第1話 消えたい
キーンコーンカーンコーン
「チャイム鳴ったぞ席着けー」
ざわついているここは、どこにでもあるような普通の高校。
先生の少ししゃがれた声だけがよく聞こえた。
「ほらそこキャッチボールやめて席につけー」
教室でキャッチボールをしているのは高木亮介と八島準。まぁいわゆる不良ってやつだ。
「はーい!」
「準! そろそろあいつ怒りだすから座ろうぜ」
「おう」
いつものうるさい光景。
そんななか僕はいつもひとりだった。
僕の名前は西山夏輝。高校2年になったばかりの男だ。この女みたいな名前と華奢な体と性格のせいで小中高といじめられていた。
「西山ー聞いてんのか西山ー!」
「なつきちゃん呼んでますよー」
「ギャハハハ」「クスクス」
これも日常だ。
昼休み僕は屋上に行く。1人で食べるご飯は美味しいから。
高校に入ってすぐの頃たまたま見つけた屋上のカギ。
このカギのお陰で僕はなんとか学校にこれている。
誰もいない世界。外の声が遠く聞こえる、まるで本当に別の世界にいるようなそんな場所。
ここにいるときだけが僕を生かしてくれていた。
「そろそろ戻らないと」
誰の気配も無いことを確認して、素早くあのくだらない世界に戻る。
「なつきちゃーんまたトイレで1人でご飯ですかー」
「また女子トイレかなー」
「クスクス」
またこの流れか。よく飽きないな毎日。僕がいつも昼休みにいなくなるから、どこにいるのか探した事があるらしい。
もちろん立ち入り禁止の屋上はバレるはずがなく、男子トイレにもいなかった事から、女みたいだし女子トイレだって結論になったようだ。
浅はかな奴らで助かった。あの場所だけはなんとしてもまもらなきゃ。
キーンコーンカーンコーン
よかった助かった授業がはじまる
ん? はじまらない? なんで?
「なつきちゃんどこにいたの?」
「今日こそ教えてよ」
「なにキョドってんの?」
「あーこいつ授業はじまって逃げれると思ったんじゃね?」
「えーそーなの? なつきちゃん」
そー言ってニヤニヤしながら八島は黒板を指差した。
自習……
「わかった? 今日は逃がさないよ。どこにいってたのかなー?」
「僕達クラスメイトだろ? 教えてよ」
なれなれしく肩をくまれた。誰も助けてくれない。いつものように皆笑ってる。
「トイレにいました」
こういえば済むと思ったけど甘かった。
「ふーん」
「クラスメイトに嘘つくんだ?」
「傷ついたなー」
「トイレにいなかったよな?」
「なー女子トイレもいなかったんだろ?」
「全部見たけどいなかったよ」
その瞬間、僕には何故か天井が見えた。
椅子ごと後ろに倒されていた。
「俺の友達傷つけたら許さないよ」
「ウッ!」
八島がお腹に思い切り乗っかってきた。横からは高木に何度も蹴られた。
他の皆はかわいそーと言いながら笑ってる。動画をとってるヤツまでいる。
「ねー教えてくれれば許してあげるから、早く言いなよ」
お腹の上でジャンプしながらそう言われた。
それでもあの唯一の安全地帯だけは、教えてはいけない。あそこがなくなってしまったら、僕はもう生きていけない…………死にもの狂いで守らなければ。
僕は天井を見つめながら、彼等が愚かな遊びに飽きるときを待っていた。
「良いこと思いついた」
高木がこういう時はだいたい最悪だ。
「なつきちゃんが男か女かはっきりさせようぜ」
八島はすぐに意図を理解したようで、楽しそうに笑いながら僕に座った。
「さーどっちかなー!俺は女に賭ける!」
こんな言葉も聞こえてきたが、僕はお腹に乗られた痛みで何が起きるか考えられず、そのまま天井を見つめていた。
すると突然天井が見えなくなった。
その瞬間叫び声が聞こえた。
「キャーーーー!!」
そして高木の声が耳元で聞こえた。
「さぁどっちだ!?」
僕は後ろから高木に羽交い締めにされ、立たされていた。
まだ女子が騒いでいる。
高木に抑えられてるから下を向けないが、多分ズボンとパンツをおろされている。
みんなに見られた。みんな笑ってる。
一ヶ月前八島に無理矢理告白させられてフラれた、昔から好きだった綾瀬さんも顔を赤くしながら笑っている。
そのまま僕は目の前が見えなくなった。段々と消えていく彼女を見つめながら。
ーーーここは………保健室か?
僕の気配を感じてか、先生が声をかけてきた。
「君気を失っていたんたけど、何があったか覚えてるかな?」
僕はあまりの恥ずかしさとストレスで気絶していたみたいだ。
「いや覚えてないです」
というか忘れたい。
「そう? 体調悪かったのかもね。まだ授業あるけどもう少し休んでいく?」
誰も僕の事は本当には心配なんてしてくれない。
「大丈夫です」
僕はそのまま屋上に向かった。
保健室の先生が言うには、あまりに騒がしかったから隣のクラスの先生が注意しにきて、僕が倒れているのを発見したそうだ。
そのおかげで屋上の鍵は取られなかったみたいだ。
屋上の鍵をあけ、中に入りしっかりと鍵を締めた瞬間、僕は泣いた。
下の階にいる人に聞こえてしまうんじゃないかというほど泣き喚いた。もう僕は教室にはいけない。
大人は親も先生も、みんな僕の事は邪魔なんだ。クラスの奴らも助けてくれない。笑われた。
高木や八島は直接いじめてきてるだけでクラスの奴らも見てるだけならいじめてるのと一緒だ。先生も親もみんなそうだ。
僕は世界からいじめられている。
こんな世界からはいなくなろう。
その結論に辿り着くのに時間はあまりかからなかった。
ちょうどここは屋上だ。ここから飛んで終わらせよう。泣き止んだ僕は少し晴れやかな気持ちで屋上の端に進んだ。
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