表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

タナベ・バトラーズ レフィエリ編 (完成版はタナベ・バトラーズシリーズへ移動)

【タナベ・バトラーズ】未来を創る者、新女王フィオーネ

作者: 四季

 その日はついにやって来た。

 そう――フィオーネがレフィエリの主、女王となる日だ。


 レフィエリシナからフィオーネへ、歴史は受け継がれてゆく。その瞬間を見届けるべく、会場には多くのレフィエリ国民が集まった。ちなみに、集まった国民のほとんどがフィオーネらと同じ灰色の肌を持つ魚人族の末裔である。


 会場は神殿からそう遠くない広場だ。


 その日は快晴だった。フィオーネの、レフィエリの、新たな始まりを祝うかのような空模様。降り注ぐ日射しは包むような穏やかさと柔らかさ、まるで女神が微笑みながら未来を創る者たちを見つめているかのよう。


 今日のために設置された台の上、向かい合うレフィエリシナとフィオーネ。


 二人は母娘のような関係だが、それはあくまで日頃の関係だ。

 今は、人々の上に立ってきた者これから人々の上に立つこととなる者として、その場所に立っている。


「フィオーネ、貴女に、レフィエリの主――女王の位を捧げます」


 レフィエリシナが静かに言葉を発した。それを合図として、フィオーネは深く一礼する。そして、前もって指示されていた通り、流れるような動作で片膝を立てる形で地面に座る。座るといっても、地面には片方の膝だけをつける形での座る、だ。


 レフィエリシナの手には、レフィエリの主である証ともいえる飾りが乗っている。


 ホタテガイを連想させる物体の左右からレフィエリシナらの耳に似た突起が飛び出ているそれこそが、この地の主である証なのだ。


 それは、レフィエリシナが長年身につけていたものだ。

 けれどももうじき彼女のもとから去る。


 そして、未来へ、未来を創る者へと――手渡されてゆく。


「聖地レフィエリのため生きることを誓いますか」

「はい」


 レフィエリシナの淑やかな問いに、フィオーネは一言分かりやすく答える。

 フィオーネは片膝をついて座った状態のまま、手のひらを上にして両手を頭上に掲げる。二つ並んだ手のひらに、レフィエリシナが証を乗せた。

 新たなるレフィエリの主が誕生した瞬間だ。


「今この時をもって、フィオーネをレフィエリの主とします」


 レフィエリシナが宣言する。


 フィオーネは心臓が激しく鳴るのを感じながらも両手を胸もと辺りにまで下ろした。


 やがて、拍手が広がる。

 大声はない、それでも、手と手がぶつかる軽くとも温かな音が空気を揺らした。


 それは、新たなる統治者の誕生を祝福する音。

 新女王の誕生にあたって皆から批判の声を投げられることはなかった――そのことにフィオーネは安堵していた。


 フィオーネが平静を保ちつつ立ち上がれば、右肩にかけた緋色の布が風を受けてなびいた。


 心を新たに。

 今、ここから、フィオーネの女王としての道が始まる。


「おめでとうフィオーネ」

「ありがとうございますお母様」


 改めて見つめ合う二人。


「貴女の行く道に幸福と繁栄があることを願うわ」

「レフィエリのため、お母様のため、私は生きます!」



◆終わり◆

挿絵(By みてみん)

↑フィオーネ


挿絵(By みてみん)

↑レフィエリシナ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ