浮気はやられてもやるな
活動報告にも書きましたが、週一投稿をやめようかと思います。
理由なんですけど、誠に勝手ながら私自身執筆意欲が湧かず、特に話が思い浮かばなかったりするからです。
行き当たりばったりで始めてしまったのが原因なのかなぁと思ったりしてます。本当にすみません。
ただ、執筆自体は続けるつもりなので、読んでいただいてる方には気長に待っていただけたらなと思います。
とりあえず一旦は私が他に投稿している「悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました」を完結させるまでは不定期更新とさせて頂こうかと思います。
週一投稿を約束しておきながら、申し訳なく思いますが、これからもよろしくお願いします。
要約 週一投稿→不定期投稿に
「クロエちゃん! 今度こそ俺とパーティ組まない? あっ、もちろんノエルちゃんと「もう組んだ」一緒でもいいからさ…………は……?」
「今なんて」
「もう組んだ」
「も、もっかい言って?」
「もう組んだ」
「はぁぁぁぁぁぁ!? 嘘だろぉぉぉぉぉぉ!?」
「いやホント」
このうるさい男の名はアルト=ゲスイヤー。
西の国トスェウに召喚された西の勇者で、クロエのことをしつこくパーティ勧誘してくる男でもある。「俺はハーレムパーティを築くんだー」なんて言ってソロで活動してる女性を片っ端から勧誘している男だ。女性の間では下心丸出し男として知られ、新人冒険者でもその名を知るほど(勇者であるということで認知度が高いせいでもある)であり、女性を勧誘するたびに「キモい。しね」「あっ、こんなところにゴミが落ちてますわ。お掃除致しませんと」などと言いたい放題言われている。
元男であるクロエは、下心丸出しなところはどうかと思うが、気持ちも多少はわかるし、流石に可哀想だったので、勧誘された時はキッパリとは言わず、嫌味も言わずにやんわりとお断りしていたのだが、そのせいか、しつこく付き纏われるようになったのだ。
ちなみにノエルも同じ勇者だからという理由でアルトに対する扱いは丁寧である。まあ案の定そのせいでクロエ同様アルトに付き纏われるようになってしまったのだが。
「久しぶりに西の国に来たと思ったらこれだ………ちなみにパーティメンバーは? ノエルちゃんとか? なら俺も一緒に…」
「優斗のパーティだけど」
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“」
なんだこいつ。うるさいな。
「クロエちゃんは違うと思ってたのに………どうして……いや、あの変態野郎がクロエちゃんを騙してたぶらかしたんだ。そうに違いない!」
「いや、別にたぶらかされてないけど。どっちかって言うと優斗じゃなくてアンジェにはめられたっていうか……強制的に入れられたっていうか……」
「強制的に入れられただって!? なんて卑劣な男なんだ剣崎優斗! 今までもそうやって女性達を侍らせて来たんだな!? 許せねぇ!!!」
「いや別にそんなこと言ってな「クロエちゃん! 俺が一緒にあのクソ勇者に直談判しに行ってやるよ!」い……」
この男、多分自分に都合のいい情報しか耳に入らないようになってると思う。
「あのところでばあさんや」
「どうしたのかねじいさん」
「ノリいいねクロエちゃん。そういうところ好きだよ」
「アッハイソウデスカ」
好きだとかどうしてこうも軽々しく言えるのだろうか。チャラいぞ。
ていうか質問したかったんじゃないのか。
「んで聞きたいことがあるんだけど」
「何なりとどうぞじいさん」
「あっいやそのノリはもう大丈夫だよ。あの、エレナさんとかって実際あのクソ勇……優斗君のことどう思ってるのかな?」
もうほぼ聞こえてるしさっきまでクソ勇者って呼んでたんだから今更呼び方を変える必要はないだろうに。わざわざ呼び方を変える必要があったんだろうか。
いや多分こいつなりに女の子に嫌われないように努力してるんだろうな。
………なんか可哀想に思えてきた。
「エレナさん達が優斗のことどう思ってるか…? 本人達から直接聞いた方がいいと思う。それに私が勝手に口にしていいことじゃないと思うし」
「そこをなんとか……!」
「そういう仕草してるとモテなくなるよ」
「くっ! それでも俺は…!」
「しつこい。ていうか見てて分かるでしょ。好意ダダ漏れだし」
「うっ、まあそれは確かに……」
もしかしてこいつ、本気でハーレムパーティを作ろうと思ってるんだろうか。
多分一生叶わぬ夢だろうな。あったとしても何かの間違いで精々1人が好いてくれるくらいなんじゃないだろうか。いや言い過ぎか。
「まあでもマコとかは優斗のことお兄ちゃんみたいに思ってる節があるから、多分優斗に惚れたりとかそういうのはないと思う」
「あーいや。マコちゃんね。うん」
この歯切れの悪さ、多分マコの本性を知ったんだろう。確かにあれを見るとマコを知らない人間からすれば関わりたくないと思うだろう。この世界には厨二病という概念がないから尚更だ。
「ところでクロエちゃんは……?」
「別に優斗のことはなんとも思ってないけど、だからといってアルトが好きだとかそんな感情も一切ないよ?」
「なるほど……! つまりまだ優斗のハーレム要員にはなりきってない……! チャンスはまだあるってことだな!」
「ないよ」
一見かなりポジティブに見えるこの男だが、こう見えてかなり病みやすい。
いや本気でハーレムパーティ作ろうと考えてる部分はどうかと思うが、正直凹んでるところを見ると可哀想になってくるのだ。クロエとしては元男なこともあって同意できる部分はあるし、アルトのことは言う程嫌いじゃない。ノエルは嫌っているが。
「後はノエルちゃんか……他の女の子は俺のことゴミを見るような目で見てるけど、あの子はちょっと違うんだよね。対応も優しいし、勧誘したらパーティに入ってくれるかな…‥?」
「あはは……まぁがんばえー」
ノエルがアルトのことを嫌っているなんて言えば、間違いなくこの男は発狂するし、多分また病む。それに、ノエルだってアルトと良好な関係を築き続けているのだ。いくら内心では嫌っているとはいえ、それをクロエが告げ口してノエルとアルトの関係を破壊するのは良くないだろう。なのでクロエは適当に誤魔化した。
「クロエちゃん……」
急にアルトが真剣な表情になり、俺の手を包み込む。
え? なにこれ?
「俺と………結婚を前提にお付き合いしませんか!?」
……………………………んー?
あー………………………………
え?
あ……
「うぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
「へ、返事は今じゃなくていいから!」
「え!? 本当に求婚されてるのこれ!?」
「前からずっと思ってたんだよね……俺女の子に嫌われてるけど、クロエちゃんだけは俺に優しくしてくれるし………」
いつの間に俺はこいつを攻略してたんだ。
いや、男の頃の癖でつい距離感掴めずにアルトと接していたけど、普通女の子から嫌われてる男に、嫌わないでまともに接してくれる女の子が近づいてきたら、そりゃそうなるよね。
………どうやら俺はいつのまにかオタクに優しいギャル的な存在になってしまっていたらしい。
「お、お断りさせていただきまふっ!」
ちょっと噛んだ! けどちゃんとお断りの返事をしたぞ!
「そんな! 先っちょだけ! 先っちょだけお付き合いさせて!」
「先っちょだけお付き合いってどういうこと!?」
「お、お試しでお付き合いとか……?」
「じゃあ最初からそう言えよぉ!」
しばらく騒いでいると、周りの人からチラチラ見られ出して恥ずかしくなったため、2人は近くにあった店に避難することにした。
◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●
「その……本当に真剣に考えて欲しいんだけど……」
そう言うアルトの表情は真剣そのものだ。
しかし、クロエとしては誑かすつもりはなかった。
それに、元男だという話を彼にはまだしていない。
仮に告白を受け入れて付き合うにしても、その部分を彼に明かさないのは彼に対して誠実とはいえないだろう。
「あの、告白してくれたのは嬉しい。けど、付き合うのは……ごめん」
「うん」
アルトは真剣に聞いてくれている。段々と申し訳なくなってくるが、ここで折れて中途半端に付き合う方が彼に失礼だろう。
振るならハッキリと振ってあげるべきだ。
「その、この話は………誰にも内緒にしてほしい話なんだけど……その、まだノエルにしか話してないから」
「?」
「私……いや…俺……実はお……とこなんだよね………」
「へ?」
「いや……その……正確にいうと……前世が男だったっていうか…‥」
「ええええええぇっぇぇぇぇぇえぇええぇっぇぇぇぇぇ!?」
◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●
この後リアルな男の話をし続けた結果、アルトに信じてもらうことができた。
ついでに、リアルな男話をしているクロエを見て、恋心も冷めてしまったらしい。
ただ結果的にクロエとアルトの友情は深まり、クロエは異世界に来て初の男友達を獲得することができたので良しとしよう。
「クソっ! 俺にはもうノエルちゃんしか残ってないよ〜」
流石にノエルがアルトのことを嫌っていることは伝えないでおく。とどめ刺すようなものだし。
仮にノエルがアルトのことを好いていたとしても、ノエルの性癖についていけるかどうかという部分は心配だが。
「まぁ……がんばって」
「なんでそんなに微妙そうな反応なの? 前みたいに慰めてくれよ〜」
「凹む原因を作った相手に慰めを求めるのはどうなの……?」
「あ、そうそう。俺がクロエちゃんに告白したこと、ノエルちゃんには内緒にしててね!」
「あーうん。わかった」
「あ、念の為に聞くけど、ノエルちゃんは元男とかじゃないよね……?」
「そういうデリケートな問題ってあまり詮索しない方がいいと思うんだけど…。まあ、ノエルは元から女の子だよ。私、ああいや、俺が保証する」
「そっか! よし、早速デートのプランをねるぞー!」
ここまで行くとかわいそうに思えてくるが、仕方がない。彼はしばらく女性関係に苦労することになるだろうが。
(まあ、なんだかんだで楽しそうだし、いっか)