表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/32

4


「あの、先程のお話は本気ですか?」


あのよく分からない理由のプロポーズ、本気ですか?

夢のお告げて、本気でそんな理由で結婚するの…?

っていうか、そんな理由じゃyesなんて言わないよ…!


「本気ですとも。貴女のような美しい人と結婚できるなんて…夢のようです…!」


…え、何その決定事項みたいな言い方…。

っていうか、まだ結婚するって言ってないし。


「…あの…先程のお話ですが、まだお受け…」


「ああ、そうですよね!お父上にもお許しを頂かなくてはいけませんね」


「えっ…いや、そうじゃなくて」


まだお受けしてませんて…言おうと…。


「早速明日、アンデルセン子爵殿にご連絡を致します」


ひぃ!なんだこの人!?

まだ承諾してないのに!

人の話全然聞いてない!


「ま、待って下さい!私はまだ結婚の承諾をしておりません!」


「………………え?」


いや、『え?』って何?

まだ承諾してないじゃん!

何その衝撃の事実、みたいな顔…。


「…ですから、まだ結婚するとは言っておりません」


噛んで含めるようにゆっくりと伝えたつもりだ。

これで理解してくれたかな?


「……では婚約ということにしておきましょうか」


………いやいやいや。

そういうことじゃない。

人の話聞けよ。


「…結婚も婚約もお受けできません」


「…………え?何故?」


そんなびっくりした顔されても…。

っていうか、なんでそんな自信に溢れてるんだろう…?イケメンだから?絶対振られることはないと思ってるってこと?

……なんか…ちょっと…いや、大分いけすかないな…。


「…私とモーガン伯爵様とでは階級に差もありますし、何より私は貴方をよく知りません」


子爵と伯爵じゃ生活に差がありすぎて話なんて合わない、筈。

そもそも結婚するのに今日会ったばかりの人となんて、そんな恐ろしいことしたくない。

ないと思うけど、もしモラハラDV夫とかだったら困るじゃないか!

…まぁ、この世界じゃ、よく知らない者同士が家の為に結婚するとかいうことがあるらしい。時代錯誤な現実だ。

でもそれは私のような田舎の子爵令嬢では珍しい。大体私のような貴族階級が低い娘は同じような田舎の、縁も所縁もある馴染み深い、そこそこの男性と結婚するのだ。

勿論、その当事者同士が納得して結婚する。

田舎貴族の結婚は庶民とそう変わらないものなのだ。


だが、今目の前にいる男性にとっての結婚は違う。

そこにはほぼ、何かしらの思惑があり、損得勘定と利害関係が発生する筈だ。

そういう常識なのだ。愛だの恋だの言ってる場合ではないと思うのだけど。


「…私と結婚することでモーガン伯爵家に利があるとは思えませんが」


ため息をつきながら言えば、目の前の彼は悲しそうに肩を落とした。


「…わかりました」


わかってくれたか!

そうだよね!やっぱり私とモーガン伯爵様じゃ釣り合わないよね!

これで結婚も婚約もなしで…


「…では、まず俺を知ってほしい。今度どこか一緒に出掛けよう」


「………………えぇ…?」


「良かった!じゃあ、日はまた改めて連絡させてもらうよ」


いや、今の『えぇ』は肯定じゃなくて…思わず漏れたうめき声だよ…。


「…いや、あの…」


否定しようとした私の言葉は勢いよく開いたドアの音に掻き消された。


バーン、とけたたましい音の後、続いたのはよく知る声だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ