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閑話3 勇者パーティ? 入る予定はないっすね…メス堕ちしたくないんで

勇者パーティに入る前のお話です。

「あ、ハーレム2号のツンデレさん」


「誰がハーレム2号よ!? 後ツンデレちゃうわ!」


普通に依頼こなしてたら、勇者パーティの一員であるツンデレヒロインことセリカ=アドレイドさんとバッタリ出くわした。まあ別に同じ国の同じ都市に住んで、なおかつ同じ場所で依頼を受けているのだから顔を合わせることなんて頻繁にある。ただ、基本的に勇者パーティは集団で行動しているので、セリカ単体と出くわすのは珍しいのだ。


「今日は勇者パーティとして来たわけじゃないんだ」


「まあね。優斗達と一緒に戦うのも悪くないけど、ぬる過ぎるのよ。平和ボケしすぎて、いざという時に動けないのは嫌だから、こうやって1人で依頼を受けるようにしてるの」


なるほど。確かに勇者パーティで動いていたら、ピンチに陥ることなんてそうそう起こり得ないだろう。しかし、それではセリカは納得できないらしい。まあ、セリカは結構有力な貴族みたいだし、それなりにプライドの高さもあるんだろう。自己の研鑽は怠らないとか、そういう高潔な精神を持ち合わせてるとかそういったところじゃないかな。どちらにせよ、自分から危ないことに手を出すなんて、普通の人には出来ることじゃないだろう。それが出来る人間っていうのは、当然限られてくる。つまり、セリカは……。


「自分で自分を追い詰める、つまりドM……!」


「なんでそうなるのよ!? 私は普通に痛いのも辛いのも嫌いよ」


「私が知ってるお貴族様は皆してぷくぷく太っておりましてね。大抵こう口にしておりましたよ。『金に困っておらぬのに冒険者などやってる物好きな貴族は、バカかマゾしかおらぬ』と。つまりセリカは………ばか? やーいばーかばーか」


めっちゃ嫌味言ってるみたいに聞こえるかもしれないけど、セリカってこういういじり平気なんだよね。後、勇者パーティに入るつもりはないけど、勇者パーティのメンバーとは普通に仲は良い。だからセリカともこうやってふざけ合える。向こうも冗談だってわかってくれるわけだ。


「口の利き方に気をつけなさい…! 私の大剣が貴方の首を綺麗に引きちぎることになるわよ…!」


「怖っ…。ごめんなさい訂正します。バカじゃなくてマゾの方でしたか……」


「だから何でそうなるのよ!?」


「ま、セリカがマゾじゃないってことくらい分かってるよ。バカなのは否定しないけど」


「仮にも私はアドレイドの令嬢なのよ? バカはないでしょう」


「別に貶してるわけじゃなくて、いい意味でセリカはバカだと思うよ」


「バカバカ言うな! 私だって傷つくことはあるのよ?」


「だからいい意味でバカって言ってる。普通の貴族はセリカみたいに、命の危険があるかもしれないのに戦場に赴こうなんて思わないよ」


この世界の貴族には、別にノブレスオブリージュ的な精神も考えも存在しない。だから、基本的に貴族は民のために〜だとかそんな考えはなく、如何に自分が得をするか、如何に国家が繁栄するか、そんなことしか考えてない奴ばかりだ。特にルシフェル家はやばいらしい。当主なんて腹黒サターンなんて呼ばれてるくらいだし。噂じゃ国家を裏から掌握してるのはサターンなんて話もあったりするらしいし。ただ当主の娘のシエは純真無垢な純白天使って噂だな。ルシフェル家が産んだ唯一の良心って呼ばれてるらしい。鳶が鷹を産むとはこのことか。


「そう? 褒めてくれるのなら嬉しいわ」


「それに、セリカのことこうやっていじれるのは、それだけセリカが接しやすい証拠だよ。勇者パーティはセリカ以外にいじれそうなのいないし」


「というかクロエのいじりって結構えぐいわよ? 冗談って知らなかったら普通に傷付くと思うわ」


「え、そうなの? なんかごめん。でもいじってると楽しくなっちゃうんだよね」


「クロエって案外Sなのね」


「セリカはMだから相性抜群だ。というより、いじれる相手が珍しいからついやりすぎちゃうのかも」


「誰がMじゃ! はぁ。ま、確かにクロエの周りって、キャラ濃いものねぇ」


優斗とはそんな仲良くないし、アルトもよく分かんない。ユリウスなんて顔すら合わせたことないし、ノエルはメス堕ちさせてこようとするので論外。エレナさんは多分いじってもかわされる。なんならカウンターくらいそう。それも悪意のない天然ものの。カカエ姉さんは後が怖いからね。勇者に媚薬入りジュース飲ませて寝込み襲おうとしたって話聞いたことあるし、うん。それに、マコちゃんもこの前なんやかんやあって関わりがあってですね……。えぇ。あんな子だったとは……。まさかの厨二病、今年一番の衝撃だった。アンジェはいじれんやん? というか冗談でも本気で傷ついちゃいそうなくらい純粋だから、あの子は。


まあ結論。

いじれる相手が珍しいどころか、俺がいじれる相手、セリカしかいないのでは……?


いやまぁノエルとは仲良いから冗談通じるけどね。


「そういえば、アンジェがこの前クロエを勇者パーティに誘わないかって言ってたわよ」


「えぇ……」


「何でそんな嫌そうなのよ」


「こっちにも色々と事情があるんです」


メス堕ちしたくないんじゃこちとら。勇者パーティ入ったら確実にハーレム堕ちしてしまう予感がしてならないしね……。


「べ、別に私はクロエが来たって構わないわよ? ま、まあ? 足手纏いにだけはならないで欲しいけど?」


何でこの人肝心なところでツンデレになるんだろうか。というかもはやこれただのデレでは? ツンの中からデレさんが見え隠れしておりますよお嬢様。


「まあ、遠慮しとくよ。セリカが良くても他の人が嫌だったら申し訳ないし」


「ユウトもカカエも、別に入って来ても構わないって言ってたわよ。マコとアンジェなんてもうクロエのこと勇者パーティに入れる気満々って感じの雰囲気だったわ」


「いつの間にそんなに話進んでたの……? こっち入る気0なんですけど……」


「別にそんなに嫌がらなくてもいいじゃない。べ、別に私だって加入に反対ってわけじゃないわけだし? 何でそんなに拒否するのよ」


理由もなく断ってるのは感じ悪いか……。まあ、セリカなら理由を話しても他のパーティメンバーに言いふらしたりしないだろうし、話してもいいかな。勿論、前世のこととかは話さないけど。




◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●





「ぷっ! ユウトに惚れたくないから入るのが嫌? あっはは! おっかしい!」


「いや、ほら、そういう恋愛とか、今は考えられないし。その、皆優斗に惚れてるから、ほら、万が一がないとは言い切れないし……」


「別にいいじゃない。何が悪いのよ、意外とウブなのね、クロエって」


ウブなんじゃなくて、前世男だから男と恋愛したくないってだけなんですけどね……。まあ、側から見たら男に免疫ないウブな女の子と捉えられるのは仕方ないのかもしれない。


「別に、クロエがユウトに惚れたって誰も悪く思わないわよ」


「というと?」


「口には出さないわ。けど、みんな“そう”でしょ? でもね。私は別に、誰が一番とか気にしてないの。皆で一緒っていうのも悪くないと思ってるわ。誰か1人を選ぶ場合でも、それはユウトが決めることだもの。私の知ってる皆なら、誰がユウトとくっつこうが気にしないわ。あ、べ、別に私はそうってわけじゃないわよ? ほら、あくまで仮定の話よ、仮定のね?」


別にそういう心配をしてるわけじゃないんだけどね。単純に男に恋してしまうのが嫌だっていうだけで……。

まあ、セリカからそう言ってもらえるくらいの関係にはなれてるんだな、今の俺って。

というかセリカは一夫多妻に賛成なんだ。いやまあこの国はそういう制度あるから、そういう価値観を持った人もいるんだろうけど。


「まあでもどっちにしろ勇者パーティに入る予定はないよ。もしパーティ組むならノエルと組むと思うし」


「そう? ま、私は別にどっちでもいいわよ。まあ、今の勇者パーティ、後1人いてくれた方がもっと安定するような気はするのよね。そう、例えば小柄でナイフの扱いに慣れた小回りのきく元暗殺者とか〜」


「だれのことだろなー。というか、セリカ、依頼行かなくていいの?」


「そうだわ! すっかり忘れてた! ちょっとクロエ、あんたのせいよ!?」


「ごめんごめんー。ほら、いってきなー」


ま、間違っても俺が勇者パーティに入ることはないだろう。百歩譲って勇者パーティに入ってしまうようなことがあったとしても、ぜっっっったいにメス堕ちだけはしてはならない。そこだけは気をつけないと。


うん。これはフラグじゃないぞ。俺はメス堕ちなんてしない。しないったらしないんだ。

次回も閑話の予定。

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