(なろラジ冬童話朗読作品)バクのテイパーとにんげんと友だちになりたいオバケ
すっかり夜もふけちゃって みんなすっかりゆめのなか。
まっくらな町にお月さま一つ。
しずまりかえったその中で
バクのテイパーはおきだします。
ゆっくり町を歩きながら バクのテイパーはおはなをすんすん。
「おやおや。こわいゆめのにおいがするぞ」
テイパーが向かったその家には4歳の女の子ふみちゃんがゆめにオバケがでてきちゃってないています。
「いくかー」
テイパーは口から大きくいきをはくと、とび出たはなからいきをおもいきりすいこみました。
するとどうでしょう ふみちゃんが見ていたこわいゆめはあっというまにきえてしまいました。
どうやらすやすや、ゆめもみないでねむっているようです。
しゃりしゃりしゃりしゃり
テイパーはふみちゃんのこわかったきもちをかみくだくとぺっとなにかをはきだしました。
はきだされたのはふみちゃんのゆめに出てきたオバケ まっ白なシーツをかぶったようなオバケです。
オバケはなにがおこったかわからず、ぼうぜんとしています。
「さてと」
テイパーはオバケを見るといいました。
「なんであんな小さな女の子のゆめのなかにはいっておどかしたの?」
われにかえったオバケはあわててくびをふります。
「ちっ、ちがうよ。おどかすつもりなんかなかった」
「ならどうしてあの女の子はこわがっていたの?」
「ぼくはあの女の子と友だちになりたかったんだ。でも、あいさつしようとおもって近づいたらなかれちゃったんだ」
「ふーん」
テイパーはオバケをもういちど見るとうなずきました。たしかに白いシーツをかぶったようなオバケが近づいてきたら小さな女の子はないてしまうでしょう。
オバケはかなしそうな顔をしています。どうやら友だちになりたかったというきもちはほんとうのようです。
「オバケちゃん。きみはゆめのなかのそんざいだからすがたはじゆうにかえられるんだよ。ただ友だちになりたいってだけではなくて、どうしたらあの女の子に友だちになってもらえるか、かんがえてみたら」
テイパーのことばにオバケは大きくうなずいたのです。
こわいゆめを見ることがいやでお母さんにいわれてもなかなかねなかったふみちゃん。
でももう、お母さんに言われる前にねるようになりました。ゆめのなかでお友だちに会えるからです。
お友だちはあるときはピンクのうさぎ、あるときはまっ白なこねこ、またあるときはふみちゃんとおなじくらいの女の子。
みんなあのオバケがどうしたらふみちゃんとなかよくなれるか、かんがえてすがたをかえたのです。
でもある日、オバケはうっかりして白いシーツをかぶったようなすがたでゆめにはいってしまいました。
ふみちゃんは、ないたでしょうか?
いえ、なきませんでした。そして、こういったのです。
「こわくないよ。だっていつもゆめにきてくれるお友だちでしょう」
こんどはオバケがないてしまいました。うれしかったのです。
「さあて」
ふみちゃんの家の外でテイパーはつぶやきました。
「ここでのおしごとはおしまいと。おやおやこんどはこっちからこわいゆめのにおいがするぞ」
テイパーはゆっくりとこわいゆめのにおいがするほうにあるいていくのでした。
おしまい