺たちの知ってる小春は、こんな数の妖魔を倒す事はできない。読みもすごいし動きもすごいし勘だって冴えてる。それは知ってる。


だけど、妖魔を殺すパワーが足りていない。根本的な力が。


なのに…ここに転がる残骸は、小春が殺した妖魔だ。なんなら弱点をつきまくって灰に変えている。残骸の数もかなり少ないからだ。それはほとんど消したということにつながる。


色々聞きたい事はあるけど、そう言う事だったんだろうなって思った。


これが終わって生きていたとしたら、何も聞かないでくれと小春が言った。

俺たちが疑問に思うことを、ぶつけないでくれって事なんだね。疑問に思うよ。色々思うよ。


でも女の子にあんな顔されたらね……


俺は何も言わないよ。



「生きてたら絶対小春に全部吐かしたんねん!」



凛はそう言ってるけど優しいからね。小春の顔を見たら絶対何も聞けないよ。俺たち2人でモヤモヤするしかないよ。


でもそれでいい。

あんな小さな体に何を抱えているのかは分からないけど……小春が仲間なのに変わりはないから。



「俺は、凛と小春と一緒に、アービターでチームを組みたい」


「お前、呑気なこと言うてんな!妖魔おるんやで」


「うん、そうだね。きっとこれから先も、こうやって3人で肩を並べて戦うと思うよ」


そうであって欲しいと思う。

1人も欠けずにこの世界で生きることができたらなって思うんだ。



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