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前話:トイレから出たら何故か誘拐されたエマをカイトが助けに来るよ!
ドォンという何かを壊す音が辺りに響く。突然の音に緊張で体が固くなる。カイト様の声はまだ私を励まそうとしてくれているけど、この音は何だろう。
「エマ、今そこに着いたよ!もう大丈夫だ!」
ネックレスから聞こえる声は次第に近づいてくる。
そして本当にあっという間にカイト様は現れた。
「……あ」
カイト様の姿に心からほっとする。
もう大丈夫なんだと何の疑いもなく納得できた。
カイト様はすぐに駆け寄ってきてくれ、そして縄をほどいてくれた。
それからカイト様は私の背中に腕を回してぎゅっと抱き締めてくれた。
「…遅くなってごめん」
苦しそうに囁く声が聞こえる。
そんなことないのに。
こうやって助けに来てくれて、嬉しいのに。
カイト様の腕の中で安心感に包まれた私は、そのままワンワン泣いていた。
私の誘拐事件は当然両親にも伝わり、今現在私は自分の家に戻ってきている。
カイト様の腕の中でワンワン泣いた後、そのまま泣き疲れて寝てしまった私が、次に目を開けた時見たものといえば、見馴れた、でも久しぶりの自分の天蓋付きベッドの天井だった。
その日から三週間と三日。
カイト様からは一度連絡が来ただけで、その後の連絡はない。
そして私もまだ連絡していない。
端からすれば、彼氏と喧嘩中です、状態に見えなくもないが、そういうことではないことは私もカイト様もわかっている。
なのに、どうしてか、カイト様に連絡ができないのだ。
タイミングが悪い時もあれば、誰かの邪魔が入る時もある。
でも一番は私の勇気が出ないことが大きいだろう。
カイト様から婚約予定破棄の提案が出たと聞いたのは、事件の三日後だった。
あのワカメ男はカイト様の熱烈なファン改め、ストーカーの子爵令嬢の命令によって私を誘拐したらしい。
子爵令嬢はすでに騎士団によって取り押さえられている。
が、あのワカメ男はまだ捕まっていない。
もうこの辺りからあのワカメ男が只者ではない感じがする。
子爵令嬢によればワカメ男はワカメ男で、何か目的があったようだとも言っているそうだ。
その目的が何なのか、子爵令嬢は知らないし、彼女が話すことが真実とも限らない。
けれど、私は限りなく真実に近い気がしている。
それは直接ワカメ男と会ったからこそ、そんな風に感じるのだ。
そういう話を私の聞き取り調査役で実家に帰ってきた騎士団勤めの次兄のレンに伝えると、レンは聞き取った内容を伝えに王都に戻って行った。
それが事件から2日目のこと。
その次の日、カイト様からお見舞いの花束と手紙が届いた。
そこには事件を詫びる言葉と、婚約予定破棄の提案とお試しお付き合いの終了が書かれていた。『身勝手に振り回してすまない』との文言と共に。




